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戦後・驚くべき進化を遂げた日本の粉ミルク。4000人の母乳調査を経て母乳に近づける開発が

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赤ちゃんミルクを飲むのボトル
Milatas/gettyimages

「おっぱいが出ない」「母親が亡くなってしまった」そんな悲痛な状況の赤ちゃんのために、乳児用粉ミルクが発売されて約100年。今年春には国産初の乳児用液体ミルクも発売されました。あるミルクメーカーの開発者に、粉ミルク作りの秘話や、乳児用液体ミルクについて話を聞きました。

母乳調査と赤ちゃんの発育調査のデータをもとに粉ミルクを研究・開発

育児雑誌「ひよこクラブ」には、母乳をあげたいけど、うまくいかないママ、事情があり母乳を飲ませられないママなどから毎月多数の声が届きます。
「自分を責めてしまう」「罪悪感でいっぱいになる」「ごめんね、と赤ちゃんにあやまっている」など。
本誌では「母乳はもちろん赤ちゃんにとって最良の栄養ではあるけれど、大事なのは赤ちゃんの健やかな成長とママの笑顔」と考え、さまざまな特集で明記しています。が、なかなか伝わりにくいのが現状です。そこでたまひよONLINEでは、粉ミルクや液体ミルクがていねいに作られることを知ってもらえれば、つらい思いをしているママたちの心を少しでもらくにできるのではないかと考え、その製造について調べてみました。


現在日本で販売されている乳児用ミルクは、母乳を手本として、赤ちゃんのために研究を重ねてできたものだといいます。
「食生活の変化などで、時代によって母乳の成分も変化します。現在まで、1979年、1998-1999年、2012-2014年の3回にわたり、全国で計4000人以上のママたちから母乳を提供してもらい、母乳の成分組成を調査してきました」と話してくれたのは食品メーカー明治・マーケティング本部の田中伸一郎さん。

最近の調査では冷凍郵送などの技術も進化し、送付協力での調査が可能になりましたが、以前はママたちの自宅まで研究者が母乳をもらいに通ったこともあったそうです。

また、ミルクを飲んで育った赤ちゃんの発育状態についても、1972年以降、20万人以上の赤ちゃんの体重や身長、病気のかかり具合などを追いかけ調査し、あわせて製品の改良につなげているそう。それらの研究の結果、80年代、現代へと、日本の粉ミルクは、たんぱく質、脂質、DHA、微量成分の配合など、母乳の成分に近いものとして驚くべき進化をとげ、親や保育者に使用されています。

負担が多い子育て世代にとって、 より便利な形のミルクを

母乳には栄養面のほかに、調乳に必要なお湯や哺乳瓶がいらない、いつでもどこでもあげられるなどの利点もあります。
同メーカーは2007年にはキューブタイプのミルクを発売。背景には「核家族化や共働き世帯が増え、現代のファミリーは育児負担も大きくなってきていると考えています」(田中さん)という思いから、その負担軽減という目的があったと言います。必要な量のミルクを簡単に哺乳びんにいれることができるキューブタイプは、「夜中の調乳や外出先で便利」(読者ママ)と大人気になりました。

粉ミルクと液体ミルクは似て非なるもの。同じミルクでも液体にするためには多くの課題が

そんななか、いよいよ日本でも2016年の熊本地震をきっかけに法整備が整い、2019年に防災備蓄品としても使える調乳不要の液体ミルクの製造・販売が開始されました。
田中さんも開発に関わった一人。同社は満を持して「ほほえみ らくらくミルク」という名称の液体ミルクを発売しました。
進化してきた粉ミルク。すぐに液体になるのでは、と思ってしまいますが田中さんの答えは違いました。
同等の栄養成分を含んだ液体ミルクの製造には、多くの困難があったと言います。
粉ミルクはタンパク質、ビタミン、脂質などの粉の原料を組み合わせ、混ぜてドロドロになったものをその後乾燥させて出来上がります。乾燥させることで保存性があがります。が、液体ミルクは栄養価の高い液体の状態のままで安全に保存をしなくてはならないので、材料の吟味と技術が必要となります。
「液体にする場合は、成分が沈殿しにくいものに変えなければいけません。また、できるだけ白い状態にするために、褐変化が起きにくい原料を選ぶ必要もありました」と、田中さん。
長い研究の末、国産の液体ミルクは誕生しました。粉ミルクも液体ミルクも、赤ちゃんが飲むもの。安心・安全なものを製造するために専用の工場で作っているそうです。

「できれば母乳で育てたい」それでも諸事情で母乳を赤ちゃんに飲ませられないこともあります。粉ミルクも液体ミルクも「母乳に近いもの」であるべく多くの研究、データ収集を経て開発、製造されていることがわかることで、少しでも不安が減ればと思います。
乳児用液体ミルクが発売されて早半年以上たちましたが、より利便性の高いものが出てくる日も遠くないのかもしれません。メーカーのミルク研究はこれからもずっと続きます。

(取材・文/本間勇気、ひよこクラブ編集部)

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