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【医師監修】赤ちゃん・子どもの発達性協調運動障害(DCD)とは?極端な不器用さ・運動音痴がサインの場合も【チェックリストつき】

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日本人の女の子紙切りハサミ (3 歳)
ziggy_mars/gettyimages

ボールを投げる・蹴(け)る、字を書く、縄跳びなどが非常に苦手、はさみでまっすぐ切れないなど、「極端に不器用な子」ととらえられてしまう赤ちゃん・子どもは、発達性協調運動障害(DCD)かもしれません。子どもの5~6%に見られる発達性協調運動障害(DCD)の特徴と適切なサポート方法について、発達障害研究の第一人者である、お茶の水女子大学名誉教授で小児科医の榊原洋一先生に聞きました。チェックリストも付いています。

体の動きがとてもぎこちない、手先を使ったこまかい作業がすごく苦手、といった子どもの中には、発達性協調運動障害(DCD)の子がいます。日本ではまだあまり知られていない障害なだけに、「練習や努力がたりない」などと不適切な対応をされたり、友だちにからかわれたりして、自分に自信をなくしてしまうことがあります。
発達性協調運動障害(DCD)の特徴と適切なサポート方法を知り、子どもが日常生活や集団生活で困らないようにしてあげることが大切です。

発達性協調運動障害(DCD)とは?

しょっちゅう転ぶ、うまく走れないなど、体の動かし方が極端に下手、はさみの使い方がいつまでもぎこちない、どんなに練習しても靴ひもが結べないなど、同年代の子どもと比べて不器用さが際立っている場合は、発達性協調運動障害(DCD)かもしれません。子どもの中で5~6%はいると考えられています。

「発達障害」は生まれつきの脳機能障害の“総称”

まず大前提として理解しておきたいのは、「発達障害」は単独の障害の診断名ではなく、基本的には注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)という3つの代表的な障害の総称です。また、発達性協調運動障害(DCD)、チック症、吃音(きつおん)は「発達障害に近縁の障害」と考えられています。
なぜ「発達障害」という総称で呼ばれるのかというと、どれも幼少期から症状がみられる、生まれつきの障害だからです。以下で「発達障害」と表す場合は、診断名ではなく、これらの障害の総称として使っています。

「協調」とは、さまざまな動作を適切に行うために、体の各部の動きをまとめる能力

「協調」とは、視覚・知覚、触覚、固有覚(※)などさまざまな感覚の情報をまとめ、運動の目的などに基づいて体の各部分の動きの速さ、強さ、タイミング、正確さ、姿勢やバランスのコントロールなどを、適切にコーディネートする能力。日常生活や集団生活で行う多くの動作に欠かせない、重要な脳機能の1つです。

※固有覚は、主に以下の4つの感覚に分けられます
位置覚/体の各部分の位置を把握する
運動覚/動いているときの加速度や方向を把握する
抵抗覚/体に加わる抵抗を把握する
重量覚/物の重さを感知し、その物を持つときの力の入れ具合を調整する

「協調」は、生活するために行う多くの動作に必要不可欠なものです

「協調」は大きく4つの能力に分けられ、これらの能力は、体育やスポーツだけに限らず、日常生活のさまざまなシーンで必要になります。

●協調の4つの能力

粗大運動/走る、投げる、ジャンプするなど、体を大きく動かす運動
微細運動・書字/道具を使いこなす、字を書くなどこまかい手先の作業
手と目の協応/ボールをキャッチする、ラケットやバッドで打つなど
姿勢制御・姿勢保持/よい姿勢にしてそれを保つ

手と目の協応とは?
目から取り入れた情報に対して、手を使って適切に処理すること

<日常生活で協調の能力が求められるシーン例>
着替え/ボタン、ファスナー、ホック、スナップの開け閉め、靴ひも結び
食事/食べ物をかみ砕き飲み込む、スプーン・フォーク、箸を使う
遊び/塗り絵、折り紙、パズル、積み木、ビーズ遊び、ゲーム機の操作、三輪車・自転車に乗る、ダンス、縄跳び、平均台を渡る
道具を使う/はさみ、定規、コンパスなどの文具を使う、楽器を操作する
そのほか/物を落とさずに持つ、人や物にぶつからないで歩く、姿勢よく椅子に座る など

