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赤ちゃんがいる家庭での防災、避けたいのは被災時の孤立化【専門家】 #あれから私は

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避難所に来た親子
hisa nishiya/gettyimages

2021年3月11日で、東日本大震災から10年がたちます。この10年の間にも、熊本地震や西日本豪雨、北海道胆振東部地震などさまざまな災害に見舞われた日本。防災意識として、どうような変化があったのでしょうか。再度確認しておきたいことはどんなことでしょうか。NPO法人 MAMA-PLUG事業代表の冨川万美さんに、赤ちゃんがいる家庭での防災意識の変化などについて聞きました。

防災意識が高まったことは確か。実践するかしないかがポイントに

――甚大な被害があった東日本大震災から10年、赤ちゃんのいる家庭の防災意識はどのくらい変わりましたか。

冨川さん(以下敬称略) 東日本大震災だけでなく、この10年で熊本地震や風水害など非常に災害が多かったので、あらゆるメディアでも防災についてさまざまに取り上げられたと思います。防災意識が高まったことは確かです。日本に住んでいる限り、いつどこで被災者になってもおかしくありません。そう考えて日ごろから準備をしておくことが大切です。
多様性の視点で女性や子育ての視点からの防災が取り入れられるようになったことも10年間の変化だと思います。

絶対に持っていたほうがいいのが、モバイルバッテリー

――これからの災害に備えて、赤ちゃんのいる家庭でしておいたほうがいいことはありますか。

冨川 この10年で間違いなく、デジタル化が急速に進みました。防災の観点では、スマホは最大の情報ツールとなっています。ですから、モバイルバッテリーは防災バッグに必ず入れておきたいアイテムです。

被災時に家族間で連絡を取る際にも必要ですし、情報を得るためにもスマホは必需品です。それができないとママやパパは相当にストレスを感じると思います。
普段使っているデジタルツールを使用することは、心の支えになります。日常ではなくなってしまった状況で、いかに日常に近い時間を送れるかがストレス対策のキーポイントになってきます。

また、赤ちゃんや子どもも普段見ている動画が見られなくなったり、ゲームができなくなったりするととてもストレスを感じます。赤ちゃんや子どものストレスがママやパパのストレスにも直結するので、スマホの電源が切れたらストレスの悪循環です。
モバイルバッテリーは小さいものでもいいので持っておきましょう。1回分充電できれば、この充電が切れたらどうしようかと考える時間ができます。子どもに「あと1回やったら終わりだよ」と言い聞かせられる時間もできます。

もしものときに備えて“家族ルール”を話し合って

――東日本大震災の被災地の支援を行っていらっしゃいますが、2021年2月13日の地震で、何か変化はありましたか。

冨川 2月13日の東北地方の震度6の被災時の体験談を聞いて、耐震意識、防災意識がしっかり根づいていたことがよくわかりました。それは、被害が少なかったことでも理解できると思います。
具体的な体験談では、「食器棚にすべり止めシートを敷いていたから、食器が割れなかった」という声を聞きました。ちょっとしたことでも、やるとやらないとでは全然違ってきます。簡単なことでもやっておくだけで被害は少なくなります。

――東日本大震災の余震は今後も続くように言われていますが、気をつけたほうがいいことはありますか?

冨川 小さいお子さんがいる人は、災害時に一人にならないように備えておくことが大切です。夫が仕事中にママと赤ちゃんが被災することも考えられます。日ごろから何パターンかシミュレーションをして、単独行動にならないように、近所づき合いをしたり、ママ友と避難について相談をしておいたり、実家とももしものときの行動について相談をしておきましょう。頼れる人がいて「つながる」ことが大切です。孤立化しないことです。

災害があってから相談をするのでは遅いので、今のうちから家族のルールをしっかり話すことが大切だと思います。

東日本大震災のときの体験談なのですが、赤ちゃんのいるママが自宅で被災し、パパと連絡も取れないまま3日間、赤ちゃんと2人きりで過ごしたという方がいました。パパの安否もわからず、家からも動けず、不安に押しつぶされ、メンタルがズタボロだったそうです。3日後にパパが帰ってきたときに、感動の再会ではなく、ママはパパに罵声(ばせい)を浴びせてしまったそう。

その後、夫婦の溝は埋まらず、離婚することに。ママは「事前に災害が起こったらどうするかを夫婦で話し合っておけばこんなことにならなかった」と言っていました。孤独による不安から起こってしまった不幸なことでした。経験したことのない不安の中では、冷静さに判断することができなくなります。家族の災害時ルールを話し合っておくだけでまったく違っていたと思います。

――全国の子育てファミリーに向けてメッセージをお願いします。

冨川 みなさんには、この機会に家族で話し合っていただきたいです。「パパがいないときに大きな地震があったら、実家に避難するね」「ママ友の〇〇ちゃんちにいるね」だけでもいいと思います。災害時には、孤立化するとますます不安になります。ママ友でも親せきでも災害があったときに一緒にいようねと協定を事前に結んでおくことが、赤ちゃん連れのママとパパにとって有効な手段だと思います。やるとやらないとでは大違い! できることから始めてみましょう。

お話・監修/冨川万美さん 取材・文/乾瞳、ひよこクラブ編集部

必ずしも家族が一緒のときに発生するわけではない災害…。家族の安否がわからないまま、赤ちゃんと2人きりだったらだったら、だれでも不安になりますよね。もしものときに備えて、こんなときどうするかを家族や親戚、ママ友と話してみましょう。パパになかなか会えない状況でも、だれ一緒にいるだけで、不安は少なくなります。

冨川 万美(とみかわ まみ)さん

Profile
NPO法人 MAMA-PLUG事業代表。
東日本大震災で被災したママたちの支援活動を通して、防災に関する事業を開始。最新著書に『全災害対応! 子連れ防災BOOK』(祥伝社)があります。

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