ワンオペ育児は絶対ダメ! 子育てはチームで乗りきる
「核家族で共働き」という家庭がとても多い現代。そんな状況で子育てをするには、いろいろな人たちの手を借りることも必要になりますが、まずはいちばん身近な頼れる存在である夫婦が軸となり、お互いに協力できると、スムーズにいくことが多いもの。
そこで今回は、夫婦が最強の子育てパートナーになるためのポイントを、子育てを通じた人材育成事業を展開する、スリール株式会社の代表・堀江敦子さんに聞きました。堀江さんの著書の『新・ワーママ入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の内容も含めてお伝えします。
ワンオペ育児は絶対ダメ! 子育てはチームで乗りきる
―-最近では「ワンオペ育児」という言葉が生まれるほど、一人で育児を抱えてしまっているママも多いようですね。
堀江さん:私が声を大にして言いたいのは、「ワンオペ育児」は絶対にやってはいけないということです。
なぜなら、だれも幸せにならないから。
親がつらいのはもちろん、子どもにとってもプラスにはなりません。
―-すべてを一人で抱えると気持ちに余裕がなくなりますね…。
堀江さん:そうなると、子どもやパートナーにつらくあたってしまうことにもなりかねないですよね。
だからこそ、チームで子育てをしていくんです。
―-チームというのは、ママとパパ以外にもだれかいるということですか?
堀江さん:そうです。子どもに愛情をしっかりかけながら、少しずつ手をはなしてたくさんの大人たちに育ててもらうことで、子どもの豊かな発達や自立につながっていくんですよ。
-―どんな人をチームの一員として巻き込んでいくのがいいでしょうか?
堀江さん:パートナーはもちろん、親、義理の親、近くに住む友人や親類、シッターさんなど、子育てにかかわってくれそうな人であればだれでもOKです。
ここで重要なのは「今すでに頼っているかどうか」や「友人より親を頼るべき」などの固定観念にとらわれるのではなく、「気軽に頼れるか」、「子どもと誰に関わってほしいか」などの視点を持ってメンバーを構成することです。
―-たしかに、遠くに住む親に来てもらうより、近くに住んでいる友人の方が頼りやすい、ということもありそうです。今の時代シングルの人やすでに親が他界されている人など、各家庭さまざまな事情もあるから、固定観念にとらわれないという視点は大事ですね。
堀江さん:自分なりのチームができればそれでよし、と気楽に構えていきましょう。子育てチームのメンバー候補をざっと挙げるだけでも、「一人じゃない」と少し気持ちがラクになりませんか?
―-本当にそう思います!
堀江さん:子どもにとって、親以外の大人からも愛されるという経験はとても大切ですし、同時に一人の大人の価値観だけで育っていくのは危険なことでもあると思っています。
まわりを巻き込みながらチームで子育てをすると、親も子どももハッピーになれるんですよ。
夫を最強の子育てパートナーに育てるには?
―-“子育てチーム”という考え方を知り、「自分一人ですべてを抱え込む必要はない」ということを再確認できました。
堀江さん:子育てチームの中でも、、パートナーがいるのであればメンバーの核となってくるのはやはりパートナーです。
もし、今はなかなか子育てに参加できていないパートナーだったとしても、これから“レベルアップ”することは十分可能。子育てという長期的なプロジェクトを円滑に進めるためにも、パートナーをチームのコアメンバーとして位置づけましょう。
―-パートナーに“レベルアップ”してもらうにはどうすればいいのでしょうか?
堀江さん:では、パートナーの意識改革のポイントをお伝えしていきます。ここでいうパートナーとは、夫のことを指しています。もちろんパートナーとして信頼できる夫もいっぱいいますが、ここではそうでない夫向けということになります。
<夫を最強の子育てパートナーに育てるための3つのポイント>
1 上手にほめる
これはよく言われることですが、妊娠や出産を体で経験してない男性は、女性と比べるとどうしても子育てに苦手意識を持っていることが多いため「ほめる」ことが重要です。
ただし、なんでもほめるのではなく、“子どもの反応・変化を通してほめる”のがおすすめ。
たとえば、パートナーが離乳食をあげたときに子どもが上手に食べられていたら、「いつもよりたくさん食べられているかも」というようなフィードバックをするんです。
自分がかかわることで子どもがいい反応を見せてくれることがわかると、張りきりたくなると思います。
2 目線を合わせる
夫婦で協力する子育てにおいて、何より大切なのがこの目線合わせ。
「どんなふうに育ってほしいか」、「どんな体験や環境を与えていきたいか」、「親としてどんなかかわりを持ちたいか」。
子育ても仕事と同じで、目標やビジョンを達成するために、チームメンバーが同じ方向を向くことが必要不可欠です。
夫婦でゆっくり話し合う時間が取れないというのが共働きのジレンマですが、その間にも子どもはどんどん成長していきます。
子育てから一旦離れて、落ち着いて大人同士で話す時間はとても大切ですので、
“預けてでも、夫婦で話す時間をつくる”ということを意識してみてくださいね。
3 3Kであせらず待つ
人が変わるのには時間がかかりますが、あきらめなければ確実に変わっていきます。
そのために心しておきたいのは「覚悟・交渉・感謝」の3Kです。
「夫婦二人で子育てをするんだ。そのために夫のレベルアップをサポートするんだ」という覚悟を持って、あきらめずにコミュニケーションを重ね、できたらきちんと感謝の気持ちを伝える。「やって当たり前」と思っても、ぐっとこらえてまずは感謝して。
子育てと同じかもしれませんが、「夫育ても気長に」を胸にとどめておきましょう。
―-振り返ってみると、日々の忙しさに追われてできていなかったことばかりです…。
堀江さん:これからでも遅くはありませんよ。「ママのやってほしいレベル」と「現在のパパレベル」のすれ違いで、不満に思うこともあるかもしれません。
でも、まずは少しずつでもできていることを、やろうとしていることを前向きにとらえて、パートナーのレベルアップをサポートすることが大切です。
その積み重ねによって、いつしか夫婦が最強の子育てパートナーとなっていくのです。
「同じ親だからできるでしょ」と思って夫にも同じレベルでの子育てを求めてしまいがちな人も多いのではないでしょうか。
筆者も「子どもだけでなく、夫まで育てなければいけないのか…」と思ってしまいそうなところですが、長い目で見たときに夫が最強の子育てパートナーとなるよう、当事者意識の強い側からの歩み寄りが必要なのかもしれませんね。
(取材・文/大月真衣子、ひよこクラブ編集部)
■お話/堀江敦子さん
(スリール株式会社・代表取締役社長)
日本女子大学社会福祉学科を卒業後、大手IT企業勤務を経て、25歳で起業。大学卒業までに200名以上のベビーシッターを経験したことがあり、女性活躍に向けた両立支援や意識改革を得意とし、企業の研修・コンサルティング、大学・行政に向けたライフキャリア教育を実施している。大学や専門機関などでの講演も多数。著書の「自分らしい働き方・育て方が見つかる 新・ワーママ入門」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が好評発売中。