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一週間にひとり虐待で死ぬ子がいる日本、児童養護施設の人手不足解決に挑む、ある女性

NPO法人チャイボラ代表理事 大山遥さん(写真提供:大山さん)

児童養護施設に暮らすこどもたちの大半は、虐待が原因で保護されていることをご存じでしょうか? 厚生労働省の発表によれば、平成30年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数は約16万件。そのうちの約4万5,000人の子どもが児童養護施設や里親の元で暮らしています。児童養護施設では、約2歳から18歳までのさまざまな家庭環境で育った子どもたちが生活しています。虐待を受けて育った彼らが他人への信頼を取り戻すためには、特定の養育者、つまり施設職員による一貫した関わりが必要です。そのために必要なのは、職員の確保と定着。そのことに気づいた大山遥さんは、それまで働いていた企業を辞め、NPO法人「チャイボラ」を立ち上げました。

今回は、日本における子どもの虐待や社会養護的施設(※)の実態を中心に現状について大山さんに話を聞きました。全2回でお届けします。

虐待された子の多くは、自己肯定感が低い

私たち「NPO法人チャイボラ」は、児童養護施設などにおける人材確保と定着の支援に取り組んでいます。

人間は、「排泄・食欲・睡眠」という三大生理的欲求を生まれもっています。そしてこの三つの欲求が満たされることにより、自己肯定感、つまり「自分が大切にされている」という感覚が育まれていくといわれています。しかし、日常的に虐待を受けている子どもは、この三大生理的欲求が満たされないため、自己肯定感が低い傾向にあります。

あかちゃんが泣くと周りの大人、家族は「おなかが空いているのかな?」「オムツが汚れて気持ち悪いのかな」などと考え、世話をします。あかちゃんはそうしてもらうことで「自分は大切にされている」ことを感じ、「自分を大切にしてくれている周りの人を大切に思う」気持ちが芽生えていきます。大切な人が見守ってくれている安心感があるから、あかちゃんの心に安全基地ができて、何かに挑戦しようという気持ちが湧くと言われています。

しかし、虐待を体験してきた子どもたちのなかには、周りから大切に育てられるという経験が積めないために、自身の存在を肯定することができず他人を大切に思うことが難しい児童もいます。そのため、「頑張ろう」「挑戦しよう」などの挑戦欲が湧きにくいのです。

子どもたちに必要なのは周りとの信頼関係

これらの子どもたちの自己肯定感を育むためには、特定の養育者が一貫して彼らと関わり信頼関係を築かなければなりません。そのために必要なのは、児童養護施設の職員を確保し定着させることです。現在、東京都の児童養護施設における子どもと職員の割合は約8対1(職員はシフト制で交代で見るため、このような割合になる時間帯が発生します)。地方では20対1という施設も見られます。児童養護施設などにいる子どもの年齢は、およそ2歳から18歳。この少ない人数で、職員は年齢も育った環境も違う子どもの面倒を見るわけですから、当然子どもたちのさまざまな欲求を満たすことは容易ではありません。

とはいえ、最近では職員の配置基準も約4対1~2対1ほどまで改正されてきました。国や自治体から下りる人件費も増えてきています。しかし広報費がないため施設によってはホームページをもっていなかったり、あっても情報が足りていなかったりなど、十分な広報力が期待できません。つまり、児童養護施設などに興味をもっている人に、十分な情報が届かないことで人材確保ができないという図式ができあがります。

そのことを知った私たちは、社会的養護施設の人材を確保、定着させるために、広報を中心とした情報発信などのサポートを始めました。

職員確保と定着の取り組み

チャイボラが企画する施設見学会の様子 (写真提供:大山さん)

人材確保の手段は四つ。一つ目は「チャボナビ」、いわゆるこれらの施設の情報を発信するためのサイトです。二つ目が施設見学会の企画、サポート。三つ目は専門学校、短大、四大において、社会的養護についての認知を高めるための出張授業。四つ目は、Twitter、YouTube、Instagram、FacebookなどのSNSを使ったオンラインでの情報発信です。

