中学受験直前! 学校を休みたくないという子どもの意思を尊重した結果…【専門家】
今回のテーマは、中学受験直前の親のサポートについてです。
先輩ママはどのようなことをしたのか、仕事をしている場合の両立はどうしたのかなどの実態を口コミサイト「ウィメンズパーク」のママたちの声から紹介するとともに、受験直前の親のサポートのポイントを、子どものやる気を引き出す塾・プラスティーの塾長八尾直輝さんに聞きました。
共働き家庭のバックアップ態勢は家庭それぞれ
共働き家庭のママから、受験本番ウィークはどのくらい仕事を休むものなのか、心配の声が上がっています。実際に中学受験をした子どもを持つ先輩ママの声をご紹介します。
■ 1週間の休みの予定を立て、あとは結果次第
「フルタイム勤務の母です。受験ウィークは、夫婦で予定を調整しながら休みをとりました。付き添いは夫が、合格発表などの手続きは私という分担でした。地理・鉄道等にくわしい夫のほうが何かトラブルに遭ったとき、対応ができると思ったからです。
会社には、夏頃には受験があるため2月は迷惑かかることを伝えてあり、仕事は前もっていろいろと調整し、終了後には上司・同僚には菓子折りをもってお礼に行きました。
また、子どもの1月中の学校をどうするかは各ご家庭の判断かと思います。我が家は2週間前から休みました。その理由はインフルエンザ予防と競技大会での怪我予防です。インフルよりも怪我で右手が使えなくなることのほうが怖かったので」
■ 夫単身赴任中のため、1.5日休んで1人で乗り切りました!
「フルタイム正社員で働いています。当時、夫は海外赴任中だったため、1人で乗り切りました。
1日目は本命だったので、1日休みました(午前と午後の2校受験)。2日目は午前休をもらい、朝は受験校まで一緒に行き、帰りは子ども1人で帰らせました(私はそのまま、1日目の合否を見に行き、振込手続きして午後から仕事)、3日目も朝、門まで見送り、私はそのまま遅刻で出勤。そのため、休んだのは1.5日です。
1月に学校を休むかですが、我が家は前日のみ休む予定でしたが、クラスでインフルエンザが大流行してしまい、大事をとって1週間前から休みました。
ちなみに1月の休み中はずっと塾に行かせていて、10時間近く勉強してると思ってたんですが、最近になって『そんなに1日中集中できる力は小学生にはないよ。自習室で昼寝したり、のんびりしてたわー』と言われました。一応、第1希望は合格しましたが、衝撃の告白でした」
■ 土日受験もあるので、2日休む予定です
「私はフルタイム勤務で、2日休む予定でした。
うちの地域は1月受験で土日祝も実施するので、実質的に仕事を休むのは初日と連休明けの2日くらいかなと思っています。正月明けで忙しい場合は、送ったら出勤し、迎えは夫に任せる準備も。
12月以降は、インフルエンザも心配です。受験も大事ですが、思い出作りもしっかりしてほしいので学校最優先と思っていましたが、そんな余裕は難しいですね」
■ 我が家は平常通りでしたが、1週間休むという人も
「我が家はすべて平常通りの生活でしたが、みなんさんそれぞれですよ。3学期は、全く学校に登校しない子もいます。インフルエンザ予防の意味もあるでしょうし、塾で最後の追い込みをするため、という子もいるでしょう。
母親も休める人は休んでいます。フリーで仕事をしている方で1月は全く仕事を受けていないとおっしゃる方も。
我が家は『学校は休みたくない』と言う子どもの意思を尊重した結果、本番10日前くらいにインフルエンザに罹って出席停止ということに…。結果的に体調が回復してからの出席停止期間中は家で受験勉強をしていました。
私自身は、試験当日が偶然、仕事の休日と重なっていたため休むこともなく、直前だからと仕事をセーブすることもなく、普通に出勤していました。
試験当日は、朝は夫が会場まで送ってから出勤し、試験が終わる時間に私が電車で迎えに行きました。子どもの話では、学校で待機している保護者のために待機場所があったとのことで、ずっと待ってらっしゃった方もいるのだと思います」
■ 試験は大人が付き添うものなので受験回数分休むのでは?
