コロナ禍からポストコロナ時代へ。妊婦の5人に1人が経験する帝王切開をめぐる状況【専門家】
ママの体や赤ちゃんの状態によって、経腟(けいちつ)分娩ではリスクがある場合は、帝王切開での出産となります。また、帝王切開にも、リスクを回避するために前もって決めた上で行われる「予定帝王切開」と、経腟分娩のつもりでも、妊娠後期の異常やお産の経過により母子の安全を確保する必要がある場合に行われる「緊急帝王切開」があります。
助産師でもあり、中部大学 准教授で帝王切開後のママのケアについて研究している横手直美先生は「帝王切開についての情報を知らずに緊急帝王切開となった場合は、とくにママの体と心が不安定で、出産体験がトラウマになることもある」と言います。
自身も2人の女の子を帝王切開で出産している横手先生に、コロナ禍と今後における帝王切開の現状と問題点、そして帝王切開後のママにとって大事なことを聞きました。
【帝王切開の現状】約5人に1人が帝王切開で出産。感染症対策で帝王切開がさらに増加?
たまひよのインターネット調査(※)では、約5人に1人(21.8%)が帝王切開での出産を経験、または予定していることがわかりました。
「ここ数年のコロナ禍においては、感染症対策として、妊娠後期にPCR検査で陽性、または濃厚接触者と認定された妊婦の分娩は、一般の病院や診療所では受け入れられず、保健所が指定する病院での帝王切開などに出産方法が変更されたケースもあります。そのため、妊娠中の経過が順調な妊婦さんでも、感染症対策のために緊急帝王切開となる可能性が少しだけ高まったといえます」(横手先生)
今後、新型コロナウイルスの感染状況がある程度落ち着いてくるまで、出産時における感染症対策がどのようになっていくのか、気になるところです。
(※)記事内のデータは、妊娠中~1才11カ月の赤ちゃんを持つママ412人のインターネット調査(2021年10月実施)の結果からまとめたものです
【ここが問題!】コロナ禍により帝王切開についての情報がさらに不足!
多くの出産は経腟分娩が前提のため、以前から帝王切開の情報は不足気味だったといいます。
「コロナ禍では、さらに母親学級の中止や妊婦健診の時間短縮などにより、帝王切開の情報に触れる機会はますますなくなってしまいました。
帝王切開に関する情報が圧倒的に不足するなか、緊急帝王切開となったママは、出産後も体と心のモヤモヤに悩まされることになっているようです」(横手先生)
【ここが大事!】何よりも育て方が重要!目の前の赤ちゃんとの時間を大切に
看護師と助産師の資格を持ち、数多くの出産の現場に立ち会ってきた横手先生でも、自身が緊急帝王切開となったときには落ち込んだと言います。
「私自身も1人目の緊急帝王切開後は、とても落ち込みました。
でも、子育て中の今、痛感しているのは、産み方以上に育て方が重要だということです。
帝王切開も経腟分娩も、命をかけた出産であることは同じ。むしろ帝王切開のママは、「おなかを切ってまで」大切な赤ちゃんを産んだのです。そんな自分を認め、目の前の赤ちゃんとの時間を大切にしてほしいと思います」(横手先生)
【横手先生より】出産を控えているすべてのママ・パパへ
妊娠経過が順調であっても、出産は始まってみないとどうなるかはわかりません。ましてや、現在のようなコロナ禍の中においては、いつ妊婦自身や同居家族が感染者や濃厚接触者になるかもわかりません。これらのことから、緊急帝王切開となる可能性はだれにでも、常にあると言えるでしょう。
しかし、前もって帝王切開に対する知識や情報を得ていれば、漠然と抱いている恐怖心がかなり緩和され、心構えができるはずです。
私が運営している以下のサイトでは、これから出産を控えているすべてのママ・パパに向けて、帝王切開での出産に関する情報を掲載しています。もしも帝王切開が必要になったら、ママと赤ちゃんにどのようなことが起こるのか、ママやパパ、ご家族がすべきこと、できることをイメージしておくことで、安全で満足のいく出産になるでしょう。参考にしてみてください。
監修/横手直美先生 取材・文/ひよこクラブ編集部
コロナ禍であるかどうかにかかわらず、帝王切開での出産となる可能性はだれにでもあるのだということがわかりました。しかし、何よりも大切なことはママと赤ちゃんにとって最も安全で、納得のいく出産方法を選ぶことです。無事に赤ちゃんが生まれたのであれば、その方法を選ぶことができた自分自身を認め、今目の前にいる赤ちゃんとのかけがえのない時間を大切に過ごしていきましょう。
『ひよこクラブ』2022年4月号には帝王切開で出産をしたママの気がかりに答えた「帝王切開 体と心のモヤモヤ“これって私だけ?”」特集があります。
参考/『ひよこクラブ』2022年4月号「帝王切開 体と心のモヤモヤ“これって私だけ?”」より。
※掲載している情報は2022年3月現在のものです。