また人材の定着については、2021年1月に、社会的養護施設で働く職員のための相談窓口を公開予定で、今、まさにアプリを開発中です。

私が働いている児童養護施設で、コロナ期間に休職者・退職者が相次いだことで相談窓口を作ろうと思ったんです。現状でこのような相談窓口はありませんから、このアプリは、今後、私たちの活動の大きな柱になっていくはずです。

施設の改善点を一緒に考える

社会的養護について知ってもらうために、施設職員と多くの大学等で講義を行っています(写真提供:大山さん)

年間にどのくらい虐待の通報があるかご存じですか? 厚生労働省によれば約16万件。1週間に一人の子どもが虐待により命を落としていると報告されています。

約16万件の虐待の通報のうち、「今すぐ対応しないとまずい」という緊急性の高い子どもが保護され児童養護施設などで生活しています。「まだ大丈夫」と思われれば家に戻されるので、未だに虐待下に置かれている子どもも存在しているはずです。

活動のなかで見えてきた新しい課題に着手

11月に開催されたある児童養護施設の見学会。画面越しに伝わる職員の子どもへの熱い思いに、参加者は大きく頷いていました。

残念ながら、現段階では施設によっての格差は否めません。今は、依頼があった施設の情報は全て>チャボナビに掲載しています。しかし良いことばかりを書いて人を呼べば、辞めてしまう可能性も高くなるので、今後は、掲載前にメンバーが施設に出向く予定です。もし仮に改善が必要そうな箇所があったら、掲載しないではなく、「一緒に頑張っていきましょう」と働きかけていこうと話しています。

NPO法人は、社会課題を解決するために存在するので、課題解決をするために適正な団体規模で、とにかく早く課題を解決する必要があります。だから、課題が解決した瞬間に解散してもいいとも思っています。でも、活動を続けているなかで次の課題が必ず見えてくるんですよ。

実はこの活動を通して、里親制度など新しい課題も見えてきています。社会的養護施設の人材不足という課題をできるだけ早く解決して、次にシフトしていこうとすでに着手しています。団体として見えてきた課題をひとつずつスピーディーに解決することをこれからもめざしていきます。

そのために、助成金だけでなく、寄付金も伸ばしていくことも私たちの課題ですね。チャイボラは一切施設から対価を得ていません。広報費がそもそもないですからね。メンバー全員がボランティアです。ここまで持ち出しで活動を広げてきました。皆さまのご理解とご支援が活動の原動力となります。ぜひお力をお貸しください。いただいたご支援はしっかりと施設へ還元していきます。

チャイボラの活動をより多くのかたに知っていただけるように、12月13、20、27日(全て日曜日)20時からオンラインで学習会を実施します。興味のある方はチャイボラのfacebookページをご覧ください。

※『社会的養護施設』は、「保護者のない児童や被虐待児など家庭環境上養護を必要とする児童などに対し、公的な責任として、社会的に養護を行う施のこと、子どもの年齢や状況によって、乳児院、児童養護施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、自立援助ホームの六つの形態があります。

<大山遥さんプロフィール>
1985/5 新潟県上越市生まれ
2005/4 東京海洋大学海洋科学部海洋生物資源学科入学
2009/4 (株)ベネッセコーポレーション こどもちゃれんじマーケティング部入社
2016/1 (株)ベネッセコーポレーション こどもちゃれんじマーケティング部退職 
2016/4 日本児童教育専門学校入学
2016/5 都内児童養護施設にてアルバイトとして勤務開始      
2017/2 専門学校のクラスメイトと共に、任意団体チャイボラ設立
2017/6 児童養護施設 エスオーエスこどもの村で学生と施設を繋ぐイベントをスタート
2017/8 東京都社会福祉協議会児童部会人材対策委員会との連携スタート
2018/6 NPO法人 チャイボラ設立

取材・文 米谷美恵

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