【専門医に聞く】インフルエンザの予防接種は赤ちゃんも受けるべき?
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10月ごろから始まるインフルエンザの予防接種。今年の秋冬も、受けておきたいですね。とはいえ、「受けたところでかかってしまうことも多い」という声も。実際、インフルエンザワクチンには、どの程度の予防効果があるのでしょうか? ほかの予防接種で忙しい赤ちゃんも、インフルエンザの予防接種を受けたほうがいい? …そんな疑問を、インフルエンザ感染症を専門としている小児科医の廣津伸夫先生に伺いました。
インフルエンザワクチンは接種したほうがいいの?
インフルエンザワクチンは、いろいろな理由から、100%発症を抑えるまでの効力を発揮することができないのは事実です。しかし、実際に接種した人たちのデータを検証している廣津先生によると、「接種をすることで、重症化していないことは確か」だそうです。
ワクチン接種した赤ちゃんは重症化しにくい
インフルエンザワクチンは、6カ月を過ぎれば赤ちゃんでも接種が可能です。しかし、ほかの予防接種のスケジュールなどもあって、インフルエンザの接種に悩むケースも多いようです。けれども、「6カ月を過ぎたら、ぜひワクチン接種を」と、インフルエンザに詳しい廣津先生は警告を発します。
「流行時に外出をしなければ大丈夫、と思っている人も多いかもしれませんね。しかし、赤ちゃんの感染は、パパからうつるケースがとても多いのです。ママは赤ちゃんにうつさないように万全の注意を払うのでしょうけれど、パパはつい油断してしまうんですね。赤ちゃんがインフルエンザにかかると、肺炎などを併発する可能性が高くなります。でも、ワクチンを接種しておけば、そこまで重症化せずにすみます。ぜひ、6カ月を過ぎたら赤ちゃんもインフルエンザワクチンを接種してください」
ワクチン接種をしても、ウイルスを持ちこまないよう予防を
「赤ちゃんは免疫機能が未発達なので、そもそも、抗体ができにくい傾向があります。そのため、ワクチンを接種しても、感染してしまう可能性が高いといえるでしょう。とくに、現状のインフルエンザワクチンには、一度インフルエンザにかかったことがある人には効果が高いけれど、かかったことのない人には、大人でも効果が弱くなるという特徴があります。そのため、残念ながら、一度もかかったことのない子では、さらに発症を防ぐほどの効果は期待できないとはいえます。ですから、予防接種をしても、流行時には不必要な外出をしない、大人からうつらないように家族で手洗い・うがいを行うなどで、予防をしてください」
空気中のウイルスはさほど長く生きられない
インフルエンザウイルスは、感染者の唾液(だえき)や痰(たん)、鼻水などに含まれているため、くしゃみやせきで飛び散ったものが空気中に舞い、それがほかの人の体内に入ってうつっていきます。飛び散った唾液(だえき)が衣類や床、壁などにつくと、そこを触った人の手からも感染するのでは…と心配になりますが、
「インフルエンザのウイルスはそこまで長生きはできません。ですから、かかっている人の衣類に触らせないとか、かかった子が使ったおもちゃを除菌するなどの処置はしなくても大丈夫です」と廣津先生。ちなみに、いちばん効果があるのは、「不織布でできたマスクをつけること」だそう。流行時の外出には、予防用のマスクは欠かせないですね。
インフルエンザによる重症呼吸器障害のこともあり、インフルエンザの不安が高まっている昨今、6カ月を過ぎた赤ちゃんは、できる限りワクチン接種をしておくことが大事といえそうですね。
(取材・文/ひよこクラブ編集部)
■監修/廣津伸夫先生
1972年東京慈恵医科大学卒業。84年から神奈川県川崎市にて廣津医院を開院。感染症・インフルエンザが専門。多くの論文や、国際学会での発表があります。