「家族の付き添い出産」が増加、夫・実母・上の子など。満足度が高く、安心感も。注意点は?
最近は出産に夫が付き添うケースが増えています。産院によっては夫以外の家族の付き添いがOKというところも。これから出産を控えている妊婦さんのなかには、実母や上の子の付き添いを考えている人もいるかもしれません。
そこで、家族がお産に付き添う場合、妊娠中から考えておくといいこと、当日することを育良クリニック(東京都目黒区)の助産師さんからアドバイスしてもらいました。
お産に付き添うってどういうこと?
夫が出産時に立ち会うことを一般的に「立ち会い出産」と呼んでいます。最近では、里帰り出産で実母や姉妹が夫の代わりに出産に立ち会うケースもあり、今回は夫の「立ち会い出産」と区別し、家族が出産に立ち会うという意味で、出産に「付き添う」と表現しています。
家族に出産に付き添うってもらうか考えるときは、まず産院で付き添いが可能かどうか、夫以外の大人や子どもの付き添いが可能かどうか、付き添う場合に両親学級の参加が必要かどうかなどを確認する必要があります。また、陣痛中から赤ちゃんの誕生まで付き添うのか、陣痛中だけ付き添うのかなど、どの場面に家族が付き添うかによって、サポートの内容も変わってきます。
●陣痛中から誕生まで付き添う場合
【メリット】
・夫・家族という甘えられる存在の人にサポートしてもらえる
・安心感があり、満足度の高いお産になることが多い
・誕生の瞬間を共有することで絆(きずな)が強まることが多い
・夫は父親の自覚が芽生えやすい傾向がある
【デメリット】
・長時間付き添う場合もあり、お互いイライラしてしまう
・痛がる妻や血などを見ることで、夫や上の子のトラウマになる場合もある
・気が散ってお産に集中できないことがある
●陣痛中だけ付き添う場合
【メリット】
・いちばん痛がる姿や血を家族に見せなくてよい
【デメリット】
・誕生の瞬間を一緒に迎えられない
パパが付き添う場合
パパが付き添う場合はどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
●妊娠中にしておくといいこと
パパも基本的なお産の流れを知っておくことで、心の準備ができ、パニックにならずに済みます。ママはどんなサポートをしてほしいか、パパはどんなサポートができるかを妊娠中に話し合っておくことも大切。
そして、お産が始まったときに夫婦が別々の場所にいた場合、どう連絡を取り合うかを確認しておきましょう。家から一緒に行くか、産院で合流するかも考えておいて。
●陣痛中にしてもらうこと
パパにはなるべく、あせらず、普段どおりを心がけてもらい、ママが痛みでイライラしたりわがままを言ったりしても受け止めてもらいましょう。陣痛を和らげるマッサージや、必要なものの買い出しなど、ママのリクエストにこたえてサポートするようにしてもらって。
とはいえ、初めてのお産では、多くの場合、陣痛が始まってから赤ちゃんの誕生まで10時間以上かかります。初めから張りきると、いざお産となったときに疲れきってしまうことにも。ママの陣痛の波がひいたとき、パパも休息をとるようにして。
●分娩室でしてもらうこと
分娩(ぶんべん)室ではママの頭側に立つよう指示されるのが一般的。助産師さんの指示に従って、呼吸法をリードしたり、飲み物を飲ませたりなどのサポートをしてもらいましょう。
何をしたらいいかわからないときは、助産師さんに確認を。そして、誕生の瞬間や、誕生後の赤ちゃんの様子を記録するのはパパの役目。撮影してもよいか、スタッフに確認したうえで、タイミングを逃さないように撮影機器の準備をしてもらいましょう。
夫以外の家族が付き添う場合
実母や姉妹など夫以外の家族が付き添う場合の注意点は?
●妊娠中にしておくといいこと
実母はお産の大先輩でもあり、陣痛やお産の進み具合などがイメージできる人は多いはず。とはいえ、忘れていることもあるもの。ママはどんなサポートをしてほしいか、してもらえるかを妊娠中から話し合っておくと行き違いがなくて済みます。
また、お産入院後、パパに連絡してもらう可能性も。それ以外でも、お産の状況を夫やほかの家族に連絡してもらう場合もあるので、それぞれの連絡先を登録したり、やりとりが共有できる連絡ツールを準備したりしておきましょう。
●陣痛中にしてもらうこと
実母に付き添ってもらった多くのママが、「痛みを和らげるマッサージのツボがわかっていた」「わがままを言いたい放題だった」とその存在に助けられています。励ましやいたわりの声かけをしてもらったり、痛みのある場所のマッサージなどをしてもらいましょう。
ただし、付き添う家族が疲れてしまうと、かえってママの負担になりかねません。産院スタッフの助けも借りながら、ときどき休憩をとってもらいましょう。
●分娩室でしてもらうこと
分娩室では、通常、ママの頭側に立つように指示されます。助産師さんの合図に合わせて、いきみや呼吸法を手伝ったり、飲み物を飲ませたりなどのサポートをしてもらいましょう。そして、赤ちゃん誕生の瞬間を見ることのできないパパのためにも、可能であれば記録を残してもらいましょう。
撮影時に、扱い方がわからずシャッターチャンスを逃してしまった!ということがないよう、事前に使い慣れておいてもらうことも大切。赤ちゃんが誕生したら、パパや家族への連絡もお願いしましょう。
上の子が付き添う場合
お兄ちゃんやお姉ちゃんが付き添う場合の注意点をまとめてみました。
●妊娠中にしておくといいこと
妊婦健診に一緒に行き、産院の雰囲気に慣れさせておきましょう。超音波画像を見せ、おなかの赤ちゃんを意識させるのも、心の準備になります。お産が始まったとき、どう連絡を取り合うか、どうやって産院に向かうか、ママ、夫、上の子のシチュエーションをすべて想定して、考えておきましょう。
ママの緊急時など子どもが一緒に行くのが難しい場合はだれに預けるのか、ママ1人でお産をするのかも考えて、必要な準備を。
●陣痛中にしてもらうこと
家族の付き添いが可能な施設は、家族も一緒に過ごせる入院室があることも多く、それぞれのプライバシーが保たれています。とはいえ、子どもが部屋から出たり、共有スペースで大騒ぎしたりしないように気をつけましょう。
また、上の子が気になって、ママがお産に集中できなかったり、上の子がぐずったり、嫌がったりしたら、パパには子どもと別の場所へ行くなどしてもらいましょう。それだけでなく、陣痛が長引き、上の子の付き添いが難しい場合など帰宅するのも一つの方法。ママは、1人で出産することも念頭に置いておいて。
●分娩室でしてもらうこと
分娩直前はママがいちばんつらいとき。上の子の年齢や性格にもよりますが、その姿をいきなり見てしまうと不安になる場合が。可能であれば分娩室の少し前から付き添うと、上の子の心構えができるでしょう。
分娩室では上の子に「頑張って」と声かけをしてもらったり、手を握ってもらったりなどのサポートをお願いしましょう。パパには、上の子に不安を感じさせないように、赤ちゃんがもうすぐ生まれる楽しみを伝えてもらって。
お産にパパや実母など家族が付き添ってくれると心強く感じるママもいるでしょう。お産はすべてが思うとおりに進むことはありませんが、妊娠中からママがどうしたいか、どうしてもらいたいかを話し合っておくことで、お産に前向きになれるかもしれません。
(文/たまごクラブ編集部)
■参考/『たまごクラブ2019年10月号』特集「お産に家族が付き添う場合」事前シミュレーション
■監修/助産師 小林冴葉さん(育良クリニック)