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【俳優・斎藤工×漫画家・坂井恵理」育児する親たちが、もっと生きやすい社会になれたら

更新

『シジュウカラ』なども話題の漫画家・坂井恵理先生のコミックス『ヒヤマケンタロウの妊娠』が、斎藤工さんの主演によりNetflixでドラマ化されました。坂井先生と、自身が予想外の妊娠をする主人公を演じた斎藤さんに、ひよこクラブがインタビュー。たまひよが掲げる「チーム出産育児」へ社会が変化していくために必要なことなどを聞きました。

社会やまわりがサポートして、みんなで守れる社会に

――10年前に発売されたコミックがドラマになりました。坂井先生が、ドラマを見られて、映像として印象に残ったことを教えてください。

坂井先生(以下敬称略) このドラマには、男性が赤ちゃんをかわいがっているシーンがたくさん出てくるんです。男性が育児をする姿が自然な感じで伝わってくる。それがとてもあたたかくていいシーンで、おそらく視聴者の方も、同じように感じるんじゃないかなと。そうすると、男性が育児に参加するハードルも、もっと下がるかもしれないなと思いましたね。

一気に世の中が変わるなんてことはあり得ないとわかっていますが、ちょっとずつでも一人一人の意識が変わって、その結果、今は“弱い”とされてしまっている存在が生きやすくなる社会になったらいいなぁと。それから続編コミックスで育児編も書きましたが、子育て世代に対する風当たりが強いなか、SNSなどで「育てる覚悟がないなら産むな」みたいなことを言う人がいます。でも、私はむしろ、そこまでの覚悟がなくても産みたい人が安心して産める社会になるのが理想だと思っています。育てる経済力がない方や、精神的に未熟な親がいるのは事実です。それを社会やまわりがサポートして、赤ちゃんや子どもたちを守れるような社会になるのが理想だと思いますし、そうしたことを作品に込めました。

――たまひよは「チーム出産育児」を掲げています。坂井先生は「チーム出産育児」について、どう思われますか?

坂井 具体的には、産後ケア施設なんかがもっと気軽に利用できるようになるといいなと思います。私が出産した10年前は、いろいろ調べても情報が出てきませんでした。今はだいぶ増えてきていますけど、そういうときに、男性も同じようにそこに宿泊して、親としての覚悟も学べたらいいなと思います。お父さんだけが家にいて一人暮らしを満喫していて、お母さんと赤ちゃんが産後ケア施設にいるっていうのは、どうしても何か違和感があるんですよね。それから、無痛分娩なんかも、もっとしやすくなったらいいなと思います。

娯楽が育児ともっと組み合わさっていくことを願う

――斎藤さんは、今回の現場でも託児所を作るなど、実際にいろいろな活動をされていますね。

斎藤さん 僕は、今回のドラマの現場だけでなく、いろんな作品で現場に託児所を設けることを試みていますが、日本では、仕事現場に子どもを連れていくことへの遠慮があると感じます。海外での撮影に参加すると、日本よりずっとスタッフやキャストの自主性やプライベートが守られているんです。それは、海外に出なければ僕もわからなかったことですね。

また、今回の役を通じて、今の日本で結婚・出産・育児を経験する方が、仕事にどう折り合いをつけているのか、深く考えるようになりました。この役を演じていなかったら、そこまで踏み込んで考えられなかったんじゃないかと思いますし、これから、もっと考えていく必要があると感じています。

私事での話になりますが、僕は「cinéma bird」という移動映画館の活動もしています。始めたきっかけは、映画館で映画を観たことがない子がとても多い今、子どもたちに「映画館で映画を観る」という体験をしてもらいたかったことがひとつ。同時に、育児をする両親にそうした時間を提供したかったからです。僕は普段から平日のシネコンで映画を観たりしますが、最新作でもガラガラだったりするんです。こうした時間に、ふだん育児に追われている方たちが、月に一度でも二度でもいいから、自分の観たい映画を観るということが、どうしたら成立するだろうとずっと考えてきました。娯楽が育児に近い存在になるためには、託児所が、たとえば映画館に完備されていたら、その時間は、親にとっても子どもにとっても、普段とは違う社会に触れる瞬間、精神的に解放され
る瞬間になるんじゃないかな、と思うんです。

子育て世代が暮らしやすい社会への働きかけを実際に行っているおふたりの話を聞ききました。一気に世の中が変わることは難しいのかもしれませんが、『ヒヤマケンタロウの妊娠』との出会いは、これまでとは違った視点を持てるチャンスかもしれません。

撮影/なべ(斎藤さん)、スタイリング/三田真一[KiKi inc.](斎藤さん)、ヘアメイク/赤塚修二[メーキャップルーム](斎藤さん)、衣装協力/The ROW、取材・文/望月ふみ、ひよこクラブ編集部

坂井恵理先生(さかいえり)

PROFILE
漫画家。埼玉県出身。『ヒヤマケンタロウの妊娠』のほか、続編となる『ヒヤマケンタロウの妊娠 育児編』が2020年に発売された。『鏡の前で会いましょう』『ひだまり保育園 おとな組』、エッセイ漫画『妊娠17ヵ月 40代で母になる!』のほか、ドラマ化されて話題を集めた『シジュウカラ』などを手掛ける。

斎藤工さん(さいとうたくみ)

PROFILE
1981年生まれ、東京都出身。モデル活動を経て2001年に俳優デビュー。俳優以外に映画監督としても活躍しており、監督長編最新作、映画『スイート・マイホーム』(主演・窪田正孝)が2023年公開予定。
主な出演作に、ドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』『漂着者』、映画『麻雀漂流記2020』など。主演作『シン・ウルトラマン』の公開が控える。また、移動映画館プロジェクト「cinéma bird」や、撮影現場に託児所を設けるなど、多岐にわたる活動も知られる。

Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」

©坂井恵理・講談社/©テレビ東京 4月21日(木)Netflixにて全世界独占配信

広告業界でバリバリ働く独身男性の桧山健太郎(斎藤工)が、予期せぬ妊娠をしたことで、自身の身体の変化への戸惑いだけでなく、会社での立ち位置や、パートナーの亜季(上野樹里)や周囲との関係を含めて、自分を見つめ直していく姿を描くNetflixがテレビ東京と共に企画・製作したNetflixシリーズ。坂井恵理による2013年発売の同名コミックスが原作。

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