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人前で自分の意見が言える子に育つために親ができること_『ハーバードで学んだ 最高の読み聞かせ』著者インタビュー(後編)

更新

ハーバード大学教育学大学院にて、本書のテーマである『ダイアロジック・リーディング』に出会い、研究を重ねていらした加藤映子先生。ダイアロジックとは「対話(dialogue)の」という意味の形容詞。『ダイアロジック・リーディング』とは、ひとことで言うと「対話しながらの読み聞かせ」です。インタビュー後編では、質問の答えがかえって来たときの親の受け止め方のポイントや、絵本の読み聞かせで育つ力などについて伺いました。

自分の意見が言える子どもに育てるために

絵本を読み終わったあとに「面白かった?」と聞くと、子どもたちは「面白かった!」と答えます。ただ、そこからさらに踏み込んで、「何が面白かった?」「あなたならどうする?」などの質問はしていませんでした。

―――幼い頃から自分の意見を聞く質問をしていれば、話せるようになるものですか?

加藤先生(以下敬称略) よくニュースで見る、夏休みやお正月に帰省先から帰ってきた子どもたちにインタビュアーが「夏休みはどうでしたか?」と聞くシーン。日本の子どもたちは「面白かった」しか言わない子がほとんどですね。もしこれがアメリカの子なら「面白かった。なぜならば、こんなことをしたからだよ」と、必ずその理由まで答えます。そこまで答えないと、相手がわからないと思っているからです。

―――なるほど。それは個人差なのかなと思っていましたが、違うのですね?

加藤 もともと日本はノンバーバルなコミュニケーションを取ろうとする国です。言葉で伝えなくても、相手の意を汲むとか推し量る文化がありますね。いっぽうアメリカは何でも理由を尋ねられます。私はアメリカの大学に行っていたころ、担当教授から「困っていたら自分で言いに来なさい」と言われました。日本では、もし子どもに元気がなかったら「どうしたの? 大丈夫?」と、周囲が声をかけますが、そんなことは察してくれないわけです。教授からは「君たちが困っていても、言葉で言ってくれないとわからない」と、はっきり言われました。それは、すごい衝撃でしたが、自分の気持ちを言葉で表現することを求められる環境に育つと、意見が言える子に育つと思います。

子どもの答えはすべて肯定してあげる

日本の教育も知識偏重型から仲間と協調する力や共に問題を解決する力などのコミュニケーション力を重視するように変わってきています。自分の意見が言える子に育てるというのは、時代が求める子ども像でもあるかもしれません。

―――質問に対する子どもの答えを聞いたときに、親が気をつけたいことは?

加藤 小さいころは、とにかく自分の意見を話すことを楽しんでほしいので、子どもが言うことを必ず肯定してあげることです。「そうだね」「そうなんだ」「それ、面白いね」と、どんな意見でも肯定して受け止めることが大事です。大人の私たちも「そうなんだ」と聞いてもらえると話しやすくなりますね。「だけどさぁ」と、否定されると、途端に話したくなくなる。子どもはなおさらです。

―――つい、親が考える理想の回答に結びつけようとして「そうじゃなくて、こうじゃない?」とか、口を挟んでしまいそうです。

加藤 それはご法度です。「あなたはどう思う?」という質問に、正解はありません。親にこう答えてほしいというものがあるかもしれないけれど、聞いているのは子ども自身の考えですから、「そう思うの。面白いね」と肯定してあげることが大事です。

――――もし残酷なことなどを言ったらどうしたらいいですか?

加藤 幼い子が反社会的なことなどは言わないと思いますが、もしかしたら「僕、潰してやる!」とか「殺してやる!」などと言うことがあるかもしれません。そんなときは「残酷だよね」「痛いって泣いちゃうよ」と、やんわり否定する。もしくは「え、どうして殺しちゃうの?」と、さらに質問を重ねてみましょう。すると、表面的にはわからない別の理由が見つかるかもしれません。そうなのであれば、話すことで親が子どもの気持ちを知るきっかけにもなります。「そんなこと言っちゃダメ!」と否定するのではなく、まずは受け止めて、会話を広げてみてください。

絵本から子どもの新たな可能性が見つかることも

絵本の「読み聞かせ」は寝かしつけ時の親子のふれあいタイムと思っていましたが、読み聞かせ中に質問をすることで、子どもの能力が伸ばせるとわかりました。

―――ダイアロジック・リーディングでどんな力が伸びますか?

加藤 これまでお話ししたように、自分で考える「思考力」や、それを人に「伝える力」、そして、語彙が増えることにより「読解力」も伸びるでしょう。それらは、これから子どもたちが社会を生きていくための基礎力になるでしょう。
 もちろん、そこから新たな子どもの可能性が見つかることもあります。お掃除ロボットのルンバを生み出したアイロボット社の社長は、3歳のころに自宅のトイレが詰まり、お母さんが業者を呼ぼうとしたとき、「ママ、トイレのことが書いてあった絵本があったよね。あれ、読んで」と言ったそうです。そして、親子でトイレを修理できた経験があり、そこから物作りへの興味が生まれたそうです。このとき「じゃあ、一緒にやってみよう」と言ったお母さんが素晴らしいですね。もし、お母さんが「そんなの無理よ」と言っていたら、この世にルンバは生まれなかったかもしれません。

―――絵本にはいろいろなきっかけが詰まっているということですね。

加藤 いまの子どもたちが大人になるころの社会がどうなっているかは未知ですが、社会に出るとプレゼン力が求められるシーンが多いですね。プレゼンにも慣れが必要です。場数を踏むことが大事ですが、その入り口が、絵本の読み聞かせにあるのです。
家庭の中の楽しい時間の中で、子どもの力が育つのですから、あまり複雑に考えずに親子の会話を楽しんでほしいです。子どもから何回も同じ本を読んでと言われるかもしれないけれど、昨日と違う質問をしたら、どう答えるかな?などと考えて、親子で楽しんでください。今はおうち時間がふえて、パパと過ごす時間も多いでしょうが、パパとママでは質問のジャンルが違って、子どもの回答の幅が広がる可能性もあります。子どもも何を聞いてくれるかな?と楽しみにするので、ぜひ家族で楽しんでほしいです。


ダイアロジック・リーディングはできるだけ早くからはじめた方がいいそうですが、いくつからはじめても遅くはないと加藤先生は言います。子どもからどんな答えが返ってくるかを想像しながら絵本を選ぶのも楽しそう。先生のご著書は、クリスマスプレゼントに絵本を選ぶときの参考にもなりそうです。(取材・文/江頭恵子)

思考力・読解力・伝える力が伸びる
ハーバードで学んだ最高の読み聞かせ
(かんき出版)

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