自分らしい子育てをするためのマインドセット
仕事をしながら子育てをしていると、日々目の前のことをこなすだけで精いっぱいになり、先を見すえて計画を立てたり、行動したり、ということが後回しになってしまうことも多いのではないでしょうか。
しかし、自分らしいキャリアと子育てを実現するためにも、先々の見通しを立てることは必要不可欠。
そこで今回は、子育てを通じた人材育成事業を展開する、スリール株式会社の代表・堀江敦子さんにお話を聞きました。堀江さんの著書の『新・ワーママ入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の内容も含めて、皆さんへのアドバイスをお伝えします。
自分らしいキャリアと子育てを実現するためのマインドセットの方法
子育て中はなんでも子ども中心で考えてしまい、自分がどうしたいかは二の次になりがちです。でも、これからの長いキャリア、なによりも大事なのが「自分指針をどうしたいか、どうありたいか」ということ。
ここでは「なりたい自分を描く」ということをゴールとして、自分らしいキャリアと子育てを実現するためのマインドセットの4ステップを紹介します。
ステップ1. 自分の思考グセを知る
女性の多くに見られる思考グセの特徴には、大きく分けて以下の3つがあります。
・三方向同時思考
「キャリア」「プライベート」「周囲との関係」の3つを同時に考えようとすること。これら3つを同時に考えようとした結果、複雑な意図が絡み合ったような複雑な状態になってしまいます。
・将来を「先読み」して「120%」の完璧をめざす
先に挙げた「三方向同時思考」×「先読み」×「120%」をかけ合わせてしまうことで、脳内はオーバーヒート状態に。その結果「私にはできない」と言った結論になってしまうことも。
・インポスター症候群
何かを達成したり成功したりしたとしても、それを自分の実力だと肯定できない傾向のこと。自分の能力を自己肯定できず、キャリアアップをあきらめてしまう行動をとってしまう場合も。
こういった思考グセは、昔から周囲から言われていることや、教育の影響もあると考えられるので、長年刷り込まれてきた思考グセをかんたんに変えることは難しいかもしれません。
でも、「私はこういう考え方をするクセがある」と自覚することで、自分を冷静に見つめることができるんです。
ステップ2. 「4つのL」でライフ&キャリアを捉える
アメリカで最新のキャリア論を広めていったサニー・ハンセン博士が唱えた概念に「integrated life planning」というものがあります。
これは、個人のキャリアは仕事だけでなく人生の複数の役割全体を包み込んで形成されるものと説明していて、その複数の役割というのが以下の「4つのL」です。
・Labor(仕事)
→職業としての労働でどのようなことをしてきたか
・Love(パートナー・家族・子育て)
→家族・パートナーとどんな関係を築いてきたか
・Learning(教育・学び)
→学校や地域などで何を学んできたか
・Leisure(仕事以外の活動)
→休日のどんな活動をしているか
このように、子育てを含むすべての時間や経験が切り分けられることなく、相互に作用して自分自身のキャリアを作り上げているんです。
こう考えると、育休や子育て期間中というのは決して“ブランク”ではなく、“新たな強みの磨き時”に思えてきませんか?
