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【専門医に聞く】小児と大人の白血病の違いや最新の治療方法を教えて

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takasuu/gettyimages

「がんは不治の病ではない」と言われて久しいですが、小児がんの中でも多い白血病の治療はどれくらい進歩しているのでしょうか。国立成育医療研究センター小児がんセンター血液腫瘍科診療部長の富澤大輔先生に聞きました。

小児白血病は成人白血病より治療成績がよく、長期生存率も高い

小児白血病の大半を占めるのは、急性リンパ性白血病と急性骨髄性白血病です。治療は化学療法(抗がん剤による治療)がメインとなります。

――子どもは大人より強い化学療法に耐えられるそうですが、どうしてでしょうか。

富澤先生(以下敬称略)子どもは糖尿病や高血圧などの基礎疾患があることはまれですし、臓器自体が「若い」ので、抗がん剤などの負担に耐える力が大人より強いのです。

――小児白血病は成人白血病より長期生存率が高い傾向にあるのは、強い化学療法が行えるからですか。

富澤 それも一因ですが、小児白血病は化学療法が効きやすいタイプが多いのも理由の1つです。とくに2~6才の急性リンパ性白血病は化学療法が効きやすいタイプが多いです。逆に、成人の急性リンパ性白血病では、治りにくいタイプの白血病が多く、たとえば難治性白血病の代表であるフィラデルフィア染色体陽性のタイプが25%を占めます。小児では5%以下です。
また、子どもは治療優先でスケジュールを組めます。これも長期生存が高くなる要因とされています。

白血病は「早く見つける」ことより、的確な治療を受ける」ことが重要

――白血病は初期だと風邪のような症状が現れるのみなので、子どもが白血病と診断されたとき「もっと早く気づけなかったのか…」と自分を責めるママやパパが少なくないようです。

富澤 白血病に罹患(りかん)する子どもは10万人に3~4人程度ですから、わが子が白血病になるとは夢にも思わなかったでしょう。また、いつも一緒にいる家族は意外と、「顔色が悪い」などの症状に気づきにくいものです。したがって「もっと早く気づく」ことは難しかったはずです。

白血病は早く見つけたから治りやすく、見つかるのが遅いから治りにくい、という病気ではありません。早く診断することより、適切なタイミングで正しく診断し、正しい診断結果に基づいて適切な治療を受けることのほうが重要です。

仮にお子さんの白血病の治療経過が思わしくなかったとしても、「早く気づけなかったから」そうなったのではなく、お子さんの白血病のタイプや、医療や医学の限界が要因です。そして、治る確率を上げるためにできることはあります。

思春期や若年成人(AYA世代)は小児型治療のほうが治療成績がいい

――小児型治療は10代後半にも行うことがあると聞きました。急性リンパ性白血病を克服したとされる水泳の池江選手は、2000年生まれで今年21才。小児型と成人型のどちらの治療だったでしょうか。

富澤 以前は、成人と小児の急性リンパ性白血病で異なる治療がされていました。簡単に言うと、以下のような違いがあります。

・小児の急性リンパ性白血病治療では、ステロイド剤やアスパラギナーゼなどの抗がん剤を成人よりもたくさん使う。逆に、小児では成長に伴って現れる合併症(※1)のリスクがある抗がん剤の使用は少ない。

・成人では造血幹細胞移植(※2)を行う患者さんの割合が多い

しかし2000年代始めに、小児科でも成人診療科でも治療を受ける機会のある思春期や若年成人の患者さん(AYA世代)について、多くの国で小児型治療と成人型治療を受けた患者さんを比較したところ、小児型治療を受けた患者さんのほうがはるかに治療成績がいいことがわかりました。そのため最近では、少なくとも化学療法については、小児型で治療するのが標準になっています。ただし、AYA世代は子どもより化学療法の副作用が出やすいことが知られています。

一般的に、造血幹細胞移植は、白血病の性質や治療経過から化学療法のみで治癒する可能性が高くないタイプと判断された場合に選択されます。また成人では、化学療法の副作用のため化学療法を最後まで遂行することが困難と判断された場合に、より良好な治療成績を期待して造血幹細胞移植が選択されることもあるようです。池江選手は化学療法の副作用に苦しんだこと、造血幹細胞移植を受けたことなどが報道されましたが、白血病を克服して、記録に挑戦する姿は本当に素晴らしいことだと思います。

※1 成長障害、内分泌障害、神経障害、心機能障害、骨・歯の異常など

※2 ドナーから提供された骨髄血、臍帯血(さいたいけつ)、末梢血幹細胞を移植して、健康な血液をつくれるようにする治療法

4年間「白血病がない」状態が続いたら「治った」とみなされる

――近年、小児の白血病の治療成績は上がっていると聞きます。

治療成績の向上には2つの意味があります。1つは、治る患者さんの割合(生存率)が増えること。この点は2000年以降、現在の標準治療については頭打ちになってきています。もう1つは、生存率は変わらなくても、合併症、とくに成長後に現れる合併症が少ないこと。小児は治った後の人生が長いので、この意義は非常に大きいです。

成長に伴って現れる合併症のリスクを高める治療法の代表は、造血幹細胞移植と放射線治療です。小児の急性リンパ性白血病では、放射線治療を受ける患者さんの割合は激減し、移植を受ける患者さんの割合も10%以下まで減っています。

――白血病の場合、どのような状態になったら「治った」と言えますか。

富澤 検査の上で「白血病がない」状態を「寛解(かんかい)」と言い、治療終了後4~5年間寛解を維持できれば、その後に再発する可能性は1%未満なので、「治った」とみなします。

――20才くらいまでフォローアップを行うとのこと。主に何を診るのでしょうか。

富澤 治療後の経過年数によります。最初の1~2年は再発を主眼に置いてチェックします。再発の心配が薄れてきたら、今度は成長に伴って出てくる合併症の有無のチェックに重点が移ります。ただし、化学療法だけで治療を終えた患者さんは、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病ともに、成長後に現れる合併症が問題になることは比較的少ないです。

――小児白血病の治療は国内外で臨床試験が行われているそうですね。

富澤 臨床試験といっても、全く未知の治療を行うわけではなく、現在の標準治療の一部を変更し、効果が高くなるか、安全にできるか、といったことを試験します。小児白血病は小児がんの中では多いとはいえ、絶対数は少ないので、ほとんどの患者さんが臨床試験に参加しながら治療を受けていると思います。

――近年、注目されている治療法はありますか。

富澤 「免疫療法」が注目されています。特に急性リンパ性白血病では、再発したり、標準治療で寛解が得られなかったりした患者さんを対象に、「抗体薬」や「遺伝子改変T細胞療法(CAR-T治療)」などの治療が広がりつつあります。急性骨髄性白血病でも「抗体薬」の効果が出てきていて、国内でも臨床試験が行われています。

小児の白血病の多くは治るようになってきたとはいえ、再発する患者さんも少なくなく、治療の合併症も無視できません。よりよい治療を確立するために研究が続けられているのです。

お話・監修/富澤大輔先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

白血病は大変な病気ではありますが、治療法は進歩を続けていて、新しい治療法も生まれつつあるようです。

富澤大輔(とみざわだいすけ)先生

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