「ミルク育児に罪悪感」という悩みに「授乳に必要なのは母乳かミルクかではない」とママ助産師 災害時の備えとしても
母乳の出が安定しないママにとって、助けとなるミルク。現在、国内で市販されている育児用の粉ミルクは、牛乳を原料に加工されたもので、各メーカーの長年の研究と改良によって、かなり母乳に近い成分になっているそうですが、栄養面や発達面で母乳との違いが気になるところ。そのミルクについての気がかりを、ママ助産師の小澤千恵先生に聞きました! 2019年に国内メーカー製造のものが販売された液体ミルクの使い方についても解説しています。
Q 粉ミルクってそもそもどう作られているの?
A 現在国内で市販されている育児用粉ミルクは、牛乳を原料に加工されたもの。国が定めた基準に基づき作られており、長年の研究と改良によって、母乳に近い成分になっています。栄養面や発育面で母乳とほぼ差がありません。
Q ミルク育児に罪悪感があります
A 世の母親に対するプレッシャーから、知らず知らずのうちに「母乳育児が最高で、ミルク育児は劣る」と思い込むママが多いようです。でも、ミルク育児に罪悪感を持つ必要はありません。授乳で大切なのは、ミルクか母乳かではなく、ママと赤ちゃんがスキンシップをとって楽しい時間を過ごせるかどうか。赤ちゃんと触れ合うことでママの中でも愛情ホルモンのオキシトシンが出て、赤ちゃんをよりいとしく感じられます。ミルクをあげるときは、抱っこして表情を見ながら飲ませましょう。ミルクでもママの愛情はしっかり伝わります。
Q ミルクを与えると肥満になりやすい?
A ミルクを与えると肥満になりやすいという科学的根拠はありません。2019年に改定された「授乳・離乳の支援ガイド」(厚生労働省が策定した、栄養面での子育て支援を推し進めるための手引き)にも、「『母乳だけの授乳』と、『育児用ミルクを与える混合授乳』との間には、肥満発症に差があるというエビデンスはない」と記載されています。
Q 液体ミルクってどんなもの?
A 2019年春に国内メーカー製造の液体ミルクが発売に。現在3社から発売されていますが、調乳の手間がかからず、開けて哺乳びんに入れられたらすぐに飲ませられるメリットが。また、容器に直接取りつけられる乳首や、哺乳びんの乳首を液体ミルクの缶に取り付けられるアタッチメントなども登場しています。空腹の赤ちゃんを待たせないので、普段使いはもちろん、荷物を減らせるのでお出かけに使用するママも多くいます。災害時にライフラインが断絶された場合でも、水・燃料などを使わずに授乳できる液体ミルク。ミルク育児のママはもちろん、母乳育児のママも災害時はストレスや疲労などから母乳の出が悪くなることもあるので、液体ミルクを備蓄しておくと安心です。
Q ミルクのほうが腹持ちがいいって本当?
A 母乳に比べるとミルクのほうが消化に時間がかかるため、腹持ちがいいと
えます。そのため、「ミルクのほうが母乳より眠る」といわれることも。ミルクは満腹感が続き、目覚めにくい傾向があるかもしれませんが、個人差があるので、すべての赤ちゃんに当てはまるわけではありません。
Q たくさん飲みたがる日はミルクを薄めてもOK?
A ミルクの濃度や規定量は、月齢ごとの赤ちゃんの消化能力や体重に対して必要な栄養素・エネルギーをもとに決められています。自己判断で薄くしたり、濃くするのは赤ちゃんの体調や成長に影響が出ることもあるので禁物です。
監修/小澤千恵先生 撮影/矢部ひとみ 取材・文/ひよこクラブ編集部
赤ちゃんのお世話の中でも気がかりが多い「授乳のこと」。今回はミルク育児についてのママの気がかりを取り上げました。「ミルクだから愛情不足になる」なんて心配は必要なし。ぜひ正しい知識をもって、ミルク育児を楽しんでくださいね。
小澤千絵先生(おざわちえ)
Profile
埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター 母体胎児部門 副看護師長・助産師。毎日たくさんのママの授乳の悩みにつき合っているベテラン助産師。小学生の女の子のママでも。
参考/『ひよこクラブ』2020年10月号「おっぱい・ミルク&離乳食バランス 時期別今のお困り誌上相談会」
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『ひよこクラブ』10月号では、「おっぱい・ミルク&離乳食バランス 時期別 今のお困り誌上相談会」特集があります。母乳・ミルクの飲ませ方、減らし方、離乳食とのバランスを詳しく解説しています。