「協調」の発達に極端な問題がある場合、「発達性協調運動障害(DCD)」と判断され、子どもの約5~6%に見られます。これは注意欠陥多動性障害(ADHD)とほぼ同等で、自閉症スペクトラム障害(ASD)の約1%よりかなり多い割合。子どもによく見られる発達障害の1つなのです。
また、発達性協調運動障害(DCD)は、注意欠陥多動性障害(ADHD)の約30~50%、自閉症スペクトラム障害(ASD)の約80%と共存することも特徴です。

発達性協調運動障害(DCD)の特性は乳児期から見られ、大人まで持ち越すことがあります

発達性協調運動障害(DCD)の子どもは乳児期からその特徴が見られるため、赤ちゃんのときから「なんだか育てにくい」と感じるかもしれません。一般的に発達性協調運動障害(DCD)の子は、どのような経過をたどるのか知っておきましょう。子どもへの適切な対応に役立ちます。

乳児期は授乳時によくむせる、寝返りやはいはいがなかなかできないなどが見られます

DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では発達性協調運動障害(DCD)について、「症状の始まりは発達段階早期である」と説明しています。実際、発達性協調運動障害(DCD)の子どものママやパパは、乳児期(0才~1才)に「うちの子、発達が遅い?」「なんだか動作がぎこちない?」などと不安や育てにくさを感じることが多いです。
しかし、日本国内では発達性協調運動障害(DCD)の認知度がまだ低いため、乳幼児健診などでは何の指摘もされないことがあります。

●乳児期に見られる発達性協調運動障害(DCD)の特徴チェックリスト

□飲み物や食べ物を飲み込むのが苦手・むせることが多い
□筋緊張が低下している(体がだらんとしている)
□寝返りがなかなかできない
□座っている姿勢が不安定、または、座った姿勢に左右差がある
□はいはいがなかなか上手にならない、はいはいのしかたに左右差がある
□なかなか歩けるようにならない、歩行の動きに左右差がある
□重心が不安定

乳児期に上記のような特徴が見られた場合は、かかりつけの小児科などに相談しましょう。発達性協調運動障害(DCD)以外に、運動まひなどの可能性もあります。

幼児期はさまざまな動きがぎこちなく見え、「不器用さ」も目立ってきます

幼児期(2才~5才)は運動技能を身につける速さにかなりの個人差があり、また、ほかの原因(筋肉や神経の病気)について十分に確認できないこともあるため、5才前に発達性協調運動障害(DCD)と診断されるのはかなりまれです。
しかし、幼児期に見られる特徴があるので、子どもが遊んでいるときなどに様子をよく観察しましょう。

●幼児期に見られる発達性協調運動障害(DCD)の特徴チェックリスト

□塗り絵がきれいに塗れない
□スプーンやコップなどがうまく使えない
□階段の上り下りが下手
□三輪車に乗るのが下手
□ボールや遊具でうまく遊べない
□ジャンプができない
□滑舌が悪い

学童期は学校生活で苦労することが多く、自己肯定感が下がりやすい

小学校に入ると、授業を受けたり集団生活を送ったりする中で、 より高度な「協調」が求められるシーンが増えます。体を思うように動かせないことから、粗大運動、手と目の協応を必要とする遊びやスポーツ(ダンス、球技、縄跳び、鉄棒など体育の授業で行うような運動)をしたがらず、体を動かす機会が減る傾向になります。
最近では、協調と算数をはじめとする学習の困難さとの関係も示唆されており、勉強面でも苦戦することが考えられます。

