パパがリモートワークに! ママと赤ちゃん・子どもはどこで過ごす?
昨今、新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの会社がリモートワークを実施しています。
パパがリモートワークとなった場合、赤ちゃんとママは、お家のどこで、どのように過ごすのがいいのでしょうか。
そして、ウイズコロナ、アフターコロナの世界で働き方はどのように変化していくのでしょうか。
1児のママでありながら社会学を専門として子育て世帯の調査をする、明治大学商学部教授・藤田結子先生に話を聞きました。今回は専業主婦編、次回は共働き編をお届けします。
仕事、家事、育児、すべてをトータルしてママとパパで分担して
――パパがリモートワークになって、日中の赤ちゃんとママの過ごし方に悩んでいるという声をよく聞きます。
まず、赤ちゃんや子どもとママの過ごす場所についてはどのような考え方をすればいいのでしょうか?
藤田先生(以下敬称略) 日本の住宅は狭いですし、それぞれの住宅事情によって変わってくるところもありますが、基本的にはパパが仕事をする部屋と、専業ママと赤ちゃんが過ごす部屋は可能なら完全に分けたほうがいいと思います。
――パパが仕事をしている姿を子どもに見せるのもいいのかな、と思ったのですがそういうわけではないんですね。
藤田 普段パパが会社に行っている場合、大抵子どもはパパが仕事をしているということを認識していると思いますし、家でできる仕事って限られていますよね。リモートワーク中に特殊なことをしているわけではないと思うので、そこを気にかける必要はないと思いますよ。
それよりは、可能なら部屋を分けてしっかり仕事に集中してもらって、5時か6時には仕事を切り上げて、そこから家事や育児をやってもらうほうがいいのではないでしょうか。
――確かに、夕方の忙しい時間にパパが戦力となればとても助かりますね。
藤田 今は幼稚園や学校も休園・休校となり、保育園もどうしても保育を必要とする人以外は登園自粛となっている状況です。
そんな中で、ママたちは朝から家事や子どもの世話だけでなく、幼稚園や学校に代わって教育の役割まで一手に背負っています。
――子どもがいる家庭にとっては本当に大変な状況ですね。
藤田 そんな状況を乗りきるためにも、外での仕事だけを仕事と思わず、家事・育児などを含めて仕事と捉え、トータルで見たときにママの負担が大きくならないように気をつけたいですね。
パパが家で8時間仕事をして、その間ママが子どものお世話や家のことをやっているなら、それ以外の時間の家事・育児はきちんと分担するといいと思います。
いつも通りのパフォーマンスを保とうとしなくてOK
――これまで日中は会社に行っていたパパがリモートワークになったことで、食事やお昼寝の時間などの赤ちゃんの生活リズムが崩れてしまう、ということもあるようです。
藤田 これは完全に赤ちゃんの生活リズム優先で過ごしていいと思います。
パパは大人ですから、少しくらいごはんを食べる時間が前後したって大丈夫ですし、自分のことは自分でやってもらえばいいと思いますよ。
また、今は緊急時なので、ママもパパもいつも通りのパフォーマンスを保たないといけないと思わないほうがいいと思います。
子どもが「パパと遊びたい!」となったりした場合、パパの休憩がてら子どもと過ごす時間を作るのもいいですし、ママが「ちょっと分担してほしい」と思うことがあれば、パパの仕事の様子を見てお願いしてもいいと思うんです。
――そのためには勤務先を含め、社会全体の理解が必要になってきそうですね。
藤田 そうですね。今回は大学なども休みになったり、社会全体に影響があったので、ある程度は会社側も理解していると思います。でも、子育てをしてこなかった男性上司たちは、家庭内での急激な育児負担の増え方を十分理解していないかもしれません。できれば自分の状況を伝えたほうがいいでしょう。
とにかく今は、家族みんなが心身ともに健康であることをいちばん大切にしたいですね。
――今のように、外出も思うようにできない状況で、家族とずっと家にいることに息苦しさを感じてしまうという声もよく聞きます。
藤田 この生活の中で気をつけたいのが、家族と向き合いすぎないこと。
これまで経験のない事態で先も見えない中、気づかないうちにストレスを抱えていたり、不安になったりすることもあります。だから、相手にも自分にも完璧を求めるのはやめましょう。
時には、ママとパパが交代でお散歩に行ったり、一緒にいない時間を作ることも必要です。
アフターコロナ、働き方はどう変わる?
――現在は緊急事態宣言のもと、リモートワークという働き方が増えていますが、社会学の観点から見たときにアフターコロナの働き方はどう変化していくと思いますか?
藤田 私が調査したのは働くママたちだったのですが、「できればこのままリモートワークを続けたい」という声が多くありました。
この状況が長く続けば、リモートワークが当たり前になるかもしれませんが、6月で緊急事態宣言が解除された場合、現状のリモートワークの形がそのまま残るのは難しいかもしれません。
――定着するにはまだ時間が必要ということですね。
藤田 もともと日本の働き方自体がリモートワークやテレワークになりにくいという側面があるんです。
――それはどういったことが関係しているのでしょうか?
藤田 欧米では一つの職務で自分の担当の仕事のみをこなす傾向にあります。
それに対し日本は、会社の中でいろいろな仕事を引き受ける何でも屋さんであることが多く、みんなで協調性をもって働くことを大切にしている傾向があります。
――確かに、日本は一つの会社でも配置転換によっていろいろは職種を経験することがありますね。
藤田 欧米では自分の仕事が終わったら家に帰る、なんてこともありますが、日本では上司が帰るまで帰れなかったり、手が空いたらほかの人を手伝ったりもしますよね。
どれだけ業績を残したかよりも、出勤や残業などの勤務態度によって忠誠心を示すことで評価が高くなる部分もまだ多く残っています。
そんな現状なので、テレワークだと働きぶりを認められにくく、出勤できるようになったら会社にいようとする人も多いんじゃないでしょうか。
――では、今回の新型コロナウイルスによる影響は、私たちの働き方に大きな変化をもたらす要因にはなり得ないということでしょうか?
藤田 新型コロナウイルスうんぬんより、日本の雇用制度そのものを変えなければ働き方も大きく変わらないのではないでしょうか。
しかし、今回のことでリモートワークができるという証明になった部分もあります。
これは私の予想ですが、女性のほうが育休を取りやすいという会社の雰囲気があるのと同様に、組織の中だとリモートワークも女性のほうがしやすくなるのではないかと思っています。
働くママたちは「週5日リモートワークでも問題ない」と答える人は多いですし、通勤時間を短縮できるとその分お迎えなども行きやすくなるというメリットがありますよね。
今回のコロナ禍における変化によって、子育て中の女性が働き方の選択をできる社会になることを期待しています。
お話・監修/藤田結子先生 取材・文/大月真衣子、ひよこクラブ編集部
パパがリモートワークになって日中の過ごし方に悩んでいるママはぜひ参考にしてみてください。
新型コロナウイルスによって私たちの生活がどのように変わっていくのか、まだわからないところもたくさんありますが、ポジティブな変化はどんどん取り入れていきたいですね。
藤田結子先生(ふじたゆいこ)
(明治大学商学部教授)
Profile
東京都生まれ。慶応義塾大学を卒業後、大学院留学のためアメリカとイギリスに約10年間滞在。06年に英ロンドン大学で博士号を取得。16年10月から現職。専門は社会学。調査現場に長期間、参加して観察やインタビューを行う研究法を用いて、日本や海外の文化、メディア、若者、ジェンダーなどの研究をしている。著書に「ワンオペ育児 わかってほしい休めない日常」(毎日新聞出版)などがある。