【専門医監修】家族が陽性になったら、子どもを守るためパーテーションも有効、ほか最新対策
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夏になっても、新型コロナウイルス感染症は終息する気配がありません。保育園や小学校などでも感染が確認されており、不安を感じているママやパパも多いのではないでしょうか。感染症に詳しい、横浜市東部病院 小児肝臓消化器科 乾あやの先生に、新型コロナウイルス感染症について2020年7月30日時点で、わかっていること、考えられることを聞きました。
新型コロナウイルスの予防接種が普及するまで終息は困難! ウィズコロナの意識をもって対策を
国内でも、新型コロナウイルス感染症の流行が再び拡大し始めています。政府が全国に緊急事態宣言を発令した4月には「新型コロナウイルスの流行は、夏には一度落ち着き、秋に第2波が来る」との予測もありましたが、実際は夏になっても終息する気配はありません。
「第2波、第3波というと、一度は終息して落ち着き、再び流行が始まるイメージかも知れませんが、新型コロナウイル
感染症については、人の移動を制限するなど大きな対策をとらなければ終息は難しいでしょう。そのため予防接種が受けられるようになるまでは“ウィズコロナ(コロナと一緒に)”と考えて、3密(密閉、密集、密接)を中心にした予防策をとることが大切です」(乾先生)
コロナに感染しても、子どもが軽症なのは、自然免疫という説も
保育園や小学校などでも新型コロナウイルスの感染が確認され、心配しているママやパパも多いと思います。
「日本小児科学会でも発表していますが、子どもの場合は、小児ぜんそくなどの合併症をもっている場合は重症化する可能性があります。しかし、合併症をもっていない場合は重症化するケースは少ないです。なかには、子どもが新型コロナウイルスに感染しても“軽い風邪”と勘違いするママやパパもいるほどです。
エビデンス(科学的根拠)はまだなく、あくまでも仮説ですが、ほとんどの子どもが無症状や軽症で済む理由は、新型コロナウイルスに感染すると、子どもや若い人は自然免疫が効果的に働くからではないかと考えられます。
自然免疫とは、体の中に細菌やウイルスなどが侵入すると、すぐに感知し細菌やウイルスを排除しようとする防御システムです。自然免疫は、おまわりさんのような役割をしていて、血液とリンパ液に乗って常に体内を巡回して、細菌やウイルスが侵入してこないか見張りをしています。
また新型コロナウイルスと結びついて体内に取り込み感染を起こす、“ACE2受容体”の数は加齢とともに増加するという説もあります」(乾先生)
家族に陽性者が出た場合は、隔離が原則! パーティションで仕切るのも有効
乳幼児をもつママやパパが新型コロナウイルスに感染したとき、心配なのが家族間での感染拡大です。感染力が非常に強い、新型コロナウイルスは家庭で防ぐことができるのでしょうか。
「新型コロナウイルスに感染し、自宅療養になった場合は、まず陽性者は別室に隔離することが基本です。食事を運ぶなどお世話をするのは、家族で1人だけにして接触は可能な限り避けましょう。必要な連絡は、メールなどで取り合ってください。
また室内でもマスクはつけて、換気はこまめに。手を洗ったときは、使い捨てのペーパータオルでふいてください。タオルなどの共有は避けます。
新型コロナウイルスは、便からもウイルスが排出されるため、用をたしたあとは必ず便座のふたを閉めてから流します。
もし陽性者と部屋を分けることができない場合は、できるだけ2メートルの距離を保ちましょう。できたらパーティションなどで仕切ったほうがいいでしょう」(乾先生)
また接触感染をなくすことが、感染拡大を防ぐカギになります。そのため触る頻度が高いリモコンのボタンや階段の手すり、ドアノブ、水栓レバーなどはこまめに消毒を。
ウイルスがついた手で、目をこすったり、食事をしたりすると感染するので、こまめな手洗い、手指消毒も徹底しましょう。
「両親が新型コロナウイルス感染症に感染して、子どもが陰性の場合は、子どもを預かってくれる自治体もあるので、事前にそうしたサービスを確認しておくことも大切です」(乾先生)
コロナの抗体検査キットで陽性でも、再感染の可能性が! カギとなるのは中和抗体
新型コロナウイルスの抗体をもっているかがわかる、抗体検査キットがインターネットでも手軽に購入できるようになり「一度、検査してみようかな?」と考えているママやパパもいるのではないでしょうか。しかし抗体検査キットは、手軽に検査できるメリットがある反面、デメリットもあるそうです。
「厚生労働省は2020年7月、新型コロナウイルスへの感染歴を調べる抗体検査で陽性になった8検体を調べた結果、再感染を防ぐ“中和抗体”を全検体で確認したと発表しました。国内で中和抗体が確認されたのは初めてです。
免疫には2種類あり、1つは前述の自然免疫。もう1つは、獲得免疫です。獲得免疫は同じ種類の抗原(細菌やウイルス)が、2度目に体内に入ってきたとき、前回の記憶を活かして、体の防御システムがすぐに反応。効果的に細菌やウイルスを攻撃します。ただし中和抗体がなければ、獲得免疫は得られません。
抗体検査キットは精度にバラつきがあり、陽性と判定されても十分な中和抗体が検出されない場合もあるので、そうしたデメリットもきちんと把握しておきましょう」(乾先生)
お話・監修/乾あやの先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
乾先生によると、新型コロナウイルスの子どもの感染は大人からがほとんどだそう。そのためママやパパが感染予防することが第一です。予防にはマスク着用が効果的ですが、日本小児科医会では「2歳未満の子どもにマスクは不要、むしろ危険!」と、子どもへのマスク着用の危険性を呼びかけています。子どもの予防はできることが限られているので、まずはママやパパの感染予防を徹底しましょう。
乾あやの先生(いぬいあやの)
profile
済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科部長 専門は肝臓、感染症、代謝異常。日本小児科学会専門医、認定小児科指導医、日本肝臓学会専門医・指導医、小児栄養消化器肝臓学会認定医。院内感染対策などの専門知識をもつインフェクションコントロールドクターでもある。