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「コロナ禍でもNICUの赤ちゃんとママを会わせてあげたい…!」阪大病院小児科医の挑戦

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病院で生まれたばかりの赤ちゃん
※写真はイメージです
Bunwit/gettyimages

新型コロナウイルスの感染拡大以降、立ち会い出産・家族との面会禁止など、赤ちゃんと家族を取り巻く環境は激変しました。とくに出産後に新生児集中治療室(以下、NICU)に入院している赤ちゃんのママは、わずかな時間しかわが子に会えない状況が続いています。そんな中、赤ちゃんと家族をつなぐオンライン面会システムの開発に取り組んでいるのが、大阪大学医学部附属病院(以下、阪大病院)の総合周産期母子医療センターです。システム担当の小児科医北畠康司先生に話を聞きました。前編では、クラウドファンディングでの開発資金集めを成功させたプロジェクトについて紹介します。

生まれた赤ちゃんに会えないママとパパたち

阪大病院のNICUにはさまざまな病気を持つ赤ちゃんたちが入院しています。新型コロナ感染拡大前は、家族みんなが24時間いつでも赤ちゃんに面会できていたそうですが、現在の面会時間は週1〜2回、1回30分のみです。

「当院のNICUでは‟家族との面会を治療の一環”と考えています。『ファミリー・センタード・ケア』という考え方です。以前は両親だけでなく、きょうだいや祖父母も、24時間いつでも何回でも赤ちゃんに会えました。しかし、コロナ禍の現在は面会時間をかなり制限している状況です。
2020年4月の1回目の緊急事態宣言時は、完全に面会禁止でした。病態がとても重く危険な状態にあった赤ちゃんの両親は、わが子の命が危険な状況なのに会えず『大切な時間をムダに過ごしている気がする』とつらい思いをしていたと聞いています。

また、現在NICUに入院している赤ちゃんのママやパパからは『赤ちゃんの様子がわからず不安とさびしさを強く感じる』という声が寄せられています。緊急事態宣言が発出されると、病院全体としては面会不可となりますが、NICUは最低でも週1〜2回の面会時間は確保したいと考えています」(北畠先生)

クラウドファンディングで資金を募りシステム開発へ

新生児期は母子の愛着形成を促すとても大事な時期といわれます。そこで阪大病院では、赤ちゃんと家族とのかかわりの一助となるオンライン面会システムを開発しました。同院はシステム開発資金をクラウドファンディングで募るプロジェクトを2020年9月から実施。2カ月半で3000万円以上を集める成功を収め、現在2021年5月末の本格運用に向けて準備を進めています。

「実はNICUオンライン面会システムを作ろうと思ったきっかけは、新型コロナ感染拡大の前に取り組んでいた、院内の面会システムにあります。
もともとNICUでは外科手術が必要な赤ちゃんや、合併症を持つ赤ちゃんが多く入院しています。
出産前に病気がわかると、帝王切開手術での出産となりますが、産後のママの体調が悪い場合、NICUにいる赤ちゃんに2〜3日会えないことがあります。生まれた赤ちゃんに会えず『夜じゅうずっと泣いていました』というママも少なくありません。そんなママと赤ちゃんをつなぐために院内でのオンライン面会システムの開発を始め、完成したのが2020年3月です」(北畠先生)

2020年3月というと、ちょうど国内で新型コロナウイルスの急激な感染拡大が始まったころ。1回目の緊急事態宣言が発出される1週間ほど前に、新型コロナ感染症の疑いがある妊婦さんが、陣痛発来により阪大病院に入院してきました。

「その時はPCR検査が容易にできない時期で、母子垂直感染(赤ちゃんが産道を通ることにより感染する)があるかどうかもわからなかったため、ご家族と相談の上、帝王切開での出産となりました。赤ちゃんも感染の有無がわからなかったので、NICUの隔離室に入ることに。

ママは『ずっと大きかったおなかが、いつの間にかへこんでしまった。まだ一度も赤ちゃんを見ていないし、本当に産んだのかわからない』と、とてもつらそうでした。そこで、面会システムの一例目として使ってもらったんです。赤ちゃんの様子をタブレットを通して見たママは『私は赤ちゃんを産んだんだ、と実感できました』と喜んでくれました」(北畠先生)

このママは数日後にPCR検査を2回受け陰性となり、無事赤ちゃんに会えたそうですが、この経験が、病院の外にいる家族と赤ちゃんがオンラインで面会できるシステム構築の動きにつながります。

安全かつ負担が少なく持続性のあるオリジナルシステムをめざして

システム開発にあたり、最も重視したことは「安全性と持続性」と北畠先生は話します。赤ちゃんの個人情報を守りながら、看護師にとっても負担が少ないしくみをめざしたそうです。

「既存のオンライン会議システムは、外部からの不正なアクセスなどによる患者さんの個人情報漏えいの危険が伴うため使用できないと考えました。また、オンライン会議用URLを発行する作業などは、看護師の負担になります。スタッフがストレスなく続けられ、かつセキュリティーの問題もクリアするシステムをオリジナルで作る必要がありました。

使用方法は、NICUの赤ちゃんの保育器のわきに、タブレット・カメラ・バーコードリーダーがついた機器を設置し、個別バーコードを読み込んで赤ちゃんの様子を映します。ママや家族は自宅のPCからシステムにログインして赤ちゃんの様子を見ることができます」(北畠先生)

面会に来られない日も、赤ちゃんの様子がわかる

では家族はどのくらいの時間、赤ちゃんの様子を見ることができるのでしょうか。北畠先生はTwitter(@Handai_NICU_CF)で、ママたちに面会時間の希望についてアンケートを採ったそうです。

「結果、圧倒的に多かったのは『オンライン面会を24時間つなぎっぱなしにしたい』という意見でした。しかし、24時間ずっと見られることは看護師にとってはストレスにもなります。コロナ禍で、ただでさえ緊張感が高まっていることもあるため、5月末のスタート時には、まずは前日までの予約制で1日数時間から始める予定です」(北畠先生)

オンライン面会以外にも、看護師が撮影した赤ちゃんの写真や動画をシステムのフォルダに保存しておき、家族がダウンロードできる機能も追加する予定だとか。

「限られた面会時間では、赤ちゃんがずっと寝ていることもあります。起きている時の様子や、ふとしたかわいい表情の写真や動画をご家族が見ることができれば、赤ちゃんに会いたい気持ちを持続して持ってもらえると思います。さらに、赤ちゃんが看護師にかわいがって育てられている様子が見えると、ママの安心にもつながり、スタッフとご家族の交流もはかれるでしょう」(北畠先生)

お話・監修/北畠康司先生 画像提供/大阪大学医学部附属病院小児科 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

お話・監修/北畠康司先生

コロナ禍による面会制限で、ずっと会いたかった赤ちゃんに会えないママやパパたち。オンライン面会システムは、そんなママやパパたちのさびしさや不安、自分を責めてしまう気持ちを少しでもうすらげ、家族の絆をつむぐ一助となってくれるのではないでしょうか。

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