「パパが手伝おうとするとなぜママは怒るのか?」ママの伝え方で家事シェアが劇的に変わる?!【専門家】
パパが家事を手伝おうとすると、「余計なことはしないで」など、かえってママを怒らせてしまう場合があります。パパは自分も積極的に関わりたいのに、どうしてうまくいかないのでしょうか。「なぜ妻は『手伝う』と怒るのか」の著者であり、夫婦での家事シェアを提案している家事研究家の佐光紀子さんに聞きました。
「手伝う」のはNG!大切なのは、パパも当事者意識を持って「家事をシェア」すること
とくにルールを決めていなくても、家庭内に「家事をメインで担うのはママ、パパはそのサポート役」という暗黙の了解があるかもしれません。そのため、パパは「ママが大変そうだから手伝おう」と考えがちです。でも、そもそもこの前提を修正したほうがいいと佐光さんはいいます。
「手伝うという感覚でいると、全体の工程を見渡せず、いつまでも家事スキルが上がりません。大切なのは、パパ自身も当事者意識を持ち、ママと“家事をシェア”することです。
たとえば、ゴミ出し。簡単な作業に思えるかもしれません。でも、収集所まで持っていくまでにも、たくさんの工程があります。まずは、分別のしかたや何曜日にどのゴミを出すのかを把握。次に家にあるゴミ箱から集めて分別し、ひとつにまとめます。収集所に出したあとも、空のゴミ箱に新しいビニール袋をセットしてようやくゴミ出しは完了です。
よくパパたちが『ゴミ捨てをした』という時の“袋にまとめたものを収集所に持っていく”作業は、実はゴミ出しの一部なんですね。作業のほとんどをママがやってくれていることに、まず気がついてください」(佐光さん)
それでは、どうしたらうまく家事をシェアできるのでしょうか。佐光さんは、パパがひとつの家事を丸ごと担当することが大事だといいます。
「ママも忙しいとつい、ちょこちょこと頼みごとをしてしまうかもしれません。でも、それよりむしろ、ひとつの家事を全部パパに任せてしまったほうが結果的には家事シェアにつながります。“これはパパの仕事”として、ママはその家事に関してノータッチ。パパは責任感を持ち、しっかり担当しましょう。パパにだって得意・不得意もあると思うので、何を担当するかは2人で相談するといいですね。
知人の話ですが、ママが疲れていたときに、パパがカレーを作ってくれたことがあったそうです。喜んだママを見て、週に1度はパパが夕食にカレーを作ってくれることに。最初のころは、作ってくれるのは市販のカレールウを使ったものでしたが、何年も続けるうちに、スパイスの調合ができるほどの腕前になったとか。カレーが作れるなら、工程がほぼ一緒のハヤシライスや肉じゃがも作れるし、レパートリーも増えます。それに、買い物や片づけもしてくれるようになるかもしれません。ひとつの家事を突き詰めていくと、少しずつほかのことにも発展していくはずです」(佐光さん)
パパは“部下”ではなく“後輩”。指導する必要はなく、対等な立場だと認識して
各家庭によって違いはあるかもしれませんが、家事においてはママのほうがどうしてもメインで取り組んできていて、パパとではスキルに差があるかもしれません。
そのため最初のうち、ママはパパのやり方にもどかしさを感じる場合もあるはず。でも、過剰に指導しようとするのはNGです。
「慣れるまでは『パパのやり方は効率が悪い』と、ママもついあれこれと口を出し、指導したくなるかもしれません。でも、これではパパのやる気をそいでしまいます。
たとえば職場で、パワーポイントでの資料作成を頼まれたとします。その際、上司が後ろにぴったりと立ち、作業する自分を監視していたらどう思いますか?『へー、最初にwordで文言決めるんだ』とか『そのやり方だと、効率悪くない?』など、いちいち横やりを入れられては、委縮してしまいますよね。過剰な指導はパワハラになりかねません。ところが不思議なことに、家庭内ではこうしたことが起こりがちです」(佐光さん)
忘れてはいけないのは、ママとパパは対等な立場にあることです。パパは、ママが指導しなくてはいけない“部下”ではなく、ちょっと家事に不慣れな“後輩”だと思うといいでしょう。
「家事責任者として頑張っているママは、つい、自分のやり方が正しいと考えてしまうのも無理はありません。だから、ついパパにも自分のやり方を教えようとしてしまいがちです。でも、ママとパパの間では、指導する必要はないのです。パパは部下ではなく、一緒に仕事をする同僚です。仕事に慣れれば“この先きっと頼りになってくれる後輩”だと考えるといいですね。
部下には、仕事を教えたり指導したりする責任がありますが、同僚や後輩だとある程度仕事を任せようと思えるはず。後輩が育つと、仕事を安心してシェアできるようになり、ママ自身がラクになりますよ」(佐光さん)
ママが専業主婦でも、収入差があっても、家事や育児のシェアはしたほうがいい。その理由は?