ステップ3. 子育てはキャリアのネックにならない
ステップ2と関連して、何度でもお伝えしたいのは、「子育てはキャリアのネックになるものではない」ということ。子育てを通じて得られるインプットは多大で、マネジメントスキルにもつながる経験でもあります。
働くママのみなさんの経験と視点は社会の宝です。しかし、まだ一般的にはこの認識に追いついていない人がほとんどです。
だから、まわりがどう言うかよりも先に、まずワーママ自身が「子育て経験をプラスに語る」という意識を強く持つことが大切なのです。
ステップ4 3年後のビジョンを絵に描く
「子育てはキャリアのネックになるものではない」と言いましたが、子育て真っ最中は、子育ての経験を仕事に生かそうとアクションを起こすこともままならないかもしれません。仕事での自己実現なんて遠い先に感じるママも多いと思います。
だから私は“今すぐ”ではなく“3年後”のなりたい自分を描くことをおすすめしています。
<3年後のビジョンの描き方>
1 今のモヤモヤを書き出す
→現在の自分の状況や気持ちを把握する
2 3年後になりたい自分を描く
→「なりたい自分」を絵に描いて可視化する
3 ②を実現するために必要なアクションを書き出す
→現在と未来をつなぐアクションが明確になる
このように状況を整理していくことで、「なりたい自分に近づけるかも!」という前向きな気持ちになれるんです。
ただし、今すぐ行動しようとあせらなくてもOK。何となく頭の中で「こうできたらいいな」と思い描くだけでいいのです。
このような準備をしながら、いつか思いきり飛び立てる日を待ちましょう。
ライフ&キャリアのデザインには長期的視点を持つ
子育てが始まってからのライフ&キャリアをデザインするうえで、大切にしてほしいのが「長期的視点」です。
長い人生の中には子どもの入園・入学・受験などに加えて、突然の異動やパートナーの転勤、親の病気などいろんな“想定外”が降りかかってきます。
そんな状況に圧倒されて、「今の状況を抱え込むのは無理…」と思い込み、後先を考えずに仕事を辞めてしまって後悔する女性をたくさん見てきました。
「家族のためにキャリアを一時中断する」という選択も時には必要かもしれませんが、大事なのは「その決断にちゃんと納得しているか」です。
一時的な感情に惑わされることなく、長期的な見通しを立てて納得したライフ&キャリアを計画しましょう。
そして、ここでもう一つ重要なことが「まわりの納得感や貢献の意識を忘れない」ということです。
“なりたい姿”を実現するために自分の意識だけを貫いてしまうのは単なる「ワガママ」です。
しっかりとパートナーや上司と話し合い、まわりも納得しながら決断していきます。
また、自分のなりたい姿を応援してくれたことに「感謝」をして最終的に「貢献」していく、という意識を忘れないようにしましょう。
働くママのお悩みにアドバイスをもらいました!
現役ワーキングマザーからのお悩みに、多くの働くママとかかわってきた堀江さんからアドバイスをいただきました!
Q
夫婦フルタイムで幼児が2人います。
ゆくゆくは、中学受験をさせたいので、その塾通いも考えると、とてもフルタイムのままサポートできるように思いません。甘いかもしれませんが、子どもの精神面を考えても、夫婦だけの育児に限界を感じています
私が退職する案も考えているのですが、教育資金、老後資金を考えるとあと8年は働きたいです。どこかでペースダウンしてもいいのですが、一度キャリアが途切れると、条件が一気に悪化するので踏み切れません。何かアドバイスいただけませんでしょうか?
A
まずは上司に前向きな打診をしましょう。今の状況、これからどうしたいと思っているかを話したうえで、一部在宅やフレックスタイム制など、今の会社でできる手だてはないかを考えてみてはいかがでしょうか。一人で抱え込んで勝手に退職するのはおすすめできません。上司への相談でいい案が浮かばなければ、人事など多方面に相談してみてください。
それでも、今の会社で仕事を続けていくのが難しければ、転職という選択も大いにアリだと思います。最近では、ワーママ専用の求人サイトもあり、柔軟な働き方ができるようになってきています。
キャリアが途切れることが心配であれば、細く長くでも仕事を続けていき、またフルパワーで働けるときのために備えましょう。
いつか子どもが巣立っていったとき、「子どものため・パートナーのために自分のキャリアをがまんした」というネガティブな感情を残さないためにも、常に「どんな自分になりたいか」を描きながら長期的にライフ&キャリアを考えていきましょう。
(取材・文/大月真衣子、ひよこクラブ編集部)
■お話/堀江敦子さん
(スリール株式会社・代表取締役社長)
日本女子大学社会福祉学科を卒業後、大手IT企業勤務を経て、25歳で起業。
大学卒業までに200名以上のベビーシッターを経験したことがあり、女性活躍に向けた両立支援や意識改革を得意とし、企業の研修・コンサルティング、大学・行政に向けたライフキャリア教育を実施している。大学や専門機関などでの講演も多数。著書の「自分らしい働き方・育て方が見つかる 新・ワーママ入門」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が好評発売中。
※文中のエピソードは口コミサイト「ウイメンズパーク」の投稿からの抜粋です