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妻のキャリアのためには、夫の家事・育児参加が不可欠。共働き夫婦が妊娠中に話し合っておきたいこと【専門家】

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妊娠中の女性と夫
●画像はイメージです
kuppa_rock/gettyimages

共働きを選択する家庭が増えている一方、「基本はワンオペで、子どもの病気で仕事を調整したり、家庭のことを負担したりするのは私ばかり・・・」と、不満をためるママが多いと聞きます。そういった状況を回避するべく何ができるか、仕事と育児の両立支援に詳しいキャリアコンサルタントの小倉環さんにお話を聞きました。

安定期に入ったら、今後のお互いのキャリアについて話し合う機会を持とう

ーー「子どものことで仕事を調整するのは女性側が多く、家庭の負担を多く担うのも女性側。男性側は産前となんら変わりない働き方をしている」ことにママが不満を抱え、パパとぶつかるケースが多くあると聞きます。そういった状況を避けるため、妊娠中からできることはありますか?

小倉さん(以下敬称略) まずは安定期に入って体調が落ち着いたら、子どもを持ちながら自分がどんなふうに働いていきたいか、お互いのキャリアに対する思いや考えを夫婦間で共有しましょう。

妻が妊娠・出産後もキャリアを継続するには、夫の家事・育児参加が不可欠です。厚生労働省の調査(※1)によると、夫の平日の家事・育児時間別に見た妻の同一就業継続割合は、夫が平日2時間以上家事・育児をしているグループに比べ、家事・育児時間なしのグループでは20%程度減り、離職を選ぶ妻が多いことがわかっています。

これを受けて、夫婦で家事・育児を協力し合いながら、ママが順調にキャリアを積んだ場合と、離職を選んでキャリアロスになった場合の2パターンの収入差を試算してみてはいかがでしょうか? 金額が目に見えると、パパの家事・育児時間の大事さや、その時間を捻出するために、短時間で仕事の成果を出すスタイルへのシフトが重要だと理解しやすいと思います。

ーーお金の話はシビアですが、大事なことですね。

小倉 そうですね。いろいろな家庭の事情があるかとは思いますが、夫だけの稼ぎに頼るのはリスクが大きい時代です。給与も上がりづらいですし、日本は子どもの教育費も高額です。また、人生100年時代と言われ、世の中の変化・スピードがめまぐるしいので、夫の会社が、この先ずっと安定して存続し続けられるか「絶対大丈夫」とは言えないですよね。しかし、そういったリスクに陥ったときも、夫婦2人で働き、妻もキャリアを継続していれば、経済的にも心理的にも負担が軽く済みます。

夫婦間でパパの育休に関する話が出たら、ママの産後の状況がいかに過酷かを伝えよう

ーー妊娠中に夫婦で話したいキャリアに関連することの一つに“パパの育休”があると思います。ただ、ママがパパの育休取得を希望しても、本人は乗り気じゃないケースがあるそうです。

小倉 夫側も取得したくないわけじゃなく、会社が人手不足で上司やメンバーに負担をかけてしまうので、気が引けるのかもしれませんね。女性の産褥(さんじょく)期の大変さを、知らない男性が多数いることも理由の一つかと思います。

まずは妻側から、産後の体は「全治1〜2カ月くらいの重症」と言われることや、女性ホルモンの急激な変動により産後うつになってしまう人が約10人に1人以上いることを伝えてみましょう。産後1年未満の女性が亡くなる理由の1位は自殺というデータがあります(※2)が、自殺は産後うつと深くかかわっており、産後うつの発生は産後3ヶ月以内に起こりやすい(※3)ことなどを知れば、夫が育休を取得して妻を支えることがいかに重要なことかわかるはずです。

