新型コロナで気になる乳幼児の運動不足。WHO推奨1日3時間以上を医師に聞く
大人にとって適度な運動は、ストレス解消などのメンタルヘルス(精神面における健康)につながります。実は、これは赤ちゃん・子どもも同じです。乳幼児期は心身ともにぐんぐん成長する時期だからこそ、毎日の運動が大切となります。
医師・森田麻里子先生に、乳幼児期の運動の大切さについて話を聞きました。
筋力が弱い子は、心身ともに不調を招きやすい傾向が!
乳幼児の運動は、ココロの安定に深く影響しており、スペインではそれを裏付けるデータが! WHOも乳幼児期からの運動を推奨しています。
新型コロナの感染予防などで外遊びが著しく減ると、メンタルにも影響します
――現在、新型コロナウイルスの影響で、子どもたちの外遊びの機会がぐんと減ってしまい、「運動不足はもちろん、ストレスがたまりそうで心配」と悩んでいるママやパパも多いようです。
森田先生 そうですね。外遊びができないと乳幼児でもフラストレーションがたまる子は多いと思います。
2012年、スペインのスポーツ教育の研究者が発表した論文でも、子どもの運動とメンタルヘルスには深い関係性があることがわかっています。
調査では6歳から17歳の690人を対象に、上半身と下半身の筋力の強さを測定し、健康に関するアンケート結果との関連を調べたところ、筋力が弱い(平均以下)グループはメンタルヘルスの不調が約3倍、頭痛や腹痛などの体調不良を訴える子も1.4倍になるという結果が。また勉強も、筋力が弱いグループは成績が振るわない傾向が見られました。
この調査は、6歳から17歳を対象にしていますが、5歳以下の子にまったく当てはまらないとは考えにくいと思います。
毎日の運動習慣は、ねんねの時期から意識して!
――乳幼児の場合は、どのぐらい運動するといいのでしょうか。
森田先生 WHOでは、子どもの肥満や生活習慣病を予防するための乳幼児の運動について次のようなガイドラインを設けています。
【0歳代】ねんねのころから1日合計30分以上。ずりばいを始めたら、できるだけ長く床で遊ばせる。
【1~2歳代】1日3時間以上は、かけっこや三輪車をこぐなど、体を動かす遊びをする。体温がやや上がるぐらいの運動量がベスト。
【3~4歳代】1日3時間以上の遊びと、1時間以上のやや激しい運動をする。
――0歳代は、具体的にどんな運動をするといいですか?
森田先生 ねんねのころは、親が見守る中で、赤ちゃんが嫌がらなければうつぶせ練習をさせるといいと思います。うつぶせ練習は、こまめに繰り返すことで、首や背中の筋肉がしっかりしていきます。
またはいはいをするようになったら、なるべく家の中ではいはいさせて。はいはいは腕や足の力をつけるのに最適な運動です。
――1歳代以降で、1日3時間以上運動するのは、かなりハードルが高いように思いますが…。
森田先生 確かにハードルは高いですよね。でもベビーカーに乗せて移動するのではなく、歩いてお散歩したりと歩く、走るも運動と考えてください。また家の中でダンスをしたり、布団の上でコロコロ転がったりするのも立派な運動です。布団を少し高くして山を作ってあげたりすると、運動量もアップします。
運動不足が気になるときは、世の中が落ち着いてからの話になると思いますがベビースイミングなど運動系の習い事を始めるのもいいと思います。運動は、乳幼児期から習慣にすることがカギです。
(取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部)
運動を通してココロの健康を保つには、楽しく体を動かすことが大切と先生。もし「運動遊びをしているのに、あまり喜ばない」と思うときは、月齢に合った運動か確認を。たとえばボール(布製)遊びは、物がつかめるようになる7カ月ごろからがベスト。すべり台など公園の遊具で遊べるのは、おすわりがしっかりできるようになる8カ月ごろからが目安です。子どもは成長に合った運動だと楽しく遊べます。
■監修/森田麻里子先生
(医師・小児睡眠コンサルタント)
2012年東京大学医学部医学科卒業。仙台厚生病院麻酔科などで勤務。2017年、第一子を出産。子どもの夜泣きに悩んだことから、睡眠についての医学研究のリサーチを始め、赤ちゃんの健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立し、代表を務める。2019年より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。著書に「東大医学部卒ママ医師が伝える 科学的に正しい子育て」(光文社新書)などがある。