性交渉で感染する「梅毒」、ここ数年で爆発的に増加。症状がなく気づきにくいが放置すれば赤ちゃんへの影響も【産婦人科医】
コロナ禍でマスク着用やアルコール消毒は日常化しつつあります。新型コロナの感染に気をつけている妊婦さんも多いでしょう。実は、妊娠中はほかにも注意したい感染症があります。赤ちゃんへの影響が心配な感染症のなかから、「梅毒」について、帝京大学医学部付属溝口病院産婦人科の土屋裕子先生に教えてもらいました。
梅毒は治療法が確立されている感染症
ママから赤ちゃんに感染することを母子感染といいますが、このうち、妊娠中にママが感染して、おなかの中の赤ちゃんが感染するケースもあります。それによって流産・早産や生まれてくる赤ちゃんに重い障がいを引き起こすものがあり、それらの感染症の総称を、頭文字をとって「TORCH(トーチ)症候群」と呼びます。
T: Toxoplasma gondiiトキソプラズマ
O: Others:梅毒や水痘、エイズ、パルボウイルスB19(りんご病)など
R: Rubella virus風疹
C: Cytomegalovirus サイトメガロウイルス
H: Herpes simplex virus 単純ヘルペスウイルス
妊婦さん自身への影響が少なく、気づかないまま感染し、おなかの赤ちゃんに感染していることもあるため、妊婦さん自身がTORCH症候群を知ることや妊婦健診をきちんと受けること、基本的な感染予防と対策が大切になります。
梅毒は、症状がほとんどないので気づきにくい感染症ですが、この数年国内で爆発的に増加している感染症です。妊娠初期に治療すれば影響は少なく、妊娠中期以降でも抗菌薬で治療をして、影響を軽減することができ、万が一の場合の対処法があります。
性交渉で感染するため、夫も知識を持って
梅毒は主に性交渉で感染する感染症で、感染すると3週間後くらいに、感染した粘膜や皮膚(主に陰部、口唇、肛門等)に小さなしこりができます。痛みがないことが多く、気づかないことも。治療をしなくても自然と軽快しますが、感染した場合には病原体が体内に残っていて、治療をしなければ治ったことにはなりません。無症状で感染しても2年くらいは赤ちゃんに感染する可能性があります。
妊娠初期にはとくに症状がなくても、無症状で感染していないか調べるために全員血液検査を行います。妊娠初期に感染していないといっても、妊娠中の性交渉によって、妊娠後半に感染して知らぬ間に赤ちゃんにうつる可能性もあります。できれば、夫も抗体検査を受け、妊娠中のセックスは必ずコンドームを着用しましょう。
赤ちゃんの目や耳、肝臓などに影響を及ぼす可能性が
妊娠中にママが感染し、おなかの赤ちゃんまで感染すると、赤ちゃんの目や耳、肝臓などに障がいが出る先天梅毒になる可能性があります。妊娠初期に治療すれば影響は少ないですが、妊娠中期以降に感染すると、胎児形態異常や早産、死産につながることも。
胎盤を通して胎児に感染するので、胎盤が完成する前に抗菌薬を服用して治せば、胎児への影響はほぼ心配ありません。また、中期以降に感染した場合も、赤ちゃんへの影響を軽減するために、抗菌薬で治療します。
感染しないための予防対策
1、妊娠初期に夫婦で抗体検査を受ける
2、妊娠中にセックスする場合は、必ずコンドームをつける
文/・茂木奈穂子、たまごクラブ編集部
妊婦さんとおなかの赤ちゃんを感染症から守るためには、夫や家族にも協力してもらうこと、知識を持ってもらうことが大切です。伝えるのが難しい場合は健診などで、主治医の先生から説明してもらってもいいかもしれませんね。