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ママ・パパ視点での子育て支援が必要。フィンランドのネウボラから見える日本の課題とは?【専門家】

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診療所の幼い子供
※写真はイメージです
maroke/gettyimages

妊娠初期から子育て期の困りごとを、どこに相談していいか迷う場面も少なくありません。そこで注目されているのが、担当の保健師に継続してサポートしてもらえる「ネウボラ」という子育て支援です。日本の新たな子育て支援のモデルとされたフィンランドのネウボラと、日本での今後の展開の課題について吉備国際大学保健医療福祉学部 教授の髙橋睦子先生に話を聞きました。

子育て世代包括支援センターの取り組みと課題

政府は、妊娠から出産・就学前までの子育て家庭を、切れ目なく支援するための「子育て世代包括支援センター」(以下、包括支援センター)の設置を、2017年から全国展開してきました。2020年4月現在では1288市区町村(2052カ所)と7割を超える自治体に設置されています。
これまでの子育て支援や母子保健では、妊娠・出産・子育てに対応する行政の担当や窓口が異なることで、連携や支援が途切れてしまう課題がありましたが、包括支援センターは、利用者主体の支援を行い育児不安や虐待を予防することを目的としています。この制度のモデルとなったのが、フィンランドの母子保健・子育て支援拠点「ネウボラ」です。

ずっと同じ保健師に、健康と心・子育ての相談ができるネウボラ

ネウボラは、フィンランド語で「助言の場」を意味し、フィンランドで1920年代に始まった子育て支援拠点のこと。妊婦健診・両親学級、出産後の乳幼児健診や予防接種など、妊娠から子どもが就学するまで、担当の保健師や助産師が継続してサポートするしくみです。
日本では母子健康手帳は自治体の窓口、妊婦健診や分娩は医療機関や助産院、乳幼児健診や予防接種は保健所、幼児期は保育園や幼稚園など、場面によって担当機関が異なります。一方、フィンランドのネウボラでは保健師が中心となり、親子の健診と相談支援の両方を行います。

母子保健と子育て支援の連携を強化する必要が

日本の自治体には「〇〇区ネウボラ」「ネウボラ推進課」などといった部署名を使用するところもあります。しかし、フィンランドのネウボラのシステムを参照して日本の母子保健や子育て支援を改革しようとするとき、大きな違いの1つとして保健師の専門性があげられるそうです。

「フィンランドのネウボラでは、基本的に1人のネウボラ保健師が継続して同じ家庭を担当します。その保健師は、母子保健の専門家としてキャリアを積んでいきます。日本でいう助産師の要素も強く、妊婦健診や予防接種も行いますし、親の相談を傾聴し子どもの発達検査をする心理師的な要素もあります。

日本の行政保健師は、母子保健以外にも、高齢者・障害者など多種多様な部署へ数年おきに異動します。同じ保健師が継続的に家族を支援することがネウボラの中核と考えると、担当保健師制の整備や、現場でのスキル蓄積、産科医・助産師との連携など、課題が多い面はあります」(髙橋先生)

一歩踏み込んだ支援の糸口は、支援者の顔が見えること

包括支援センターは全国展開されたものの、保健所・支援施設・保健師の訪問・コーディネーターの配置などの連携をどのように実施するか、国の基本ガイドラインのもと、実際の取り組みの方向性は各自治体に任されています。

「自治体によっては、従来の母子保健をほぼ踏襲しながら、とりあえず包括支援センターの看板を上げたところも少なくありません。これまで、母子保健法に基づく妊産婦・乳幼児健診などの事業と、子ども子育て支援法や児童福祉法に基づく子育て支援事業では、それぞれが行う支援に関する情報しか把握できていなかった面があります。各現場である保健所や医療機関、保育・幼稚園、子育て広場や支援センターなどが、どのように手をつないでいくかが課題です。

また、形だけ整えるのではなく、利用者目線の支援をしていく必要があります。そのポイントは、親たちから支援者の顔が見えること。親たちから『この人なら不安や悩みを打ち明けられる』と信用される関係を築けるかどうか。それが、育児不安や虐待などの問題を予防するための“一歩踏み込んだ支援”への糸口になり得ます」(髙橋先生)

出産・子育て支援に力を入れている自治体は…?

では、実際にネウボラのエッセンスを参考に、充実した子育て支援をしている自治体はどこかを聞いてみました。

「富山市は、自治体の中でもかなり早い段階で、従来の母子保健を再編しながら、子育て支援に取り組んできました。保健福祉センターでの妊婦の健康相談、産後ケア応援室(※)の設置などを行い、安心して産み子育てしやすい支援に取り組んでいます。
また、伊達市は『ネウボラ推進課』のもとで、妊娠期からのママとつながろうと担当保健師制を取り入れています。福井県高浜町はまちづくりとして商工会議所も含め地域社会とうまく連携をしています。ほかにも全国各地でいい取り組みがあります」(髙橋先生)

上の写真は富山市の赤ちゃんが生まれるとプレゼントされる「ベイビーボックス」。ストローマグやスプーン&フォークセットなど、持ち運びに便利なものや長く使える育児用品が入っています。

これ以外にも、地域の実情に応じて工夫しながら、包括支援センターを積極的に展開しようとする自治体は多いそうです。困ったときにすぐに相談できるよう、自分の住む自治体の状況を調べてみるといいかもしれません。もっとこうしてほしい、という意見をリクエストしてみることも、利用者主体の支援につながるでしょう。

子育てしやすい社会に向かうにはロールモデルとなる人が必要

日本がもっと子育てしやすい社会に向かうために、包括支援センターなどの支援の充実のほかに、必要なポイントを聞いてみました。「ロールモデルとなる人が必要だ」と髙橋先生は言います。

「政治家・経済人・オピニオンリーダーたちが子育て経験をすることです。彼らには、世論や政策形成とともにロールモデルとしても大切な役割があることを、ぜひ自覚していただきたいと思います。自治体や地域が行っているいい取り組みを広めて、子育てしやすい社会へ向かう流れを作ってほしいですね」(髙橋先生)

写真提供/富山市こども健康課  取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

お話・監修/髙橋睦子先生

子育て支援制度を利用するママやパパ本人が、安心や便利さを感じられなければ、せっかくの政策も効果がなくなってしまいます。子どもをもっと産み育てやすい地域にするための、今後の自治体の取り組みに期待しましょう。

(※)富山市まちなか総合ケアセンター

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