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絵本作家ヨシタケシンスケさん、育児で感じた「不必要な笑顔は人を傷つける」

子どもだけでなく大人も楽しめる作品が人気の絵本作家・ヨシタケシンスケさん。新作や絵本への思いを語ってもらった前半に続いて、後半は自身のお子さんが生まれたばかりのころを振り返ってもらいました。今だからこそ話せる、乳幼児期の育児の乗り越え方は?

関連:第一子女児育児中、よしお兄さん「おむつ替えも家事もなんでもやります」

子育てはいつも笑顔ばかりじゃない

――ヨシタケさんの絵本に出てくるお母さんは、いつもニコニコやさしいお母さんではありませんが、リアルで共感できます。このお母さん像は、どのようにして生まれたんですか?

ヨシタケさん: 僕の絵本は、笑顔が少ないと言われるんです。たとえば『なつみはなんにでもなれる』に出てくるお母さんは一回も笑っていないんですよ。それでもお母さんがなつみのことを嫌っているわけじゃないことはわかるし、不幸な家庭には見えないですよね。幸せを表現するときに笑顔がなきゃいけないかというと、そんなはずはないんです。笑顔を使わなくても信頼関係は描けるし、楽しさも表現できるはずだと思います。

――笑顔ばかりでも不自然ですよね。

ヨシタケさん: 子育てをしていて、そうそう親子でゲラゲラ笑わないですよね。現実の生活の笑顔の割合を考えたら、そんなに笑顔を出す必要はないなと思うんです。顔がみんなニコニコしていたら幸せかというと、そんなことはないわけですし。いつも笑顔のお母さんを見て、そうできていない自分を責めてしまう人もいるだろうし。“不必要な笑顔は人を傷つける”という事実は、僕自身の子育て中に感じたことなんです。

――子育て経験をイラストで描いたエッセイ集『ヨチヨチ父』もすごく素敵な1冊です。ご自身、お子さんが小さいころの育児を振り返っていかがですか?

ヨシタケさん: 上の子が生まれてからしばらくは本当に大変でした。上の子はとくに寝ない子で、本当に寝不足になりましたし、子どもが生まれてすぐ、妻がリウマチになって、体中が痛くて抱っこもできなくなってしまったんです。夜中に息子か妻の泣き声で目が覚める毎日で、「子どもを作ってよかったんだろうか」と思ってしまったことも。そう思った自分自身にも傷つく、そんな時期でしたね。

――エッセイでは、パパとしての戸惑いも多く描かれていますよね。

ヨシタケさん: 仕事なら「今日頑張れば、明日はラクになる」って思えるけど、育児は「今日頑張っても、明日はもっと大変かもしれない」という毎日で、今まで得た経験値がまるで役に立たない。その価値観の逆転に、まず戸惑いました。生活は思いどおりにいかないし、毎日、妻から「1分1秒でも早く仕事を切り上げて帰って来い」と言われるけど、そういうわけにもいかないし(笑)。追いつめられているときに、幸せそうな家族とか、“赤ちゃんは最高にかわいくて、子育てハッピー!”みたいなイラストを見ると、心底イラッとしたし、自分がそうできないことに落ち込みましたね。あのとき、笑顔って人を傷つけるなとすごく思いました。

――絵本もそうですが、エッセイでもヨシタケさんの描くお母さんは、基本的に笑っていないですよね。

ハッピーな絵には、「私も一緒!」って共感して喜ぶ人がいる一方で、そうじゃない人は落ち込むわけですよ。逆に、夜も寝られなくて大変だ!という絵なら、ハッピーな家は「大変だね。うちはありがたいね」って思えるし、大変な人は「うちと同じだ!」って気がラクになるかもしれないし。『ヨチヨチ父』を書くときも、子どもが小さかったときの自分は何を言われたらほっとしただろうか?を考えて、自分はこう感じたっていうことを正直に描くしかないと思ったんです。

「今、幸せか?」は今、決めなくていい

――当時を振り返って、今、赤ちゃんを育てているママ・パパたちにアドバイスをお願いいたします。

ヨシタケさん: 当時を振り返ると、いい瞬間もそうじゃない瞬間も、写真に撮っておけばよかったなと思います。かわいい寝顔とかは記録に残すけど、ぐっちゃぐちゃになったテーブルの上は撮らないじゃないですか。でも、当時のそういう写真が残っていたら、今、見てゲラゲラ笑うだろうなって思うんです。

今は、子育てに悩んだり、いろいろ考えちゃうけど、結論を出すのはあと回しにして、とりあえず写真や動画を撮っておくことをおすすめします。今が幸せなのかどうかは、今決めなくていい。結論をあせると、どうしてもほかの家庭と比べてしまいがちです。そこを比べる時間があったら、とりあえず洗濯物だらけの部屋や、自分のめちゃくちゃな髪形を写真に撮っておいて、10分でも20分でも寝たほうがいいです。

――ヨシタケさんの絵本と一緒で、日常の些細なことも見方次第でいくらでも楽しめるし、時が経てばその意味も変わるかもしれないですね。

ヨシタケさん: 今しかないんだから楽しまなきゃ!とか、かわいいって思わなきゃとか、無理やり思う必要はないんですよね。それは僕も、当時にはわからなかったことですけど。それは余裕が出てから楽しめばいい。3年後、5年後の自分へのごほうびとして、シャッターを切っておくといいと思いますね。

関連:りゅうちぇるの計画的な子育て #1育児編

「今が楽しくなくてもいい」。育児を頑張りすぎてしまう真面目なママ・パパに響く前向きなメッセージをくれたヨシタケさん。ヨシタケさんの絵本と同様に、大変な日常を面白がるアイデアが詰まった、楽しいインタビューでした。
(取材・文/川辺美希、ひよこクラブ編集部 写真/ひよこクラブ編集部)

■Profile/ヨシタケシンスケ
1973年、神奈川県生まれ。2013年発売の『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。
最新作『わたしのわごむはわたさない』が現在発売中。また、累計発行部数 32 万部を超えた前作『おしっこちょっぴりもれたろう』(PHP研究所)や、累計26万部の『なつみはなんにでもなれる』(PHP研究所)などヨシタケさんの大人気シリーズが、クリスマス限定バージョンで発売中。

『おしっこちょっぴりもれたろう』

作:ヨシタケシンスケ 発売:PHP研究所

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