北海道では、新型コロナとインフルエンザに同時感染した子も! 見分けはどうしたら【専門医】
夏になっても終息の兆しがない新型コロナウイルス感染症。それどころか「第2波!?」と思うような感染者数の発表が続いています。秋になると、例年インフルエンザウイルスの感染が心配されますが「熱が出たとき、インフルエンザかコロナかすぐに見分けってつくの?」「両方一緒にかかったらどうすればいいの?」など、今年は新たな心配が増えそう。感染症に詳しい、横浜市東部病院 小児肝臓消化器科 乾あやの先生に、インフルエンザと新型コロナウイルスについて、2020年7月30日時点でわかっていること、考えられることを聞きました。
北海道では、新型コロナとインフルエンザに同時感染した子も!
乾先生によると、子どもがインフルエンザや風邪、新型コロナウイルスにかかったとき、ママやパパでは見分けがつきにくいと言います。
「とくに子どもは、新型コロナウイルス感染症にかかるとほとんど軽症なので、風邪や軽度のインフルエンザだと見分けがつかないでしょう。
また2020年2月、北海道富良野地域で、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザA型に同時感染した小児の症例もあります。
そのため気になる症状があるときは、一度、かかりつけの小児科医に電話で相談してから受診してください」(乾先生)
適切に受診するために、覚えておきたい受診の目安
赤ちゃんや子どもに発熱の症状があるとき「病院などで、新型コロナウイルスに感染するのが心配。でも受診したほうがいいの?」と悩むこともあると思います。そんなときは、次の受診の目安を参考にしてください。
また受診の際には、かかりつけの小児科医に、必ず電話で相談してから受診しましょう。
【受診の目安】
<家で様子を見てもいい>
●微熱などの症状はあるが、元気があり、食欲もある
<診察時間内に要受診>
●せき、鼻水、熱、下痢など気になる症状がある
●呼吸がいつもと違う
●食欲がない、水分がとれない
●機嫌が悪い
<診察時間外でも要受診>
●3カ月未満で、38度以上の熱がある
●40度以上の高熱があり、ぐったりしている・機嫌が悪い
●けいれんを起こした
●呼びかけたりしても反応が悪い
●息づかいが荒いなど呼吸がおかしい・顔色が悪い
●水分がまったくとれない
●下痢、嘔吐を繰り返す
ウイルスの毒性は、新型コロナよりインフルエンザのほうがはるかに強い
「確実な治療薬やワクチンがまだない新型コロナウイルス感染症のほうが、インフルエンザより怖い」と考えるママやパパも。しかし乾先生によると、インフルエンザのほうがはるかにウイルスの毒性は強いそうです。
「インフルエンザに感染すると、すぐに関節痛、倦怠(けんたい)感、せき、鼻水、高熱などの症状が出ますが、それはウイルスの毒性が強い証しです。
インフルエンザウイルスが体内に侵入すると、体内では侵入したインフルエンザウイルスの情報を記憶します。そして次、同じウイルスが体内に侵入したときに、すぐに有効な手段で攻撃できる獲得免疫が作られ、再感染を防ぐ抗体もできます。
しかし新型コロナウイルスは、感染力は強いものの、インフルエンザほど毒性が強くないと考えられています。そのため感染しても獲得免疫がなかなか作られず、抗体ができにくいという説もあります。ただしエビデンス(科学的根拠)はまだありません」(乾先生)
コロナとインフルが同時に判定できるPCR検査が保険適応に
厚生労働省は、秋ごろからインフルエンザか、新型コロナウイルス感染症か判断に迷うケースが増えることを想定し、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの感染を同時に判定できるPCR検査を初めて保険適用にすると決めました。検査にかかる時間も50分程度と、従来のPCR検査より短くなるそうです。
(保険適用が何月からかは、まだ決まっていません)
また新型コロナウイルス感染症のワクチン開発にも期待が寄せられていますが、接種時期のめどは立っているのでしょうか。
「私たちがワクチンを接種できるようになる時期は情報が定かでなく、まだ見通しが立っていないのが現状です。
ただわかっているのは、これまで日本で主流となっている生ワクチンや不活化ワクチンではないことです。
全世界でワクチンを接種できるようにするには、気温や湿度、保管のしかたなどで品質が左右されないことが必要です。今、臨床試験が行われている主なワクチンには、
①ウイルスベクターワクチン
②DNAワクチン
③mRNAワクチン
などがあり、今後の動向が注目されます」(乾先生)
お話・監修/乾あやの先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
乾先生によるとコロナ禍でのストレスは、子どもよりもママやパパのほうが大きいと言います。ママやパパからは「感染予防で外遊びを控えていて1日中、家にいるのでしかってばかり…。疲れました」などの声も聞かれるそうです。そんなときは、感染対策をしてすいている公園などに行ってみませんか。スポーツ庁も、コロナ禍での幼児の運動不足や大人のストレスの増大などを懸念しています。ウィズコロナの状況は長引くと考えられますので、メンタルヘルスも意識していくことが大切です。
乾あやの先生(いぬいあやの)
profile
済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科部長 専門は肝臓、感染症、代謝異常。日本小児科学会専門医、認定小児科指導医、日本肝臓学会専門医・指導医、小児栄養消化器肝臓学会認定医。院内感染対策などの専門知識をもつインフェクションコントロールドクターでもある。