学業が優秀な子ほど好奇心旺盛!2歳からの熱中体験が子どもの脳を育てる【専門家】
乳幼児期は、本というと“絵本の読み聞かせ”と思いがちですが、脳の発達を促すには2歳ごろから図鑑を見るのもいいそうです。小児の脳発達に詳しい、東北大学加齢医学研究所教授 瀧靖之先生に話を聞きました。
幼少期からの読書習慣は、学業成績とも関係が! 2歳になったら図鑑でもOK
「絵本の読み聞かせって大変」と思っているママやパパもいるようです。なかには「上の子に絵本を読んであげていると、下の子が泣き出して中断することがしばしば。そうすると上の子の機嫌が悪くなってしまうので、絵本の時間がゆううつです」「せっかく絵本を読んでいるのに、落ち着いて聞いてくれない!」と悩むママ・パパたちも。そんなときは図鑑に変えるのも一案です。
――「絵本の読み聞かせって大変」と感じているママやパパもいるようですが、先生は乳幼児期の絵本の読み聞かせをどのように考えていますか。
瀧先生(敬称略) 短時間でもいいので、乳幼児期から絵本の読み聞かせなどで読書習慣をつけることは、とてもいいことです。3~4歳で読書習慣がある子の80%は、その後の学業成績が優秀というデータもあります。(※1)
また読書習慣があると、語彙(ごい)力やコミュニケーション力が高まるほか、将来の認知症リスクを下げることもわかっています。私は「読書が好き」というのは、子どもの力を伸ばす最大の武器だと思います。(※2)
ただし読書習慣は楽しく!が大切です。絵本の読み聞かせがママやパパのストレスになっていたり、負担を感じるならば2歳ごろからは図鑑にしてもいいでしょう。
――図鑑だと読み聞かせたりしなくてもいいのでしょうか。
瀧 動植物などの図鑑の写真を眺めて、親子で「きれいだね~」「大きいね~」など感想を言い合うだけでも構いません。親子で楽しく図鑑に親しむことが何より大切なので“子どもに知識を与えよう”と意気込まなくても大丈夫です。
――乳幼児期から読書習慣をつけるといいとのことですが、読書習慣はどのようにつけるといいのでしょうか。
瀧 夜、寝る前に親子で図鑑を見たり、子どもだけで絵本や図鑑が楽しめるなら、ママやパパは子どもの隣で別の本を読んでも構いません。5分でもいいので、親子で読書を楽しむ時間を作ってください。子どもは親のマネをするので、親が本を読まずスマホなどを見ていると、子どもも本に興味を示さなくなります。
学業成績が優秀な子ほど好奇心旺盛。 幼児期から好奇心を伸ばすかかわりを
瀧先生は幼少期、最も伸ばしたほうがいいのは好奇心だと言います。好奇心と学業成績には深い関係があるようです。
――図鑑を読む子は、学校の成績がいいというイメージがあるのですが…。
瀧 東大生や医学生に子どものころの話を聞くと「図鑑を読んでいた」という子が実に多いです。これは幼少期から図鑑を読むことで、単に知識を詰め込んだということではありません。実は、学業成績が優秀な子ほど好奇心旺盛です。勉強ばかりにのめり込むのではなく、スポーツやアウトドア、音楽、読書など趣味が多いです。
私は幼児期は、好奇心をはぐくむことが最も大切だと考えています。好奇心が旺盛な子は、さまざまなことに興味をもてるので、自分からどんどん道を切り拓いて自己実現をしていきやすくなると考えています。
自己実現ができると、自己肯定感が高まります。将来の学業成績や仕事などにもプラスの影響を与えます。
――子どもの好奇心をはぐくむには、動物、植物、昆虫、宇宙などいろいろなテーマの図鑑に親しんだほうがいいのでしょうか。
瀧 いろいろなテーマの図鑑に親しんでもいいのですが、なかには「電車」「宇宙」「恐竜」など、1つのテーマにとことんこだわる子もいます。こうした熱中体験が好奇心を伸ばすには必要です。
熱中体験ができる子は、ゆくゆくいろんなことに興味をもち、熱中して取り組める子になります。その中には、勉強も入ってくるでしょう。ママやパパには、幼少期の熱中体験を温かい目で見守ってほしいと思います。
――子どもが熱中するならキャラクター図鑑でもいいのでしょうか? また図鑑はシリーズでそろえたほうがいいのでしょうか。
瀧 たとえば公園や広場に行ってちょうやバッタを探したりして「白いからモンシロチョウかな?」など、図鑑で得た知識と本物をリンクさせることで、子どもの好奇心は刺激されます。そのためキャラクター図鑑より、動植物などの図鑑のほうがいいでしょう。
また図鑑をシリーズでそろえてもいいのですが、子どもの手の届かない本棚にしまっておくのはもったいないです。
1冊でも2冊でもいいので、子どもが好きなときに手に取れる場所に図鑑を置いておくようにしましょう。
取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
瀧先生も、幼少期から図鑑が好きだったそうです。きっかけは幼稚園のとき本屋さんで1冊図鑑を買ってもらったことだと言います。自分から手に取って繰り返し読む姿を見て、お父さんやお母さんは2冊目、3冊目と図鑑を買ってくれたそうです。「うちの子には図鑑は早いかも」「図鑑には興味を示さないかも…」と決めつけず、図鑑に触れるきっかけを、まずは作ってあげてほしいと瀧先生は言います。
※1 Journal of Educational and Developmental Psychology. 2017 7(2):87
DOI:10.5539/jedp.v7n2p87
※2 Int Psychogeriatr. 2021 Jan;33(1):63-74.
doi: 10.1017/S1041610220000812. Epub 2020 Jun 5.
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