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作家 川上未映子「日本の家庭円満は女性の犠牲でなりたってきた」私たちが産むこと・働くこと・生きること

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川上未映子さんの最新刊『夏物語』は、1人の女性が子どもを産むことについて戸惑い、考え、行動するストーリー。さまざまな立場の女性が、パートナーである男性について、議論を交わすシーンも多く登場します。インタビューの2回目は、夫婦関係について伺いました。

関連:作家・川上未映子 すれ違いざまに「母乳?」と聞かれ…。私たちが産む・働く・生きることとは

出産で1回キャリアを断つと、 スペックが半分になることも

「この小説には、冷えきった夫との関係を継続しながら子育てをする”紺野さん“という女性が出てきます。主人公の夏子は『離婚すればいい』と言うけれど、それはできない。私自身、ママ友の話を聞いても、こういう感じは本当に多いんですね。夫のパワハラやモラハラがひどくて、私からすると離婚案件な人もいて。でも、キャリアを捨てていて夫の稼ぎに頼っている状態。そうすると現実問題、離婚してシングルマザーになるのはなかなか大変ですよね。いろいろな家庭の状況を見てきた実感から、その気持ちは本当によくわかります。女性が一馬力で全部を回せる経済力を持つというのは、並大抵のことじゃありません。だって、出産で1回キャリアを断たれて、スペックが半分にされちゃうわけだから。

私が思うのは、常に1人でなんでもできる戦力をアップしておこう!というよりも、現実的には、パートナーと話し合いを持てる環境をつくっておくのが大事だと思います。生活の変化に伴って考え方をアップデートできる、頭のやわらかい相手を選ぶことがいちばんだけれど、話し合いができるようにリレーションシップを図ることもしたいです」

夫婦関係や家族は メンテナンスをしないと続かない

「うちの場合は、時々LINEで夫(作家の阿部和重氏)に思っていることを長々と送ります。『あなたが認識せずに済んでいる家庭の仕事がどれくらいあるか知っていますか?』と。たとえばママ友たちとのおつき合いも楽しいけれど、しかし子どもたちの思い出づくりや交流や、いろいろな情報を交換しあうのがメインなんです。ほかにもいちいち言わないけれど、黙ってこなしていることは山ほどある。あなたはそのとき何をしていますか?というように。全部可視化して、最後に”ゆめゆめお忘れなきよう“と書いて送るんです(笑)。夫婦関係や家族というのは、メンテナンスをしないと続かない。このことをお互いがわかっておくべきですよね。結婚して子どもができて、何も努力せずに家庭が一生続くはずがない。すぐに崩れ去るものなんだ、という危機感を持っておかないとダメ。努力がないと、形なんて続かないんです。

 これまでの日本の”家庭円満“という形は、多くは女性の犠牲で成り立ってきたとも言えますよね。外で働くお父さんのために、妻はなんでもやるというような。でももう、そうやってだれかが不幸になるのは嫌でしょ。私たちも環境を変えて、強くならなきゃいけない。これまでの家父長制には”男性の機嫌を損ねてはいけない“”怒らすと怖いことになる“、みたいな空気があったし、今でも”これ以上言うと雰囲気が悪くなるからやめておこう“というのは、妻も夫もあると思うんです。もちろん、子どもがいるときに言い争いをしないことや、話しやすい時間を選ぶのは大事だけれど、あきらめるのではなく、話し合うことを頑張りたいですね」

SNSは小さな窓のようなもの。 1人じゃないと思える

「少しでもラクになるために、私がママたちにおすすめしたいのはSNS。小説の中の女性たちもSNSを活用していますが、私自身も子育てで大変なときにすごく助けられました。100%リスクがないとは言えないけれど、『今、私は1人じゃないんだ』と感じるためには、すごくいいツール。まるで、外をのぞく”小さな窓“みたい。自分が発信しなくても、”あるある“を共有するだけでも十分ですよね。ママたちもうまく使えるといいなと思っています」

(写真・伊藤大作[The VOICE]、ヘア&メイク・吉岡未江子、構成・ひよこクラブ編集部)

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もやもやした気持ちを的確に言語化して、前に進めるパワーを持っている川上さんの言葉。心の中にピン留めしておいて、ときどき反すうしたいもの。「ひよこクラブ」読者ママたちからの支持が高いのもよくわかります。

■『夏物語』

川上未映子著 文藝春秋

【あらすじ】小説家をめざして作品を書き続ける夏子(38才)。書くことで生計が成り立ち始め、まるで夢のようだと思う一方、「自分の子どもに会いたい」と強く思う。交際相手もいない夏子にとって、それを実現させる手だては? 出産を「親たちの身勝手な賭け」だと言う女、シングルマザーとして強く生きる女…。たくさんの人とかかわりながら、夏子は「どうして子どもを産みたいのか」を考え続ける。

■川上未映子/
1976年大阪府生まれ。2008年『乳と卵』で芥川賞を受賞。代表作に『ヘヴン』『あこがれ』『ウィステリアと三人の女たち』など。17年には「早稲田文学増刊 女性号」で責任編集を務めた。2012年に男児を出産。

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