永久歯の大きさは乳歯の1.2倍 スペース確保には「姿勢」や「噛む力」が重要
子どもの歯が生えそろってくると、将来の歯並びについても、気になってきませんか? 「ひよこクラブ」では、
30年以上子どもの歯のケアに携わってきた倉治ななえ先生に、知っておきたい“いい歯並びにつながる生活習慣”について聞きました。
永久歯の大きさは乳歯の1.2倍 きれいに生えるにはスペースが必要
乳歯は全部で20本あり、3才6カ月ごろまでに生えそろいます。永久歯は6才以降~14・15才ごろまでに生えそろい、合計で28本です(親知らずがある場合は32本)。永久歯は乳歯の下で育ちますが、その大きさは乳歯の約1.2倍。つまり乳歯と乳歯の間にある程度のすき間がないと、永久歯はまっすぐ生えてくることができないのです。
乳歯の間にすき間がなかったり、乳歯が凸凹に生えていたりすると、土台となるあごの骨に永久歯が生えるスペースがたりず、永久歯の歯並びが悪くなる可能性が高くなるといえます。
永久歯がきれいに生えるようにするためには、歯の幅に合ったあごの骨にスペースが必要になります。そしてそのあごのスペースの発育を促すために大切なことが「よくかむ」こと。歯が10本くらい生えてきたら、しっかりかんで食べることを習慣にしましょう。
当然、かむためには、歯が必要です。乳歯の時期にむし歯になってしまうと、歯を失うこともあり、しっかりかめなくなってしまいます。「どうせ生え変わるからむし歯になってもいいか」とは考えずに、むし歯予防を意識しましょう。
よくかむためには正しい姿勢がマスト。足が床につく椅子を用意して!
あごは細胞(骨の新生および再生にかかわる細胞)が増加することで強く大きく成長します。骨芽細胞を増やすためにはあごの骨の運動が必要ですが、「しっかりかむ」ことがあごの骨に刺激を与える唯一の運動なのです。よくかんで食べるためには、食事の時間におなかがすく生活リズムを整えて、食べてかむ意欲を引き出すことが欠かせません。
ただし、そもそも食べる姿勢が安定していないと、重心がずれてしまい、かむ力が弱くなりがち。食事用の椅子にも気をつける必要があります。しっかり足が床につく高さになっているか、椅子の足置き台に足がしっかりつくようになっているかを確認してみて。足がプラプラしている場合は、踏み台などを使って高さを調節してみましょう。
また、食事に集中させることも大切。椅子から出て歩きながら食べるのはできるだけ減らしたいので、声かけを積極的にしたり、大人も一緒に食べたりして“椅子で食べる”習慣づけをしましょう。
さらに、横を見ながら食べる習慣も避ける必要があります。横を向いて食べると、同じ方向でかむ癖がつき、かみ合わせや左右のあごの成長にも偏りが生じる場合もあります。食事のときは、テレビやスマホ動画などを見せることは控えて、正面を向いて食べることを意識しましょう。
かみごたえがいいおやつで あごの発育を促し、むし歯も防いで!
あごの発達のためには、かみごたえのある食べ物を用意することも大切です。現代はやわらかい加工メニューが増えているため、そしゃくの回数が減り、あごの骨が小さくなっている傾向があります。
食事に、ある程度の大きさがある根菜類や果物、小魚などを月齢や口の発達に合わせて加えていきましょう。また、やわらないパンよりもごはんのほうが、かむ回数が増えるようです。パンの場合は、たとえば食パンに小魚をトッピングするなど、かみごたえがアップする工夫を。
おやつには、スティック野菜も取り入れましょう。しっかりかんで食べるため、あごの発育をサポート。さらに、口の中を酸性にしないので、むし歯になりにくいというメリットがあります。いも類や果物も積極的にとりたいもの。食べたあとは水や麦茶などを飲ませ、口の中に食べ物を残さないように意識しましょう。
(取材・文/中澤夕美恵、ひよこクラブ編集部)
最近の傾向として、むし歯は減っているとのお話。けれど、食生活の変化などから永久歯が大きくなり、あごに収まらず歯並びが悪くなり、歯列矯正を行う子が増えているんだそう。歯の健康のためには、正しい姿勢でしっかりかんで食べる生活習慣に加え、定期的な歯科健診も重要です。デンタルケアは一生続くものなので、家族みんなで意識して健康的な歯を育てて守っていきたいですね。
監修/倉治ななえ先生
(テクノポートデンタルクリニック院長、日本歯科大学附属病院 臨床教授)
子どもが本来持っている“歯と口が健康になる力”を歯科医の立場で引き出す「子育て歯科」を提唱されています。