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「別れてくれ」彼氏が突然に…梅原佐波、27歳【小説「ご懐妊!!」Vol.5】

更新

『ご懐妊!!』Vol.5
スターツ出版文庫の大人気小説『ご懐妊!!』が、たまひよWEBにて連載中。「たまごクラブ」でもおなじみの産科医・大浦訓章先生のひと言解説もお見逃しなく。

●これまでのあらすじ
広告代理店で仕事に打ち込む佐波。悩みといえば、上司のイケメン鬼部長・一色が苦手なことくらい。それなのに、お酒の勢いで彼と一夜を共にしてしまい、しかも後日、妊娠が判明!どうしよう、彼氏になんて言おうと迷う佐波に彼氏が衝撃のひと言を…。


二ヵ月③

「すまん、佐波! 俺、おまえと会えへん間に、お客さんと浮気してもうた!」
「っ……えー!?」
「ほんでな、その子ハルカちゃんっていうんやけど、この前の日曜日、デートやって嘘つかれて、家に連れてかれてしもうて……」
 涼也はしおしおと背を丸め、泣きそうな顔で告白する。
「ご両親に挨拶するハメになったんや! こうなっては、俺がハルカちゃんをもらってやるしかないやろ? それが義理人情ってやつやないか?」
 私は、はーっと盛大にため息をついた。
 あー、バカだな、涼也。相手の女は、私という彼女の存在を知っていたんだ。それで先手を打ったわけよ。親に挨拶っていう、私と別れざるを得ない理由作り。これでダメなら、『子どもができたー』って言うタイプだぞ、その女。
 バカな涼也。優しいから、そんなずるい性悪女に引っかかっちゃって。
 ……いや、性悪度合いは私も一緒か。優しい涼也に全部を背負わせちゃおうって、欠片(かけら)でも考えていたんだから。本当に最低最悪です。
「いいよ」
 私は自分でも驚くほど、あっさりと言った。
「別れたげる」
「ええんか? 佐波。俺はおまえにボコボコに殴られる覚悟で、今日来たんやで?」
 私、男を殴るタイプじゃないだろ! 心の中だけで突っ込む。
「いいよ。あんたをほったらかした私も悪いもん」
 私だって後ろ暗いことがあるし、とこれまた心の中で呟く。
「ほら、お蕎麦来たよ。食べよ!」
 泣きそうな涼也の肩をバンバン叩いて言った。
「佐波、ごめんなぁ。本当にごめんなぁ」
「ひとつだけ。ハルカちゃんって女、結構食わせもんだからね。あんたが捨てられないように気をつけるんだよ!」
 幸せになってよ、涼也。
 そう願うのが、まだ先も見えない私からの罪滅ぼしで餞別(せんべつ)だった。

 涼也と別れてしまった。
 あっさり別れに応じたものの、やっぱりショックは身体に響く。私は一週間、脱け殻のように過ごした。
 お腹の子の問題はなにも解決していないのに、毎日やる気が起きなくて、身体は重いし、夜は起きていられないし、いろいろなことを保留しておきたい。考えるのをやめたい。
 それでも週が明けて月曜日、私は産婦人科を訪れた。前回の来院から一週間と三日経っている。
 待合室で本日も待ちながら思う。堕ろさなきゃ。たくさんの妊婦さんに交じって、いよいよ真剣に考える。
 ここにいるたくさんの幸福な女性。この人たちは赤ちゃんが欲しくて産むんだ。
 私は違う。流れでしちゃって、子どもができた。こんなやつ、産む資格ないでしょ。
 それに、私には仕事がある。彼氏と別れた以上、次の彼氏だって探したい。
 子どもはいらない。少なくとも今は。堕ろそう。そして、部長には黙っておこう。
 いいんだ、お金のことなら。そのくらいは私の負う罰(ばつ)ってことで。
「梅原さん、三番の診察室にお入りください」
 私は決意とともに立ち上がった。診察室で、おじさん先生と向かい合う。私は今までで一番、神妙な顔をしていたと思う。
「梅原さんは、まだどうするか決めてないんでしたね」
「はい」
 でも、堕ろそうとは思っています。今日の内診を終えたら言おう。

つづく
【小説「ご懐妊!!】次回をお楽しみに


著者/砂川雨路  イラスト/くにみつ 監修/大浦訓章先生

この小説はスターツ出版文庫から刊行されている『ご懐妊!!』より掲載しています。たまひよWEB版は産婦人科医大浦訓章先生の監修のもと一部改訂しております。


砂川雨路
Profile
群馬県出身。東京都在住。著書に、『愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~』『クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした』(ベリーズ文庫)、『僕らの空は群青色』(スターツ出版文庫)などがある。現在、小説サイト「Berry's Cafe」「ノベマ!」にて執筆活動中。『ご懐妊!!』(スターツ出版文庫)は現在3巻まで発売中。テキストリンクなどもはれる。

大浦 訓章先生
Profile 
南流山レディスクリニック院長 慈恵医大卒。産婦人科准教授、同大付属病院総合母子健康センター産科部門長、東京母性衛生学会理事、日本周産期新生児学会評議員・副幹事長、日本周産期新生児学会新生児蘇生法委員などを歴任。現在、周産期メンタルヘルス学会評議員、女性スポーツ研究会理事、2020年産科婦人科学会、医会産科診療ガイドライン作成委員、2023年同評価委員。「たまごクラブ」でも監修をつとめる。

南流山レディスクリニック

ご懐妊!!3~愛は続くよ、どこまでも~

OLの佐波は、苦手な超イケメンの鬼部長・一色とお酒の勢いで一夜を共にしてしまう。しかも後日、妊娠が判明! 迷った末、彼に打ち明けると…。大人気シリーズ、ついに3巻発売!

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