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重い障がいを持った子どものお母さんたちを支えたい 医療的ケア児が通える保育園を立ち上げた母の奮闘記 VOL1

「医療的ケア児」という言葉を聞いたことがありますか? 「医療的ケア児」とは、在宅で人工呼吸器や胃ろう(胃に穴を開け、直接栄養を送る手術や装置)を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な子どものことです。自らも「医療的ケア児」の出産育児、そして看取りを経験したひとりの女性が、同じ境遇の子どもや家族が安心して過ごせる場所を提供したい、また子どもに障がいがあっても働き続けるおかあさんを応援したいと、コロナ禍に保育園を立ち上げました。京都市を拠点に活動するNPO法人“i-care kids京都”代表で小規模保育園「キコレ」園長の藤井蕗(ふじいふき)さんのお話を聞きました。2回にわたりお送りします。

3歳を迎える前に亡くなった次男

私には3人息子がいるのですが、2012年に次男の旅也(たびや)が18トリソミーという先天性の染色体異常、重度の病気を抱えて生まれてきました。1年3カ月のNICUでの入院生活を経て、「もって3か月ぐらいだろう」と言われながらも在宅で医療的ケアを受けながら家族と時間を過ごし、3歳になる10日前に亡くなりました。その一連の経験が小規模保育園「キコレ」の立ち上げにつながりました。

次男の看病でいったん辞める決断をしたのですが、私自身アートセラピストとしてフルタイムで働いていて、仕事が好きで誇りをもっていました。だから、障がいを抱えた子どもを授かったとしても、親が自分のキャリアを生かし、社会とつながれる世の中にしたいなと考えていました。次男が亡くなったあと、「自分が一番やりたいのは、障がいをもった子どものお母さんたちを支える保育園だ」と思ったんです。

保育園の資金はクラウドファンディングで

温かみのある内装の小規模保育園「キコレ」

旅也の病気を通じてつながった仲間、医療的ケア児のお母さん、お父さんに「保育園を作りたい」と話したら、「じゃあ、みんなでやろう」となり、息子の訪問医の先生や訪問看護師ステーションの所長さん、幼稚園の園長先生や保育士さんなども加わってくれて、まずNPO法人“i-care kids京都”を立ち上げました。

とはいえ保育園建設の資金繰りはとても大変でした。クラウドファンドも立ち上げて、ありとあらゆることをして、なんとか工事費が集まりました。本当にたくさんの人たちの力に助けられたと感謝しています。ファンドレイジング(資金あつめ)を通じて、たくさんのかたに医療的ケア児について知っていただいたことがご支援につながったと思っています。

“i-care kids京都”の法人としての事業は、「小規模保育園キコレ」の運営、家族の支援事業、関係機関との連携事業などが柱です。「キコレ」は2020年4月に開園したばかりなのですが、コロナの影響もあって、入園式も一人一人個別で行い、登園自粛の通達がでるなど大変な船出になりましたが、6月からは子どもたちも揃い、毎日にぎやかに過ごしています。

医療的なケアを必要とする障がい児を積極的に受け入れる

人工呼吸器をつけた園児と

障がいのある子どもたちを受け入れていますが、一日の流れは普通の保育園と変わりません。そのなかで、医療的ケアが必要な子には看護師を中心に個別の配慮をするということです。

「キコレ」には、現在、7人の子どもが在籍。そのうち3人は医療的ケア児です。医療的ケア児というのは、日常生活のなかでたんの吸引や胃ろうといった経管栄養、人工呼吸器の使用などの医療行為を必要とする子どものことで、京都市ではケアの重症度によって1から5まで区分されています。

いま「キコレ」には、人工呼吸器が外せない状態で鼻からのチューブでペースト食を食べている子どもがいますし、とても小さく生まれて鼻からのチューブでミルクを飲んでいる子どももいます。他にも医療的ケアは必要なくても、重度の障がいのある子どもが4人います。その子どもたちを、保育士、看護師、管理栄養士、調理師など12人の職員がみています。

