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会社でみんなの前で報告、うーん、反応が…【小説「ご懐妊!!」Vol.16】

『ご懐妊!!』Vol.16
スターツ出版文庫の大人気小説『ご懐妊!!』が、たまひよWEBにて連載中。「たまごクラブ」でもおなじみの産科医・大浦訓章先生のひと言解説もお見逃しなく。

●これまでのあらすじ
広告代理店で仕事に打ち込む佐波。悩みといえば、上司のイケメン鬼部長・一色が苦手なことくらい。それなのに、お酒の勢いで彼と一夜を共にしてしまい、後日、妊娠が判明!不安と途惑いの中、佐波はある決心をし部長に「赤ちゃんがいます」と告げたところ、部長の答えは「結婚」。途惑いながらも前進しだした佐波は…。


四ヵ月

翌日、出社した私は自分のデスクにいた。思い出すのは昨夜、記念すべきふたり暮らし初日の晩だ。
 お茶しながら未来を語り合ったりとか?
 並んだベッドで眠りながら、『まだ、起きてるのか?』『なんか緊張して眠れないです』『……こっち来るか?』とか?
 そんなやり取りは一ミリもなかった。なぜなら、二十時前に私がひとりで寝てしまったからだ。
 ファミレスから帰ったら、鉛(なまり)のように身体が重くてもうダメだった。なんとかシャワーを浴びて、メイクをぐしゃぐしゃーっと拭いて、なんの保湿もせずにベッドへバタン。妊娠発覚頃から、やたら眠くはあったけれど、つわりで体力が落ちたせいか、余計に夜は身体に堪える。
 部長が自分もシャワーの準備をしながら言った。
『おい、梅原。明日は報告だからな。忘れるなよ』
『……やっぱ、言うんスかー?』
『当たり前だ。おまえが住所変更を総務に申請して、俺と同じ住所じゃモロバレだろうが。その前にきちんと社内に報告するんだ』
 彼は言うだけ言って、シャワーに行ってしまった。そして私は夢の中へ。
 今朝になってみて、いろいろ考えた。部長の言っていた報告とは、私たちの結婚報告。社内に、今日の朝ミーティングで知らせるんだって。
 うわぁ、想像しただけで恥ずかしい。だって、相手は一色部長だよ? 鬼の一種だよ? 冷血仕事虫と評判の……いやいや、優しい面も結構見ているけど。でも、社内では鬼の一色褝なわけですよ。そんな男と結婚……。
 同じグループ内の人たちはどんな顔をするだろう?
 えー! いつの間に!? ウメちゃん勇気あるな! っていうか、部長、なんでウメちゃんを?
 みんなの反応を想像して……萎えた。
 私と部長、釣り合っていないんじゃない? 忘れていたけど彼は結構なイケメンだ。
 ちらりと顔を上げると、部下の松方(まつかた)くんと打ち合わせをしている部長が見えた。
 鼻筋は通っているし、目元はセクシーだし、背だって百八十センチ。しかも仕事ができたら、女の子なんて選り取り見取り!
 なのに、なんで梅原佐波を?って空気になっちゃうよなぁ。
 上の階のマスコミ担当グループには、一色ファンの女の子たちが結構いる。あの子たちなら絶対言うよな。『なんで梅原さんなんかと結婚するの?』って。
 私はデスクに突っ伏す。横では出社したばかりの夢子ちゃんが、慌ててパソコンを起動させている。今年の新人の二十三歳女子だ。
 早く出退勤を押さないと遅刻って時間だもんね。
「彼氏の家にお泊まりしたら、寝過ごしちゃってぇ~」
 聞いてないぞー、そんなこと。突っ込む元気がないので、頷くだけの私。
『うちなんか初夜だったけど、なんにもなかったんだぜ!』と威張ってやりたい。
 男の人と住むのは初だ。見栄っ張りな私は、今までの彼氏なら一緒にお泊まりでもメイクは落とさないし、イビキをかいたら恥ずかしいから、相手が寝るまで寝ないようにしていた。
 なのになぁ、ゆうべの私、気ぃ抜きすぎじゃないかな。ノーメイクだし、髪も乾かさず、先にガーガー寝ちゃったよ。今朝、部長はなんにも言わなかったけど、きっと呆れているよ……。
 ぞろぞろとフロアに社員が入ってきた。上の階の総務とマスコミ担当グループのメンバーだ。週の頭は、こっちのフロアで朝ミーティングをする。
 気が重いままミーティングが始まった。マスコミ担当グループの森(もり)部長が今日は仕切り役だ。
