思いやりのある子に育てたい!ママとパパの対応の正解は?
わが子には「やっぱり、思いやりのある子に育ってほしい」と願うママやパパも多いことでしょう。AI時代突入が叫ばれる中、コミュニケーション力アップのためにも「共感」「思いやり」は育ててあげたい…。では、具体的にはどうすればいいのでしょうか。
「思いやりのある子に育てるために、ママやパパがやっていいこと・悪いこと」について、目白大学人間学部子ども学科准教授・荒牧美佐子先生に話を聞きました。
子どもと一緒に考えよう。人のために何かをするということ
--まず、荒牧先生の考える「思いやり」とはどのようなものでしょうか?
荒牧先生:行動レベルでざっくり言うと“人のために何かできる”ということだと思っています。
--“人のために”と考えられるようになるのはいつごろからですか?
荒牧先生:“人のために”考えて行動できているかどうかを判断するのはなかなか難しいかと思います。「ほめてもらえるから」あるいは「今助けたら次助けてもらえるから」と考えているからかもしれません。ただ、幼児期の子どもであっても、「その子が悲しんでいるから」と相手の立場の立った行動もできると考えられています。
このように「相手の立場に立った行動ができる」ということが思いやりですね。
--幼児期でも「相手の立場に立つ」ということが可能なんですね。
荒牧先生:そうなんです。相手の考えや感情、視点を理解する能力は、幼児期から児童期にかけて発達すると言われています。それに先立ち、1歳半ごろには、お友だちが泣いていたら慰めたり、元気づけたりするなどの行動がすでにみられます。
それをさらに伸ばしていくためには「自分がされたらどう思うか」ということを、ママやパパが子どもと一緒に考え、そういう経験を積み重ねていくことが大事だと思います。
--自分がされたらうれしいこと、イヤなことなども経験を通して学んでいくんですね。
荒牧先生:子どもが行動を起こすときに、「怒られるから、ほめられるから」ではなく「正しいことは何か」を判断できるようになるためにも、幼児期の経験はとても貴重なんですよ。
思いやりを育てる! ママとパパがやっていいこと・ダメなこと
--家庭での働きかけとして、思いやりのある子が育つために、ママやパパはどのような対応をすればいいですか?
荒牧先生:まずは、自分だったらどうか、あるいは、相手の立場に立ってみるとどうか、といったことを想像する促しが必要かと思います。幼児期では、自分の立場とは異なる相手の気持ちを正しく理解することは難しい面もありますが、だからこそ一緒に考えてみることが大切だと思います。そして、自分たちがお手本になることです。日々の生活の中で、ママやパパが相手の立場に立った思いやりのある言動をすること。これがいちばんだと思います。
--たしかに、大人の言動を子どもはよ〜く見ていますよね。
荒牧先生:そして、子どもが思いやりのない行動をしたときに、頭ごなしにしかるのはNG。
たとえば、お友だちのおもちゃをとったとき、即座に罰を与えてそういうことをさせないようにする、という対応をするのではなく、なんでそういうことをしたのか、という背景を考えて子どもの話をしっかり聞いてあげてください。
--ママやパパが子どもの話をちゃんと聞いてあげることで、子どもも相手の気持ちを理解しようとするようになるんですね。
荒牧先生:相手の気持ちを聞くことはもちろんですが、自分の気持ちを説明できるようになることもとても大切なことなので、ママやパパは子どもとの対話を大事にするといいのではないでしょうか。自分の話を聞いてくれるという安心感を育てることも重要です。
--対話ですね。日々の忙しさにかまけて、じっくり子どもの話を聞けていないこともあり、反省です…。
荒牧先生:初めは大人が思う思いやりと、子どもが思う思いやりは少し違うかもしれませんが、長い目で見て“なぜ”をベースに子どもの話を聞き、働きかけをあきらめなければ、少しずつ子どもも自分で考えて思いやりのある行動ができるようになりますよ。
荒牧先生によると、思いやりの心を育てるために、自分と違う子の立場を体験するごっこ遊びや、登場人物の気持ちを考える絵本読み聞かせも有効なんだそう。
まずはママやパパが子どものお手本となり、「相手の立場に立つ」ということを意識してみてくださいね。
(取材・文/大月真衣子、ひよこクラブ編集部)
■監修/荒牧美佐子先生
(目白大学人間学部子ども学科准教授)
お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。博士(人文科学)。発達心理学を専門とし、著書に「子育て支援の広がりと効果」『発達科学ハンドブック 第6巻 発達と支援』(新曜社)等がある。