胃からのチューブでの食事でも、家族と同じものを食べさせたい

私は根本的に食べることは生きることにつながっているという考えをもっています。食べることが楽しいという幼いころから家庭での経験などがバックグラウンドにあるからでしょうか。5人兄弟なんですが、私以外が皆「食」に関わる仕事をしているんです。

また、旅也がNICUを退院するときに、「家族と一緒に同じものを食べさせたい」と病院の栄養士さんに相談したのですが、既存の栄養剤を使ったほうが体重や栄養価の計算など管理がしやすいからでしょうか、「この子に、食事?」「ペースト食?」みたいな反応があったことは今も忘れられません。

食べることは生きることにつながっている

季節を楽しめる保育園のおやつ。梅仕事もみんなでやります

それでもおかゆなど茶こしでこして作ったペースト食を胃ろうから入れることから始めて、最終的にはカレーライスも食べられるようになりました。おなかの調子が悪いときはプルーンのエキスを混ぜて便通を良くしたり、風邪を引いたときは子どものときに母が私にしてくれたようにりんごをペーストにしてあげたり、自然の食べ物で体を治していくということを大切にしました。

また、胃ろうに食べ物を入れるときに、「今日はこれを食べるよ」と声をかけ、ちょっとだけですが口から味見をさせていました。そうすることで味覚も育っていったんです。私の食に対する執念ともいえるこだわりは、医療者側からみたら、きっと面倒だっただろうなと思いますが、訪問看護師さんは「あきらめないでよかったね」と言ってくれました。

食に力を入れることで、保育園の子どもたちに変化が

食育にこだわったキコレの給食

保育園でも、その食へのこだわりを大事にしています。緑の野菜が食べられなかった子が、園で育てたきゅうりを給食に出したら、食べられるようになったということがありました。おいしいからか、給食で食べられる量がお家とは全然違うとお母さんたちもびっくりされています。

子どもたちが成長、発達していく姿を見るのもうれしいですが、お母さんたちがイキイキと仕事に行ったり、お迎えのときに子どもを嬉しそうにギューっと抱きしめたりする姿を見ると、「ここを作って良かったな」と思います。お母さんたちから「仕事をあきらめなくて良かった」と言っていただけることは、この活動を続けるうえで何よりの励みになります。

重い障がいをもつ子どものお母さんは、24時間休みなく子どもと向き合い続ける人生になります。でも、私はお母さん自身が休みをとったり、社会とつながったり、経済的に自立するということが大切かなと思っています。お母さんがしっかりと自分の時間や世界をもつことは、子育てにも必ず還元されるはずなので、私はこれからも仕事をするお母さんたちを応援していきたいです。子どもたちが小学校に入学してからも「キコレ」にいつでもみんなが戻ってこられるような温かい場所にしたいですね。

藤井蕗(ふじいふき)さんのプロフィール
アートセラピスト・保育士・特別支援教育教員免許取得・医療的ケア児家族
京都教育大学発達障害学科卒業後、ドイツ、スウェーデンにて障がい児・者の支援に携わる。2004年英国ハートフォードシャー大学大学院アートセラピー科修了。帰国後、医療法人にて発達障がい児、高齢者、緩和ケアの領域でアートセラピーを実践。二男・旅也が18トリソミーを抱えて生まれてきて、在宅移行する際に退職。著書「a life 18トリソミーの旅也と生きる」(クリエイツかもがわ出版)。自分自身の体験を通して、障害や病気を抱えた子どもを授かったとしても、お母さんたちが自分の仕事を続けられる社会にしたい、自分たちと同じような体験をしている子どもたちや家族たちのプラットフォームとなるような場所を作りたいと考え、「i-care kids京都」を立ち上げた。
「i-care kids京都」:https://i-carekids.com

取材・文/米谷美恵

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