保育園に落ちた!雇用保険や育児休業はどうなるの?
育児休業中の親にとって「保活」は死活問題。保育園に入れなかった場合にまず考えるのが、「育児休業や育休手当はどうなる?」ということです。預け先が決まらないまま収入が途絶えるのは絶対に避けたいものですね。今回は、会社勤めのママが保育園に落ちた場合に行うべき雇用保険や育児休業の手続きについて、社会保険労務士の加藤知美さんに聞きました。
加藤知美
社会保険労務士(エスプリーメ社労士事務所)
愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。3人の子育てのかたわら、文章能力を活かしたオリジナルの就業規則・オリジナル広報誌作成事業の2本柱を掲げ、専門知識をわかりやすく伝えて理解を得ることをモットーに企業の支援に取り組んでいる。
育児休業を延長するための方法とは
育児休業とは、1歳になる前の子どもを育てるために取得する休みのことで、休業期間中は収入保障のため、育児休業給付金(育休手当)が支払われます。
具体的な取得期間は取得1ヶ月前までに勤めている会社の上司や担当者と話し合って決定しますが、子どもの預け先が決まり親が職場復帰をした時点で、原則として終了になります。
しかし、保育園に入れなかった場合はどうなるのでしょうか。
育児休業や育児休業給付金は、子どもが1歳になってからは原則として対象となりません。つまり、親は無収入のまま、子どもを育てなければならない状況に陥ってしまうのです。
このような状況に対応するため、国では次のような制度を設けています。
育児休業延長制度
子どもが1歳になっても保育園に入れず職場復帰ができなかった場合、親が申し出ることで、育児休業を最大で子どもが2歳になる前日まで延長できる制度です。
ただし、延長するには段階的な申請が必要です。
まず、子どもが1歳になる2週間前までに最大半年間の延長申請を行います。そして半年後、依然として待機児童の問題が解消せず預け先が決まらなかった場合には、更に子どもが1歳6ヶ月になる2週間前までに延長の申請を行う、という手順を取ります。
なお延長制度を利用するには条件があり、下記のどちらかに該当しない場合は期間延長をすることができません。
(1)あらかじめ育児休業中に保育園などへ入所申し込みをしているものの、申し込みが通らず、預け先が決まらない場合
(2)育児を任せることのできる配偶者が、死亡やケガ、病気などで養育できない場合
パパ・ママ育休プラス制度
パパ・ママ育休プラスとは、1歳になる前の子どもを育てる両親が二人ともそろって育児休業を取った場合、育児休業期間が1歳2ヶ月まで延長される制度です。
パパ・ママが同時に育児休業を取ることで育児の環境がより充実したものになり、収入面の安心感を得ながら育児休業を延長できるというおトクな内容なので、利用する価値はあるでしょう。
なお、この制度を利用するためには、次の3つの要件をすべてクリアする必要があります。
(1)母親が、子どもが1歳になるまでの期間に育児休業を取っている
(2)子どもが1歳になる前に、父親が育児休業を開始している
(3)母親が育児休業を取り始めた後に、父親が育児休業を取っている
雇用保険の育児休業給付金はもらえるの?
育児休業給付金は、会社で雇用保険に入っている親が育児休業中の収入保障のために受け取ることができる給付金です。
具体的な金額は、休業開始から半年間は休業前の賃金をもとにした金額の67%、半年後からは50%、つまりおよそ給料の半額になります。
育児休業が延長になった場合も計算方法は同じで、休業開始から半年間は67%、その後は50%の金額を休業終了まで受け取れます。
受給までの流れ
育児休業が延長されることになったからといって、自動的に育児休業給付金も延長されるわけではありません。別途、延長の手続きをする必要があります。
育児休業給付金は、原則として2ヶ月ごとに「育児休業給付金支給申請書」を提出することで受け取れます。延長の手続きをする際も、延長前までと同じく「育児休業給付金支給申請書」が必要です。
その上で、延長の理由に応じて提出書類を準備しなければなりません。
保育園へ入れなかった場合は、入所申し込みが通らなかった旨を証明できる書類が必要です。一方、育児を任せている配偶者の養育不能の場合などは、住民票の写しや母子手帳、配偶者の状況がわかる診断書などが必要になります。
「育児休業給付金支給申請書」と延長理由に応じた必要書類の準備ができたら会社へ郵送し、延長の手続きをしてもらいましょう。提出するタイミングは、育児休業を延長する直前か直後(いずれも子どもが1歳になる前の期間)の申請時にあわせて行うことが通例です。
社会保険料はどうなる?
育児休業中は、会社の給料から天引きされている社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)の支払いは免除されます。免除期間は、産前・産後休業から育児休業が終了するまでの期間です。育児休業が延長になった場合も、延長期間内の社会保険料は免除になるので安心してください。
なお、社会保険料の免除対応を受けるには、会社側が「育児休業等取得者申出書」という書類を社会保険事務所へ提出しなければなりません。育児休業が延長になった場合には、再度この書類を会社側が提出することで、免除を受けられることになります。
これまでは、保育園に落ちたことを理由に退職を選ぶ親も少なくありませんでしたが、育児休業期間が最大2年に延びたことで、保育園の募集タイミングにあわせた職場復帰が実現できるようになりました。
保育園に入れなかったことを悲観し続けるのではなく、まずは落ち着いて期間延長の手続きを取り、自分や子どもの今後を落ち着いて考えてみてはいかがでしょうか。