 社長のお話があって、目下の仕事の確認。今週の目標。各部署より連絡事項。
「他はないかな?」
 森部長が言う。
 スッと一色部長が手を挙げた。彼はなんら普段と変わらない様子で口を開く。
「この場を借りまして、個人的なご報告があります」
 場がざわついた。この言い回しは……誰しも察しがついただろう。でも、みんな一様に思っているはずだ。『まさかこの人が? そんな様子はなかったぞ!』と。
「梅原!」
 私の覚悟が決まらないうちに、一色部長が私を呼んだ。私はおずおずと彼の立つ位置へ近づく。場のざわざわが大きくなる。
「私、一色は、部下の梅原佐波と結婚することにいたしました」
 集まっていたほぼ全員が、なんらかの声を上げた。
 驚きや歓声、一部の女子社員からは悲嘆を含んだ叫び。私はただただいたたまれず、真っ赤になって唇を噛みしめていた。一色部長が重ねて言う。
「梅原のお腹には、私の子どもがいます。今、四ヵ月ですが、仕事の面でみなさんにご迷惑をおかけすることもあるかと思います。何卒、よろしくお願いします」
 彼が頭を下げ、私も慌てて一礼する。場のざわめきが拍手に変わった。
「おめでとうございます!」
「ゼンさん、おめでとうございます!」
「ウメちゃん、おめでとう!」
「いつから付き合ってたんですか?」
「お式、呼んでくださいね!」
 次々にかけられる祝福の声に、胸がぐっと詰まる。
 本日の仕切り役、森部長がひと昔前の芸能レポーターみたいに駆け寄ってきた。
「おぉーっと、ビッグカップルの誕生じゃないですか! ゼンくん! 梅原ちゃん!おめでとう!」
 私は再び頭を下げる。自他ともに認めるお調子者の森部長が、なにを言いだすかヒヤヒヤしている。
「はいはい! じゃあ、みんな聞きたい質問ターイム!!」
 案の定だ……。
「ゼンくん、入籍と結婚式のご予定は?」
「入籍は今月末か来月頭に、日取りを見てと思ってます。式は子どもが産まれるまでには」
 一色部長は律儀に答えた。彼は部長の役職にはあるけど、社内では若手から中堅の年齢だ。年上の同僚や部下を無下に扱う人じゃないけど……。
「そうなんだ~。梅原ちゃん、ベビーは男の子? 女の子? いつ産まれるの?」
「あ……性別はまだわかんなくて、予定は七月中頃です」
「楽しみだねぇ! さて、梅原ちゃんはゼンくんのどこに惚れたの~!」
 まだ、惚れてません。とは言えない。
 そういう話は飲み会でやってくれ! ……とも言えないよね。
「厳しいけど……頼りになるところです……」
 声を振り絞って言った。本音、これは本音。
「なるほどね! じゃあゼンくんは? 梅原ちゃんのどこが好き?」
 私は息を呑(の)む。

つづく
【小説「ご懐妊!!】次回をお楽しみに


著者/砂川雨路  イラスト/くにみつ 監修/大浦訓章先生

この小説はスターツ出版文庫から刊行されている『ご懐妊!!』より掲載しています。たまひよWEB版は産婦人科医大浦訓章先生の監修のもと一部改訂しております。


砂川雨路
Profile
群馬県出身。東京都在住。著書に、『愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~』『クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした』(ベリーズ文庫)、『僕らの空は群青色』(スターツ出版文庫)などがある。現在、小説サイト「Berry's Cafe」「ノベマ!」にて執筆活動中。『ご懐妊!!』(スターツ出版文庫)は現在3巻まで発売中。テキストリンクなどもはれる。

大浦 訓章先生
Profile 
南流山レディスクリニック院長 慈恵医大卒。産婦人科准教授、同大付属病院総合母子健康センター産科部門長、東京母性衛生学会理事、日本周産期新生児学会評議員・副幹事長、日本周産期新生児学会新生児蘇生法委員などを歴任。「たまごクラブ」でも監修をつとめる。

南流山レディスクリニック

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