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3度の流産…悲しみを乗り越えられない自分を責めないで。母として驚くほどの喪失感を経験し、医師としても想像以上の悲しみだと知った

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診療所で泣いている患者の前で文書を保持している医師
※写真はイメージです
megaflopp/gettyimages

カリフォルニア州サンノゼ在住の放射線科医 フォックス聡子先生は、現在2才の女の子のママです。1人目を出産のあと、第2子を稽留(けいりゅう)流産(※1)、第3子を子宮外妊娠、第4子を再び稽留流産で失った経験を持ちます。自分のつらい経験が、同じように苦しむだれかの役に立てば、と自身のホームページやSNSで発信を続けています。聡子先生と、プレグナンシーロス(流産や子宮外妊娠など、妊娠期における喪失)の支援に詳しい 岡山大学医学部保健学科 准教授の片岡久美恵先生に、グリーフケアの大切さについて話を聞きました。

プレグナンシーロス、グリーフケアとは?

大切なものを失ったときの反応をグリーフといいます。グリーフは悲しみだけではなく、不安や自責の感情や、食欲がない、眠れないなど、表れ方は人によってさまざまです。喪失を抱える人に対して、カウンセリングやピアサポート(同じ問題を抱える人同士が、体験をシェアし支え合う活動)などを行い、回復へ向かうサポートをすることをグリーフケアといいます。
とくに早期流産によるグリーフは、話しにくさや理解されにくい面などから、ケアが必要であるにもかかわらずサポートを受けられずに苦しむ人がいるのではないかと懸念されています。

聡子先生は2度の稽留流産と子宮外妊娠を経験した際、知りたい情報を得られなかったことから、ブログやホームページで自身の体験の発信を始めました。また、医療従事者のファシリテーターによる、少人数のオンラインピアサポートグループである“プレグナンシーロスピアサポート+”を行っています。“プレグナンシーロス(pregnancy loss)”は、妊娠初期からの流産や子宮外妊娠など、妊娠期における喪失全般を指す言葉(※2)です。

片岡先生は、岡山大学病院の不妊専門相談センターで不育症(流産や死産を繰り返す)のサポートを行いながら、流産や死産などの経験を持つ人同士のピアサポートグループ「ママとたまごの会」の交流会を開催しています。この記事では、聡子先生と片岡先生に、プレグナンシーロスのグリーフケアについて話を聞きました。

語られてこなかった妊娠初期流産の悲しみ

聡子先生(以下敬称略) 私はアメリカ人の夫との間に37才で第1子を出産しました。年齢のことや、自分が年子育ちだったこともあって早く2人目が欲しいと思っていたんですが、2020年10月に第2子を妊娠したものの稽留流産となってしまいました。薬の処方せんに「2週間たっても気分が落ち込んだままだったら自身のカウンセラーに連絡してください」と書いてあるのを見て、妊娠期のグリーフケアのことを知りました。そして約2カ月後の12月に第3子を妊娠しましたが、妊娠7週で腹痛を感じ受診すると子宮外妊娠と判明。すぐに右卵管を摘出する手術を行いました。

2回の経験から、専門家の助けが必要だと認識したため、カウンセリングに行くことに。
同時に、自分のような経験をした人がどんなサポートを受けたか、経験後にどう過ごしているかの情報を本やネットで探してみたけれど、なかなか見つからなかったんです。そこで、2人目妊娠の少し前から始めていたブログで当時の素直な気持ちをありのままに書いていました。すると流産を経験した人、友人が流産した人、流産で夫と溝ができてしまった人、心無いことを言われて傷ついた人…たくさんの反響やメッセージをいただきました。自分だけじゃないんだ、とわかって救われた部分もありましたが、一方で、苦しんでいる人がこんなにいるのに、みんな口に出せないんだな、とわかったんです。

片岡先生(以下敬称略) 初期流産は、赤ちゃんの存在がママにしかわからないところが、なかなか悲しみを話しにくい、理解されにくい点でもあります。妊娠初期には、ママは赤ちゃんの命を感じているけれど、まだまだ小さいですし、もちろんこの世の中には生まれていない存在。
あいまいな存在を喪失するという部分で、悲しみ自体が自分にも外にも認められないままにつらい状態が続きます。とくに日本では赤ちゃんを失くしたことを語ることが少ない、言ってはいけないような文化だったという背景もあります。

聡子 自分は医師として初期流産は10〜15%とよくあること、35才以上という年齢が流産の確率が上がるという事実は知っていたのに、それでも心はそれを受け入れられなかった。自分でも驚くほどの悲しみでした。流産はこんなにもつらくて、実はケアが必要だということを私も自分の経験で初めて知りました。

片岡 妊娠期の流産・死産・新生児死亡はすべてつらい経験で、乗り越えられないほどの悲しみです。2021年に厚生労働省より「不育症管理に関する提言 2021」という、不育症の方への対応について検査や治療の方針が示されましたが、その中に流死産をした人への医療者の対応として、“テンダーラビングケア”(不安やストレスを軽減するための心理的サポート)を推奨すると明言されています。

