もしもの時用ではなく、もっと普段使いを 液体ミルクの普及で「育児がラクに」
今年春に発売された国産の乳児用液体ミルク。発売前まで液体タイプのミルクがどういうものなのか、知らないという人が大半でしたが、今では多くの人に認知されています。調乳の必要がなく哺乳びんに移し替えるだけで飲ませることができるため、防災の備蓄アイテムとして注目されているなか、「普段使い」というキーワードも聞かれるようになりました。
「液体ミルクの今」第5回は、液体ミルクの普段使いについて、メーカーの声を紹介します。
毎日気軽に使える液体ミルクを
今年春に発売された調乳の必要がない乳児用液体ミルク。母乳育児がどうしてもうまくいかない人や、なんらかの事情でミルク育児を選択せざるを得ない人にとっては画期的な商品でした。また、お湯の確保も確実とはいえない災害時に、利用しやすく安心して飲ませることができる点で防災備蓄品としても注目を浴びています。
ですが、日本で初めて液体ミルクを発売した江崎グリコには別の強い思いもありました。それは「普段使い」として活用してもらうというものでした。。
「災害が起こり、赤ちゃんに液体ミルクを飲ませようとしても、今まで飲んだ経験をしていなければ飲まないこともあるかもしれません。『普段使い』をしていただくことで、ミルク育児中の方の物理的・精神的な負担は軽減し、それがひいては災害時にも役立つのではないかと考えています」(江崎グリコ株式会社 コーポレートコミュニケーション部 前田就喬さん)
紙パックを容器に採用したのも使いやすさからで、軽く、持ち運びがしやすい、捨てやすいなどのポイントがあったと言います。
大事にとっておいて、結局使わない……そんなことがないように
発売以来、注目度の高さから、メーカー予測より3倍以上も売れているという液体ミルク。最近になって聞かれるのは、保管するばかりで使用するタイミングを逃してしまったという声です。もしもの時のため・・・とりあえず備蓄用として購入する人が読者にも多くいます。
もちろん、もしもの時の備えは重要ですが、この点のみで保管しておくと、結果使わなかったということにもなりそうです。「普段使い」で利用した結果、災害時に役立てるという考え方は理にかなっています。
北海道では道の駅の自動販売機に液体ミルクが登場!
まだ国内で液体ミルクが発売される前の昨年秋に起きた北海道胆振東部地震。その際、被災地に海外製の液体ミルクが支援物資として届けられたものの、液体ミルクそのものに関する情報不足が影響し、結局使用されずに終わったことが報道されました。
その後、道の駅を観光用としてだけでなく、防災備蓄や子育て支援の場にしていこうという取り組みが始まり、北海道浜頓別町の道の駅では、液体ミルク発売開始からわずか2カ月後に、自動販売機での紙パックの液体ミルクの販売を開始。現在も紙おむつやおしりふきとともに並んでいます。
これも、「災害時」と「普段」をともに考えるということの表れと編集部では考えています。
また江崎グリコには、1人目をミルク育児で育て、現在2人目を育児中のママ・パパから、精神的にとてもラクになったという声が多数届いているそう。
「ひよこクラブ」編集部にも、ミルク育児中のママから、夜の調乳がしんどいとき、お出かけ先、祖父母に赤ちゃんを預けるときなど、1人目のときは当たり前と思っていたことが、『こんなに大変だったんだ』と逆に実感することになった、『ひとつの商品を機にこんなにラクになるんだ』という声が寄せられています。
最後に気になることを聞いてみました。「普段使い」を意識して紙パックの仕様を選択したことはわかりましたが、容量が125mlである理由についてです。
回答は「赤ちゃんがいちばん最初に使う哺乳びんが120mlのサイズのため、こちらに合わせました。月齢が大きくなってくると飲む量が240ml程度となるので、その際は2本ご使用ください」ということでした。
災害時に赤ちゃんに飲ませるためにも、普段から使い慣れていると安心ですよね。乳児用液体ミルクを普段使いする光景が自然と社会の中で増えていくことで、さまざまな世代の目に留まる機会が増えていくかもしれません。
乳児用液体ミルクは、母乳代替食品として作られただけに、栄養価は著しく高く、そのため開封後は「雑菌がすぐに繁殖するもの」と認識してください。
赤ちゃんは細菌には弱い存在です。飲み残しの使用は絶対に使用しないようにしましょう。
(取材・文/本間勇気、ひよこクラブ編集部)