【医師監修】妊娠初期の腹痛はどうして起こる? 注意したい症状は?
妊娠初期の腹痛には、妊娠したことによって起こる生理的なものもあれば、トラブルのサインとして現れることもあります。どうして妊娠初期に腹痛が起こるのか、受診したほうがいい腹痛の症状はどんなものか、を解説します。
どうして妊娠初期に腹痛が起こることがあるの?
妊娠すると、さまざまな体の変化が起こり、いくつかの自覚症状として現れます。その症状の現れ方や程度には個人差がありますが、腹痛を感じる人も少なくありません。妊娠初期の妊婦さんが感じがちな腹痛としては、次のようなものが挙げられます。
●チクチクしたような痛み
●お腹の片側(または全体)が引っ張られるような痛み
●下腹部が重い
●ギュッと締めつけられるような痛み
多くの場合、妊娠したことによる体の変化に伴って感じる痛み、違和感です。早い人では、着床(ちゃくしょう)後に感じる場合もありますし、まったく感じない人もいます。我慢できない、というほどの腹痛でなければ、生理的なものと考えていいでしょう。
生理的な原因①ホルモンバランスの変化による便秘
妊娠するとホルモンのバランスが大きく変化します。中でも妊娠初期に多く分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンは、腸のぜんどう運動を弱める作用があるため、便秘を引き起こし、下腹部の違和感として感じる人がいるのです。また、妊娠初期はつわりで食事が思うようにとれなくなるため、脱水となり便秘になることが考えられます。それまで便秘に悩まされたことのない人が、便秘傾向になり、腹痛として感じている可能性があります。
生理的な原因②子宮が大きくなる
おなかの赤ちゃんが成長するのと同時に、子宮もどんどん大きくなっていきます。子宮が大きくふくらむとき、筋肉が引き伸ばされることによって痛みや違和感が起こる場合があります。また、周囲の臓器が圧迫されていることも原因のひとつです。
生理的な原因③子宮を支える靱帯(じんたい)が引っ張られる
子宮そのものが引き伸ばされて起こる痛みのほかに、子宮を支える靭帯が引っ張られて痛みが起こる場合もあります。片側だけチクチク痛む、内側から引っ張られるように感じると訴える妊婦さんは多いようです。
妊娠初期の腹痛で注意しておきたい症状は? 流産の可能性があるの?
妊娠初期の腹痛は問題ないことが多いのですが、トラブルのサインの場合もあるため、注意が必要です。とくに妊婦さんが気になるのは、流産の兆候ではないかということでしょう。下腹部に強い痛みがあったり、出血を伴う場合は流産の兆候である可能性もありますが、診察をしてみないとわからないものでもあります。また、同様の症状でも、おなかの赤ちゃんの心拍が確認できる切迫流産(せっぱくりゅうざん)の場合もあります。いずれにせよ、妊娠がわかってから、次のような症状があったらすぐに産婦人科を受診しましょう。
A痛みが継続していて、我慢ができない
痛みの感じ方には個人差がありますが、1時間に何回も痛みが訪れ、しかもそれが継続している場合や、眠れないほど痛い、痛み止めを使いたいほど痛いという場合は、病院に連絡し受診しましょう。
B出血を伴っている
腹痛だけでなく出血もある場合は、切迫流産や受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまう異所性妊娠などの可能性があります。茶色のおりもの程度でも出血がある場合には医師に相談し、通常の生理と同じくらいの出血量がある場合には、すぐに受診をしましょう。
異所性妊娠や婦人科のトラブルのサインのことも
下腹部の激しい痛みや出血量が多い場合に考えられるトラブルがいくつかあります。まずひとつが異所性妊娠。異所性妊娠は正常な部位以外に着床した妊娠のことをいいますが、通常の妊娠同様に妊娠反応が出るため、自分自身ではどちらかを判別することはできません。最終月経から6週間後までに産婦人科を受診しておくことが大切ですが、妊娠に気づかず、腹痛の症状が出てわかる場合もあるため、激しい腹痛や出血が止まらない場合は早急に受診しましょう。
次に子宮筋腫や卵巣嚢腫など婦人科の病気と妊娠が重なり、腹痛を引き起こす場合があります。妊娠前から発見されていたケースと妊娠をきっかけに発見されるケースとがありますが、通常はそれ自体が赤ちゃんの発育に影響することはありません。ただし、出産に影響する可能性もあるため、医師が注意深く観察します。
妊娠初期の腹痛はどう対処すればいい?
痛み止めなどを飲む前に確認する
妊娠の可能性があったり、妊娠が判明している場合、自己判断で市販薬を飲むのは控えましょう。とくに妊娠4~12週はおなかの赤ちゃんの重要な臓器が作られるため、薬の影響が心配な時期でもあります。赤ちゃんに悪影響を及ぼす成分が含まれた薬の種類はごくわずかで、ほとんどのケースは問題ありませんが、余計な心配をしないためにも細心の注意を払いましょう。
無理をせず、安静にする
腹痛を感じたら、いすに座ったり、横になるなどして、無理をせず安静にしましょう。おなかに力が入るような動きや姿勢、重いものを持つ、長時間立つなどの行為は控えて。仕事などでどうしても動かなくてはならない場合は、作業量を減らし、ゆっくりとしたペースで、負担をかけない工夫をしましょう。
体を冷やさないようにする
血行が悪くなることで、腹痛が引き起こされることもあります。汗をかいたり、のぼせるほど体を温める必要はありませんが、寒さや冷えを感じるときは、1枚多く肌着を着たり、ストールをはおるなどの工夫を。
妊娠初期の腹痛の気になることQ&A
Q 妊娠初期の腹痛と生理前の腹痛って違いってわかる?
A 妊娠の可能性があるけれど、まだはっきりわからないというとき、妊娠初期の腹痛なのか、生理前の痛みなのか気になる人もいるでしょう。どちらも痛み方は似ているため、違いを区別することは難しいかもしれません。熱っぽい、眠けが強くなる、気分が悪くなる、においに敏感になる、胸が張るなど、妊娠すると起こりがちな症状があるかも合わせてみるといいでしょう。ただし、症状の現れ方は個人差があります。
Q 腹痛があったら、夜間でも受診したほうがいいの?
A 安静にして痛みが落ち着けば、すぐに受診する必要はありません。ただし、激しい痛みが続いたり、生理の2日目のような出血量が伴う場合には夜間であっても受診しましょう。
Q 腹痛で受診したら切迫流産と診断されたけど、どういう状態?
A 切迫流産は出血や腹痛、おなかの張りといった流産と同じ症状があるものの、おなかの赤ちゃんの心拍が確認できる状態のこと。心拍が確認でき、子宮頸管(しきゅうけいかん)が閉じているならば、妊娠が継続する可能性が高いので、心配し過ぎず、医師の指示を守りましょう。
腹痛は体調がわかるひとつの症状です。妊娠をしたからといって、慎重になり過ぎる必要はありませんが、妊娠前とまったく同じ生活をするのではなく、自分の体に気を使ったり、少し体を休めて、ゆっくりしたペースにしては?と教えてくれているのかもしれません。
(文・たまごクラブ編集部)
初回公開日 2018/03/09
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