家庭によっては、“パパが仕事担当、ママが専業主婦で育児・家事担当”と役割分担が決まっているかもしれません。でも、ママが専業主婦であっても、家事はシェアしたほうがいいそうです。
「ママが一人で家事を仕切っていると、何かあったときにパパが対応できません。たとえば2人目が生まれるのに入院するとき。どちらかの実家の親が体調を崩して手伝いに行くとき。あるいは、将来ママが働きに出るかもしれません。そのときになって急に家事シェアをしようとなっても大変です。
人生何があるかわかりません。もしかしたら、パパが途中で働けなくなる可能性だってあります。老後、パパが1人残されてしまうかもしれません。家事ができなくて、困るのはパパ自身です。何があっても大丈夫なように、早い段階で家事はシェアすることをおすすめします」佐光さん)
パパのほうが収入が高い場合も、夫婦の立場は対等です。
「共働きでも、パパのほうが収入が高い場合、ママは『わが家の大黒柱はパパだから…』と遠慮してしまうことがあるかもしれません。でも、パパがフルタイムで働き、時には残業もできるのは、ママのサポートがあるからこそ。夫婦は対等なことは忘れず、家事はきちんとシェアするべきです」(佐光先生)
もちろん、家事だけではなく、育児もシェアする必要があります。
「子どもの育児担当者はママだけではありません。子どもの成長は楽しいもの。だから、ママだけが面白さを独り占めするのはもったいないです。それに、ママが1人で頑張ってしまうと、パパの経験値はいつまでも上がりません。子どもにも、そのスキルの低さを見破られてしまいます。子どものためにも、育児は2人で協力するといいですね」(佐光さん)
お話・監修/佐光紀子さん 取材・文/齋田多恵、ひよこクラブ編集部
「パパが担当する家事は、ママが苦手な分野を選ぶのもひとつの方法」だそうです。
たとえば、ママの手の届かない場所のふき掃除をする、庭の草むしりをするなどでもいいでしょう。家族年齢が上がると家事のやり方にこだわりが出てくる場合もありますが、若いファミリー場合はまだ柔軟です。早い段階からパパも巻きこみ、その家庭らしい家事シェアの方法を確立できるといいようです。
佐光紀子さん(さこうのりこ)
Profile
翻訳家、家事研究家。国際基督教大学を卒業。繊維メーカーや証券会社で翻訳や調査に携わったあと、フリーの翻訳者に。ある本の翻訳をきっかけに、重曹や酢などの自然素材を使った家事に目覚め、研究を始める。2021年、「なぜ妻は「手伝う」と怒るのか」 (平凡社新書)を出版。掃除講座や執筆活動を展開中。
なぜ妻は「手伝う」と怒るのか
妻はなぜ夫が「手伝う」とイライラするのか、夫はなぜ家事を「手伝う」と怒られるのか、という家事のトラブルをなくす解決策を提案している。(平凡社新書)