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たたく・つぶす・混ぜるからチャレンジ!2才から始める料理は「食育」にも好影響【専門家】

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お菓子を作る女の子
※写真はイメージです
yamasan/gettyimages

おうちで過ごすことが多くなった今、親子で取り組む台所仕事が子どもの成長する力を伸ばすと注目されています。自宅で子どもと一緒に台所仕事を始めるときのポイントを、2才からの料理教室「こどもキッチン」を主宰する石井由紀子先生に聞きました。

台所仕事のポイントは、子どもに期待しないこと

――子どもがお料理をやってみたい!と言い始めたら、どんなことから始めたらいいでしょうか。小さな子どもと一緒に台所仕事をするときのコツと心構えはありますか?

石井先生(以下敬称略) 2〜3才くらいから始めるなら、料理のプロセスのうち「たたく」「つぶす」「ちぎる」「混ぜる」など包丁を使わないレシピからスタートしてみましょう。そのとき、普段から子どもの興味がある、好きで繰り返している動作を観察しておくことがポイントです。

「新聞紙をちぎるのが好きだから、のりをちぎるのができそうだな」とか、「棒でたたくのが好きだから、きゅうりをすりこ木でたたけそうだな」というふうに。子どもの興味を見ずに本に書いてあることをやらせてみても、まったくのってこないものです。

そして次に大事なのは子どもに「期待しない」こと。子どもがやるかやらないかはわからないな〜、くらいの心構えでいましょう。子どもの目的は「料理を完成させること」ではなく、「たたく」「ちぎる」などの動作そのものをやることです。やりたいことをやって、子どもが「できた」と満足することが大切です。途中で「やっぱりやらない」のもOKです。やらないことを選んだら「またやりたくなったら言ってね」と伝え、お母さんが代わりにやってしまいましょう。

――台所仕事を始めるとき、どんな準備が必要ですか?

石井 まず必ず必要なものは、安定した踏み台か低いテーブルです。台所は子どもの身長に合わないので、子どもが安全に見たり作業したりできる、安定した踏み台を用意しましょう。

台所が危ない場合は、リビングにローテーブルを用意すれば、そこで作業を行うことができます。そして、トング・マッシャー・すりこ木などの道具は、子どもの手のサイズに合うものを選びましょう。

本物の道具を用い、ゆっくり・黙って・やってみせる

包丁は子どもの手に合うサイズの本物を使用する

――子どもへの教え方のポイントを教えてください。

石井 伝え方のポイントは「ゆっくり・黙って・やってみせる」こと。2〜3才くらいでは、まだ聴覚からの情報と視覚からの情報を同時に処理できないので、視覚情報だけにしたほうが伝わりやすいです。さらにこの時期は目で見たことを吸収して再現できる能力が高い時期でもあるので、黙ってやってみせるとすぐに自分でやりたがります。
また、大人がゆっくりやっているつもりでも、子どもにとっては早すぎて見えないことがあります。「物をつまむ」「葉をちぎる」など動作を見せるときは2〜3秒かけて見せてあげるといいでしょう。

とはいえ、子どもは料理教室では先生のことをよく見ますが、家でママやパパが「見ててね」と言っても、あまり見てくれず教えることにつまずいてしまう、という声もあります。そんなときは、わざわざ教える機会を作らなくてもOK。子どもは本当に興味のあることはじーっと見てくるものです。たとえば、台ふきをしているときに子どもの視線を感じたら、そのときがチャンス。台をふく動作をゆっくりやって見せてあげてください。それだけでも子どもは見て学習するものです。

――子どもと一緒にお料理するとき「ママみたいに包丁を使いたい」と言われても、心配な場合はどうすればいいですか?

石井 台所仕事に慣れてきて、手指の動作が段階的に上達してきている子は、3才くらいから包丁を使いたがるようになります。子どもが刃物を使いたがったら、手のサイズに合う本物の道具を選びましょう。私の教室で使っているのは、大人用の刃渡り10.5cmくらいの小ぶりの包丁です。

心配だからと子ども用の切れない包丁やおもちゃの包丁を使わせることは、かえって危険。包丁の刃は触っても切れない、と間違えて学んでしまうからです。すると、本物の包丁を使うとき、包丁についた野菜を取ろうと刃の側から握ってしまうことがあります。これは大けがのもと。だから与えるなら最初から本物を使いましょう。心配なら、刃物を使い始めるのはゆっくりで大丈夫。小学生になってからでも十分上達します。

刃物と火気の扱いは大人が主体になって「包丁は6才になってからね」「火のスイッチは押してはいけません」など、断るときははっきり断りましょう。

台所仕事の経験は将来の食生活の基礎になる

鮭とにんじんときゅうりの押し寿司を作ったよ!

――親子で楽しく台所仕事を続けるためのコツなどはありますか?

石井 続けるためには頑張らないのがコツです。ダイエットと同じですね(笑)。月1回だけでも継続して長期間やるほうが、子どものできることが増えると思います。大切なのは、子どもにとってキッチンに立つことが当たり前になる感覚です。これがあると、学童期以降もママやパパが病気などピンチのときに、必要であればやってくれるようになる人が多いですよ。

――幼少期から台所仕事をすることで、「食育」という視点でも、食事を作る・食べることが好きになったり、食材の好き嫌いが少ない子になったりすることにつながるのでしょうか?

石井 子どもの偏食をなおしたい、と教室に来る人もいますが…子どもは今日や明日で急には変わりません。好き嫌いを無くそうと思ったら、思春期くらいを目標にしましょう。
幼少期から料理をすると、野菜などのにおいをかいだり、味見をしたりする体験ができます。その経験が、やがて小学校高学年くらいになり味覚が変わってきたときに、それまでは苦手だった食材を食べる準備になります。
そして小さいときは嫌いな食材も、目の前でママやパパがおいしそうに食べていたら、いずれ「ちょっと食べてみようかな」とチャレンジするきっかけになります。子どもが食べないからと食卓から苦手な食材を消さないことも大事です。

また、子どもの味覚はとても敏感。教室でも、3〜4才くらいの子に塩加減を決めてもらうと、スープがすごくおいしくなります。だから味見はぜひお子さんにやってもらうといいですよ。ちょうどいい味を自分で決める体験ができるのは、台所仕事ならでは。それが必要以上の塩分を取らない、といった健康的な食生活を送る基礎につながります。

お話・監修・写真提供/石井由紀子(いしいゆきこ)先生

取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

「料理を教えよう」と身構えてうまくいかないと大人はがっかりしてしまいますが、大切なのは期待しないこと。子どもが興味を持った作業を子ども主体でやらせてみるという心構えなら、大人も気楽に取り組めそうです。

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