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感染症の検査、するときとしないときがあるのはどうして?医師の判断基準とは【小児科医】

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医師が検査アジアの新生児の聴診器の病院
※写真はイメージです
alice-photo/gettyimages

新型コロナウイルス感染症もまだ油断できませんが、秋冬、空気が乾燥する季節になると、そのほかの感染症の流行も心配になります。
子どもに発熱や鼻水、せきなどが出て受診したとき、「何の病気なのか検査をしてほしい」と考えるママやパパも多いのではないでしょうか。検査をするかしないかの判断基準はどのような根拠からなっているのか、帝京大学医学部附属溝口病院小児科の黒澤照喜先生に聞きました。

ママやパパも知っておきたい「感染の3要素」とは?

――子どもに風邪症状、とくにいつもより少し重い症状があってママやパパが検査を希望した場合でも検査が行われないことがあります。医師が検査の判断をする基準はあるのでしょうか。

黒澤先生(以下敬称略) 医師が感染症を診断するときには3つの要素で考えます。
1.病原体
2.感染の部位
3.感染者の特徴
です。たとえば、子どもが風邪症状、いわゆる鼻水やせき、発熱がある場合は
2.呼吸器感染症(風邪・鼻炎・気管支炎・肺炎)
3.赤ちゃんや子ども
ということです。そのうえで1.の病原体を考えていきます。
子どもがかかってこの症状になるウイルスは何か、と考えていくことになりますが、子どもがかかりやすい風邪のウイルスは、10種類ほどあります。

検査にはメリットだけでなく、デメリットもある

――「感染の3要素」から疑わしい病気が挙がったあと、医師はどのように判断していくのでしょうか。

黒澤 検査にはメリットだけでなくデメリットもあります。医師はその2つを比べて判断していきます。
まずメリットは、病原体が確定できることです。
1)治療方針が決まる
2)症状の変化に警戒しやすくなる
3)周囲への感染予防ができる
4)ママやパパが安心できる
といった利点があります。
一方、デメリットには
1)検査費用が発生することがある
2)検査結果が正しくない場合もある
3)検査を受ける子どもにストレスがかかる
といったことがあります。
また、検査をしなくても結果が容易に予想できてしまうこともあります。

たとえば、インフルエンザがまったく流行していない時期に、発熱して受診した子どもがインフルエンザである可能性は低いです。逆に、ほかの同居家族全員がインフルエンザで、子どもに症状が出れば十中八九インフルエンザと考えていいでしょう。もちろん、前者であればインフルエンザ流行の初期を見逃してしまう可能性、後者であればほかの病気を見落とす可能性はあるものの、検査を行わずに診断・治療をすることもよくあります。

周囲への影響が大きい感染症は迅速検査をすることが多い

――インフルエンザや溶連菌感染症、RSウイルスなど、検査する病気は決まっているように感じます。
黒澤 感染症は、周囲への影響が大きく検査が簡単ですぐに結果がわかるものと、周囲への影響はそれほど大きくなく、検査も研究室レベルでないとしにくいものの2つに分けられます。

【影響が大きく・検査がしやすいもの】
・RSウイルス
・インフルエンザウイルス
・溶連菌感染症
・新型コロナウイルス
RSウイルスは、新生児・乳児期の急性細気管支炎で、小児期以降は鼻風邪で終わることが多いです。保育園などで流行することが多く、最近は夏に流行し、今夏は大流行しました。

新型コロナウイルスは、小児期は症状が弱い、もしくは無症状のことも多いですが、変異株によっては今後症状が変わる可能性あります。もちろん、現時点でも社会的インパクトが大きい感染症です。

【影響は比較的小さく・検査も原則できないもの】
・パラインフルエンザウイルス
・ライノウイルス
・(新型ではない)コロナウイルス
などです。

――症状などから【影響が大きく・検査がしやすいもの】であることが疑わしい場合には検査がされていて、検査がされないのはそれ以外ということでしょうか。

黒澤 検査がしやすいものでも、前述したメリットとデメリットを考慮しながら検査するかしないかを判断します。
たとえば、【影響が大きく・検査がしやすい】溶連菌感染症が疑わしいというとき、メリットとデメリットを考えると…。

1)治療方針が決まる
2)合併症に警戒しやすくなる
3)周囲への感染予防ができる
4)たいていの場合は検査結果が正しく出る
溶連菌感染症の検査は発症初期から検出できることが多く、間違った結果になりにくく、まれではありますが治療をしない場合、心臓や腎臓にトラブルを起こすことがあります。

以上を考えると、検査したほうがいい、という判断になるわけです。

保育園から検査を求められた場合はどうするか

――検査をするかしないかは、さまざまな要件を考慮しながら決められるとのこと。では、保育園など外部から検査を求められるたらどうしたら?

黒澤 そのようなお話があることを医師に伝えてください。ただし、たとえば『保育園でRSウイルスが流行中。2才で発熱・せき・鼻水が出たため、保育園から検査してくるように指示された』といった場合、正直困ることもあります。
理由として、検査をしても、
1)治療方針が決まらない/RSウイルスの特効薬はありません。
2)症状の変化に警戒しやすくなるわけではない/一般的にRSウイルスで重症化するのは赤ちゃんで、2才ですと鼻風邪で終わってしまうことも多いです。
3)周囲への感染予防ができるわけではない/この症状ならばRSウイルスでなくとも他人にうつる恐れがあり、保育園はお休みになるかと思います。
4)検査費用が発生する/1才以上でRSウイルスの検査をする場合、原則、自費診療になり検査費用が高くなります。
5)検査を受ける子どもにストレスを与える
上のようなことを考えると、子どもに痛い思いをさせてまで検査をすべきかどうか、小児科医としては迷います。

ここまでお話したことは、あくまでも原則で、実際には、各先生や医療機関の方針、患者さんの症状やママやパパの心配具合などによって、柔軟に運用されていると思います。大切なのは、検査をする・しない・保留することが子どものためになるかどうかをママやパパと医師がいっしょに考え、子どもを治していくことだと思っています。

お話・監修/黒澤照喜(くろさわてるよし)先生

取材・文/岩崎緑、ひよこクラブ編集部

検査がないとつい不安になってしまいがちですが、このようにいろいろな理由から、検査をしないほうがいいこともあるとのことです。ママやパパは医師の診断を受け止めながら、わからないことや不安な気持ちがあればしっかり伝えていくことも大切です。

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