赤ちゃんのこと、仕事のこと、夫との関係…どうすれば?妊娠初期の不安やイライラ【専門家】
妊娠がわかり、うれしさの半面、おなかの赤ちゃんの成長、夫との関係、仕事との両立など、さまざまな不安や悩みが出てくることもあります。
心療内科医としても多くの女性と向き合っている産婦人科医の小野陽子先生に、イライラや不安を乗り越えるにはどう考えるとよいか、うかがいました。
妊娠中は女性ホルモンの影響もあり、心も不安定になりやすい
たまひよインターネット調査(※)では、87%の先輩ママが「妊娠初期にイライラや不安を感じた」と回答しています。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
「妊娠すると、女性ホルモンの分泌が増し、心も体も大きく変化します。妊娠初期は吐き気や疲労感、倦怠感などが出て、自分で体のコントロールができなくなる方もいるでしょう。また、精神的、肉体的なストレスから、心も不安定になりやすい時期でもあります。
このコロナ禍で妊婦さんの不安感が増しているというデータもあります。感染の心配をはじめ、健診や両親学級が十分に受けられない、会いたい友人や家族と気軽に会えないなどの状況がストレスとなり、より不安を感じやすい状態になっていると考えられます」(小野先生)
※2021年9月実施インターネット調査によるものです(回答数=78)
妊娠初期に感じる不安の44%が「おなかの赤ちゃんのこと」
「妊娠初期にイライラや不安を感じた」と回答した先輩ママに、どんなことにイライラや不安を感じたかを調査したところ、44%の人が「おなかの赤ちゃんのこと」と回答(※)。
おなかの赤ちゃんの成長に対する、具体的な不安について、小野先生に聞きました。
※2021年9月実施インターネット調査によるものです(回答数=78)
Q 流産が心配です。毎日考えてしまい、心が苦しい…(妊娠8週)
A 赤ちゃんの生命力を信じ、不安は医師や家族に伝えてみて
流産しないか心配になる妊婦さんの気持ちはとてもよくわかります。一方で、一般的な流産率は15%前後ともいわれており、実は珍しいことではありません。その多くは赤ちゃん側に問題があったことが原因で、ママがしたこと、しなかったことが要因で起こるものでもありません。不安な気持ちがよぎることもあると思いますが、まずは、今の妊娠が継続するように無理はせず、赤ちゃんの生命力を信じましょう。不安がぬぐえず、毎日がつらい場合は、医師や助産師、家族に気持ちを伝えてみましょう。
Q 不妊治療でやっと授かったけれど、無事、出産できるのか不安…(妊娠6週)
A 妊娠経過に不妊治療は影響しません
不妊治療を経た場合、妊娠が早く判明するため、不安を感じる人は多いでしょう。妊娠経過については、治療自体が直接影響することはないので、心配いりません。ですが、ママの年齢が高くなるほど、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群といったリスクが出てきます。それは妊娠方法にかかわらず同じです。そのリスクを減らすためにできることを知り、無理せず過ごしましょう。そして、不安な気持ちは、医師や家族に伝えましょう。
仕事のキャリアへの不安、夫との温度差にはどう対処する?
妊娠初期の妊婦さんが抱える不安はおなかの赤ちゃんのことだけではありません。仕事に対してや夫との関係性などに不安を感じる人も。
Q 感情のコントロールができず、ささいなことで夫にイライラ…(妊娠12週)
A 心の不安定はしかたない時期。夫にも理解してもらって
妊娠による女性ホルモンの変化で、精神的に不安定になったり、感情的になったりすることがあります。イライラしてしまうのは、生物的には自然な反応で、当然のことともいえるのです。ですが、ほ
とんどの女性、男性が、妊娠中の女性の心や体に何が起こるのか習っていません。イライラすることだけでなく、妊娠中に起こり得る変化を2人で一緒に学ぶ機会をもちましょう。また、仕事や家族関係、引っ越しなど環境の変化は思いがけずストレスとなることも。環境変化は可能な限り、避けることも必要です。
Q 仕事ひと筋だった私。妊娠を機に仕事を離れることでまわりから置いていかれるような気が…(妊娠12週)
A 葛藤があるのは当然。少しずつ落ち着くはず
これまで一生懸命、働いてきたのですから仕事の第一線からはずれるのでは? という葛藤や不安があるのは当然です。妊娠初期は体も心も環境も、変化の最中。中期になれば、バランスがとれ始め、不安も落ち着くと思います。今は、これから起こる体の変化や注意点、会社の制度を知ることが大切。また、産前産後の仕事の希望を上司とよく相談しておきましょう。母子手帳の中にある“母性健康管理指導事項連絡カード”の存在も知っておいて。
監修/小野陽子先生 取材・文/茂木奈穂子、たまごクラブ編集部
「少しでも気持ちを安定させるためには、妊娠に伴って心や体が変化すること、出産後はまた別の大変さがあることを、ママ本人と家族が知っておくことが大切です」と小野先生。
オンラインの両親学級なども増えているので、夫婦で参加して妊娠・出産・育児の正しい知識を得ることが大切です。そして先生は次のようにも話しくれました。
「夫婦のどちらかだけが頑張る、我慢するのではなく、どんどん周囲の手を借りて一緒に変化を乗り越えていこうね、というスタンスが大事だと思います」
ママは赤ちゃんをはぐくんでいる時点で十分に頑張っています。パパや家族はもちろん、専門家の力を味方にすることも、不安やイライラを軽くする手だてになるはずです。
参考/『初めてのたまごクラブ2022年冬号』「妊娠初期、『イライラ』『不安』におそわれたら…」
※掲載している情報は2021年12月現在のものです。