1才ごろの母乳には栄養がない?ミルクだと太る?母乳・ミルクの気になるハナシ【助産師監修】
母乳とミルクの成分の違いや、赤ちゃんの成長に与える影響についてなど、ネット上ではさまざまな情報やウワサが飛びかっています。科学的根拠に基づいた、正しい情報を探すのはなかなか難しいと感じることはありませんか。
そこで、母乳とミルクにまつわるママ・パパたちが気になる疑問について、助産師の小澤千恵先生に聞きました。
【Q】母乳と粉ミルク、栄養価が高いのはどっち?
【小澤先生から】
多少の違いはありますが、基本的にはミルクは母乳にできるだけ近づけて作られているので、母乳にも粉ミルクにも赤ちゃんの成長に必要な乳糖や脂質、オリゴ糖、タンパク質など栄養が同等に含まれています。ですから、どちらを与えても大丈夫です。
違う点としては、母乳には免疫物質が含まれていることと、母乳は赤ちゃんの成長に伴い成分の割合が微妙に変わること。一方、ミルクには母乳に少ないビタミンK、ビタミンDが多く含まれます。
【Q】1才ごろの母乳には、ほとんど栄養がないって本当?
【小澤先生から】
母乳の成分は時期によって変化しますが、母乳が出ている限り栄養がなくなるということはありません。このようなウワサが発生した理由としては、1才ごろになると栄養の大半を離乳食からとる必要があり、“母乳の栄養だけではたりない”という意味がもとになっているのかもしれません。
【Q】母乳育児だとSIDSを予防できるって本当?
【小澤先生から】
SIDS(乳幼児突然死症候群/にゅうようじとつぜんししょうこうぐん)は、元気だった赤ちゃんが事故や窒息ではなく、突然亡くなってしまう病気のこと。原因は解明されていませんが、母乳育児がSIDSの予防になることは多くの研究で裏づけられていて、アメリカ小児科学会、日本の厚生労働省も、SIDS予防に母乳育児を推奨しています。
【Q】ママが飲食したものって、母乳の味や成分に影響する?
【小澤先生から】
母乳の味やにおいは、ママが食べたものに影響されるという考え方もありますが、科学的根拠はありません。ただし、アルコールやカフェインなど、母乳に移行する飲食物もあるので、注意が必要です。
【Q】授乳中のママが飲食していいもの・ダメなものは?
【小澤先生から】
飲食物の中には、成分が母乳に移行するものとしないものがあります。以下で、飲食していいか悩みがちなものについて紹介します。
●辛いもの/〇
香辛料やスパイスの効いた食べ物は、食べても大丈夫です。食べ物の成分がそのまま母乳に出るわけではなく、赤ちゃんに害はありません。
●甘いもの/〇
甘いものを食べると母乳がドロドロになる、乳腺が詰まるという説もありますが、科学的根拠はありません。ただし、産後は体力が落ちているので、消化のためにも適量を食べるようにしましょう。
●コーヒー・紅茶/△
飲んだあと数時間は、母乳に微量の
カフェインが含まれます。赤ちゃんを
観察して、眠りにくそうなどの変化がな
ければ、1日1~2杯程度は飲んでもOKです。
●お酒/×
母乳にアルコールが移行するので、控
えましょう。どうしても飲みたい場合は、授乳の間隔を3時間以上空け、授乳直後にたまに飲む程度にして。
【Q】ミルクのほうが太りやすいって本当?
【小澤先生から】
厚生労働省が2019年に改定した「授乳・離乳の支援ガイド」にも「『母乳だけの育児』と『混合授乳』の間に肥満発症に差があるとするエビデンスはない」との記載がされています。
ただし、母乳と比べて、哺乳びんのほうがミルクが出る勢いが強く、飲みすぎてしまう子もいるかもしれません。ミルクの場合、月齢の目安量以上は飲ませないようにして。
監修/小澤千恵先生 取材・文/ひよこクラブ編集部
小澤千恵先生(おざわちえ)
Profile
埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター 母体胎児部門 副看護師長・助産師。毎日たくさんのママの授乳の悩みに寄り添ってい
るベテラン助産師。小学生の女の子のママ。
「母乳のほうが~」「ミルクのほうが~」とあおる情報もありますが、母乳・ミルクどちらを飲ませても、赤ちゃんは元気に成長します。根拠のないウワサに惑わされず、授乳ライフを過ごしてください。
『ひよこクラブ』2021年1・2月合併号(12月15日発売予定)では、「助産師・産婦人科医が解決! おっぱい・ミルクの疑問・悩み50問50答」の特集があります。この記事内で紹介しきれなかった疑問もたくさん取り上げています。
参考/『ひよこクラブ』2021年1・2月合併号 特集「助産師・産婦人科医が解決! おっぱい・ミルクの疑問・悩み50問50答」