●学童期に見られる発達性協調運動障害(DCD)の特徴チェックリスト

□体育の授業が非常に苦手
□字がうまく書けない
□文具や楽器を使いこなせない
□授業中にきちんと椅子に座っていられない(姿勢が保てない)
□決められた時間内に着替えたり給食を食べ終えたりできない

また、苦手感や身体活動の減少により、多くの問題につながることが多いと報告されています。

●発達性協調運動障害(DCD)の困難から、学童期に現れやすい問題

情緒的・行動的な問題
・自尊感情や自己肯定感の低下
・学習意欲の低下
・いじめ
・不登校 など

身体的な問題
・肥満 など

学童期(6才~15才)の発達性協調運動障害(DCD)の子どもに見られる特徴を理解し、学校生活を楽しく送れるようにサポートすることが大切です。

青年期以降の二次障害を防ぐためにも、子どものころの治療・支援が重要

DSM-5((精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では「長い期間においては改善がみられるかもしれないが、50~70%の子どもで協調運動の問題が青年期になっても続いている」とされ、大人になっても発達性協調運動障害(DCD)がかなりの頻度で残っていることがわかっています。そして、それが社会参加、職業選択、自尊感情の低下などに影響し、うつ病や不安障害などの二次障害につながってしまうことが知られています。

●青年期・成人期に見られる発達性協調運動障害(DCD)の特徴チェックリスト

□ひげそりや化粧がうまくできない
□料理がてきぱき作れない
□自動車の運転ができない
□パソコンのタイピングができない

青年期以降の二次障害を防ぐためにも、子どものころからその子に合った治療や支援を行い、「自分にはできない…」を「自分にもできる!!」に変えて、自己肯定感を高めていくことが重要になります。

発達性協調運動障害(DCD)の子どもに必要な支援とは?

運動や手先を使った作業が苦手なことで日常生活や集団生活に支障が出るようになったら、その子が何にいちばん苦労していて、その点をどうフォローすればいいか、専門家とともに考える必要が出てきます。

ママやパパができることは?

日本ではまだ発達性協調運動障害(DCD)の認知度が低いため、発達性協調運動障害(DCD)の子どもの行動を「なまけている」「やる気がない」「努力や練習がたりない」「親のしつけのせい」などと誤解されることが少なくありません。その結果、からかいやいじめの対象になったり、効果のない練習を何度もさせられたりすることがあります。

まず頭においてほしいのは、子どもの極端な「不器用さ」はなまけや努力不足などではなく、脳機能の発達の問題であるということです。
協調の問題は、子どもの認知、学習、情緒、社会性の発達、自尊感情に大きな影響を与える可能性があるため、協調のどの要素を子どもが苦手にしているかを把握しましょう。そして医療や療育の専門家とよく話し合い、その子に必要な治療・支援を受けられる環境を整えることが重要です。

理学療法士、作業療法士などの専門家が不器用さの改善のサポートを行うことがあります

協調の課題や子どもの困り具合に合わせて、理学療法、作業療法、言語療法などの療育プログラムを組み合わせてサポートを行うことがあります。
国際ガイドラインでは、発達性協調運動障害(DCD)の治療・支援は、子ども自身が「できるようになりたい」と望んだことを課題として取り組む「活動指向型・参加指向型アプローチ(課題指向型アプローチ)」が有効とされています。
また、粗大運動が微細運動を支えているので、姿勢をコントロールしたり保持したりするのに必要な体幹や、上肢から肩への安定性を高める必要があり、「身体機能指向型アプローチ」も適切に組み合わせて行うことが欠かせません。

発達性協調運動障害(DCD)の子どもは、体のさまざまな機能を協調させて行う運動や動作が苦手で、周囲の子どもたちと同じようにできないことが多いかもしれません。しかし、楽しく運動や遊びに取り組める機会をたくさん作り、さらに、苦手を改善するための専門的なサポートを受けることで、「できない」を「できた!」に変え、自信をつけさせていくことが大切です。

取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

監修/榊原洋一先生

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