パパの乳幼児期の子育てのかかわり方で、妻→夫への愛情に変化が

小倉 また、産後に妻を支えられると熟年期の夫婦関係に好影響を及ぼすという研究結果はたくさんあります。

たとえば、妻の夫に対する愛情の変化について調べた調査(※4)によると、妻からの愛情は結婚時がピークで、それ以降はガクッと減っていくんですね。ただ、その中でも夫への愛情がV字回復していくグループと低迷したままのグループが存在しており、その分かれ目は「乳幼児期に一緒に子育てをしたかどうか」です。

子どもが小さいときは、ほんの短い期間ですし、育児で得たスキルは仕事にも必ず還元されて活かされますので、ぜひ、パパも育休の取得を検討し、職場の上司に相談してもらいたいですね。

育休の取得で、会社と家庭以外の第3の場所とつながることができる

ーーパパが育休を取得することのメリットはほかにもありますか?

小倉 パパがというよりは性別関係なくありますよ。育休をキャリアロスと捉える人がいますが、全く「休み」ではないですからね。

むしろ職業人としてのビジネスキルの幅を広げたり、新しい知識を獲得できたりする機会だと思っていただきたいです。そもそも会社と家の往復しかない仕事中心の世界だったのが、育児を通じて社会と繋がることで新たな世界が見えてきます。そして、その世界では日本の社会的課題を目の当たりにするでしょう。そうした体験をすることで、ビジネスのアイデアの種に出会ったり、仕事の提案の幅が広がったりするのは事実です。また、育児を通じて身につくリスクマネジメント、タイムマネジメント、コミュニケーション力、忍耐力など、社会人として必ずや成長に繋がります。

また、育児にかかわると、これまで関係してこなかった地域社会とのかかわり合いが深くなります。仕事と家庭以外の第3の居場所を持てるようになるのです。

ーー第3の居場所を持つと、どのようないいことがあるのでしょうか?

小倉 ストレスの分散化が期待できます。仕事にまい進するのはとても素晴らしいことですが、仕事中心の場合、万が一、仕事で挫折をしたときに、取り返しがつかないことになる可能性も。

そんなときに、ちゃんと受け入れてくれる家庭があって、さらに子育てを通じて持った地域の人とのつながりの中に自分を活かせる場所もあるとなると、仕事がダメでも別の居場所があるとなり、万が一挫折したときも回復しやすいはずです。また、地域社会とのかかわりで、背景が異なる方々とコミュニケーションをすることにもなるので、ソーシャルスキルも育まれると思います。

男性の育休取得に関しては、経済的な不安を抱える家庭も多いですが、もらえる育児休業給付金(最初の6カ月は67%)と社会保険料の免除分、税金の非課税分も考えると、休業前の手取り月収の8割ほどになります。それでも長めに取得するケースで、収入が少なくなるのが気になる場合は会社の人事担当者に相談して、試算してもらうといいですよ。

※1 第6回21世紀成年者縦断調査【平成24年成年者】2018年
※2 国立成育医療研究センター発表
※3 妊産婦のメンタルヘルスの実態把握及び介入方法に関する研究(平成26年度 総括・分担研究報告書)
※4 東レ研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部 渥美由喜「夫婦の愛情曲線の変遷」

監修・お話/小倉環先生 取材・文/江原めぐみ、たまひよONLINE編集部

パパが育休を取得するにも、子育てと仕事を両立させるためにも、会社の協力が必要で、家庭の中だけでできることは微力かもしれません。しかし、夫婦間で話をできているかどうか、家事・育児時間の捻出をしようという努力が見えるかだけでも違うはず。もう妊娠中じゃないよ、という家庭でも遅くはありません。今からでもママとパパで、共働きを成立させるには何ができるか話し合う機会を持つといいでしょう。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

小倉 環さん(おぐらたまき)

PLOFILE
株式会社ハーモニーワークス代表取締役。大手企業を中心に女性活躍推進コンサルティング、仕事と育児の両立支援の事業を通じ、多くのワーキングパパ・ママのキャリア支援を行っている。2児のママ。

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