岡山大学病院の不育症外来では、不育症の治療とともに、テンダーラビングケアの実践に努めています。また不妊専門相談センター「不妊・不育と心の相談室」で相談を受け付けています。プレグナンシーロスのつらい気持ちに焦点を当てて適切にグリーフケアをすることで、その経験を胸にしながら歩んでいくサポートができたらいいなと思っています。

悲しい気持ちは置き去りにならない グリーフケアの大切さ

聡子 流産を経験した人に、医療機関でそのようなピアサポートやグリーフケアが受けられる場所を紹介してもらえるといいのに、と思います。アメリカでは死産や新生児死亡の場合は、ママの心のケアやサポートが手厚いようなのですが、私のような初期流産は、処置が終わると翌週の診察があるだけでメンタルケアについては何も言われないんです。

私は2021年3月に第4子を妊娠しましたが、妊娠7週で再びの稽留流産となってしまいました。3回目には今度こそ大丈夫だろう、と希望を持っていたのに、失ってしまった。希望を失い涙が止まらず、日常生活も困難なほどに悲しい気持ちが続いてうつ状態になりました。そこで仕事を休み、思いきり泣ける環境に自分をおくことにしたんです。少し落ち着いてきたころ、朝の散歩を始めたり、家の気がよくなるように掃除をしたりして、自分の心がよくなることに集中しました。

片岡 聡子先生が行っていたのは、まさに自分自身で行うグリーフワークですね。グリーフケアやグリーフワークによって、悲嘆の過程を経て回復に向かうことはどなたにも大切です。ただ、つらい気持ちは置き去りになりません。死産や流産をした月命日が来るとつらくなる人もいて、浮き沈みがあるものです。悲しい経験を乗り越えて前を向く、というよりは、悲しい経験を持ったまま何とか適応して生きていくことができるといいですよね。

聡子先生のように発信したり、意見をもらったりして悲しみをいやす方法もあれば、悲嘆を避けたい場合には仕事で紛らわせるということもあると思います。ずっと悲しみを秘めたままということもありますが、悲しみにふたをしてしまうと心の大きな負担になることもあります。
私が臨床にいたころ、ご家族がいない患者さんが亡くなる直前に「やっとあの子に会えるんよ」と話したことがありました。カルテ上ではお子さんはおられなかったので、よく聞くと流産したことがある、とわかったんです。彼女にとって、一生涯胸に秘めた悲しみだったんです。

つらい経験は乗り越えなくてもいい

聡子 私がオンラインでの発信やお話会をしていると「つらい経験を乗り越えてすごいね」と言われることがありますが、ちょっと違和感があります。乗り越えるわけじゃないんですよね。

片岡 そうだと思います。グリーフには段階があって表れ方は人それぞれです。いずれ受け入れられるようになることを“適応”というんですが、プレグナンシーロスは何年たってもつらいし、流産してしまった月になるとまた悲しい気持ちになります。乗り越えなくていい経験なんじゃないかな。乗り越えようって思うと、乗り越えられないときに自分を責めてしまいますから。

聡子 まさにそうです。ずっと悲しくて泣いている私なんかダメじゃないかとか、いっさい思わなくていいと思います。

片岡 そうなんです。まず自分を大事にすることを思い出してほしいですね。悲しんでいるありのままの自分でいいんだと、わかってもらいたい。悲しみの経験とともに生きていく、というのがめざすところだと思います。そして、流産・死産をした人を支えるサポーターがもっと増えればと思っています。

令和3年度に厚生労働省委託事業で不妊症・不育症のピア・サポーター等の養成研修が行われましたので、これから相談しやすくなることを期待しています。また、各県に不育症相談窓口も設置されています。だれにも話せない、と悩んでいる方は、ぜひ問い合わせてみてほしいです。

■不育症相談窓口

お話・監修/フォックス聡子先生

お話・監修/片岡久美恵先生

取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

流産によるおなかの赤ちゃんとの別れの悲しみや、行き場のない怒り、自分を責める気持ちを持つことは、正常な反応で、我慢せずにその気持ちを表すことが大切なのだそうです。周囲の人はその気持ちを聞いたり、黙ってそばにいることで、支えになることができるかもしれません。

※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

(※1)胎児が子宮内死亡後、出血や腹痛などの自覚症状がほとんどないまま子宮内に停留している状態。妊婦健診などで胎児の動きや心拍を確認できず、初めてわかることが多い。

(※2)日本では“ペリネイタルロス(=周産期死亡。妊娠22週以降から生後8日までの流産・死産・早期新生児死亡のこと)”が使われることが多いですが、当記事では妊娠初期や子宮外妊娠も含めた赤ちゃんの喪失を表す“プレグナンシーロス”を使用しています。

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