「試験がある日は誰か大人が付き添うことになるので、保護者1名は少なくとも休暇を取る必要があるのではと思います。
学校によっては合格発表のあと、指定された2時間くらいの間に手続きを行うために出向かなければいけない所もあるので、そうなると付き添い担当と手続き担当の2名が休暇を取る必要が出てくるかもしれません。そのあたりのスケジュール詳細は受験予定校のホームページに出ていると思います。
私の勤務先では、試験の週にまるまる1週間休暇を取る方が多いです。結果によっては母親がお子さんを慰める傍らで父親が急遽追加出願先を探して受験料を振り込んだり、塾に出向いて先生に相談したりと、かなり大変だったという話も聞きました。
試験前は家庭により温度感がかなり異なると思います。サポートに徹するためにフルタイム総合職のお仕事を辞めた方もいます。
我が家はもともとインフルエンザ対応で1週間前から在宅勤務にする予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で1月はフル在宅勤務することにしました」
小学校を休む判断は親だけでせず、子どもの希望も必ず聞いて
みなさん、計画的ですね。今から準備するためにも、受験直前の親のフォローのポイントを子どものやる気を引き出す塾・プラスティーの塾長八尾直輝さんに伺いました。
「親の仕事をどうするか、とても難しいテーマですね。というのもご家庭の状況、受験のスケジュール、そして職場環境などが絡み合い、『最大公約数的な回答』をするのが難しいからです。
以下、『状況に応じて各ご家庭でご判断する』ということを前提に、考えるべきポイントを整理できればと思います。
まず考えるべきポイントは、『誰のために休むのか』というところです。『子どものために決まっているではないか!』という声が聞こえてきそうですね。でも本当にそれだけでしょうか。
家でつきっきりで見る必要があるとしたら、それまでやってきた勉強はなんだったのでしょうか。
主体性や自立心が育っていないのであればサポートは必要ですが、子どもは親の知らないところで大きく成長しているものです。『休む理由』が親の不安解消にすり替わっていないか、熟慮が必要だと感じます。
とはいえ、親のサポートは必要です。サポートは大きく2つに分けられます。
1つ目は、事務的なサポートです。
当日の移動や、事務手続き等は親のサポートが必須でしょう。特に首都圏はスケジュールがタイトです。発表された合否に応じて、複雑な対応が必要なご家庭も多いでしょう。あらかじめ様々な結果に応じた対応フローと、出願から入学までの手続きのチェックリストを作成しておきましょう。
特に当日の移動も親が付き添いできるとよいことが多いです。たとえ移動に慣れた子どもだとしても、緊張ゆえに思わぬミスが起こることを想定し、可能な限り大人が現地まで送迎をするのがいいと思います。
2つ目は、精神的なサポートです。
家庭は、子どもが不安を吐き出せる場所になるのが理想です。不安は不安以外の形として話題に上がることも多いものです。子どもが話し始めたら、『いつもの3割増』丁寧に聞くとよいでしょう。
その上で、精神面のゴールは『子どもが自覚をもって受験に臨むこと』だということも留意しておきましょう。
自覚をもって受験に臨むためには、入試に関わることを『自分ごと化』する必要があります。たとえば、学校を休むという判断をする際は、子どもと話し合い、親子の意見を出し合う機会をつくりたいものです。学校を休む・休まないの選択に正解はありません。どう判断するにせよ、子どもがある程度の納得感をもって『自分で決めたこと』と思えるように対話を重ねることが大人の責任だと思います。
子どもの自覚という意味では、『親が仕事などを犠牲にしている』ととってしまうような姿は子どもに見せるべきではありません。親が『何かを犠牲にしている』ことを子どもは鋭く察知します。そして、それは子どもの自覚を削ぐことに直結します。
仕事の調整等が親の大きな負担になるようであれば、無理してまで休みをとらないという選択も考えてもいいかもしれません。
中学受験の目的は、入学後の長く続く人生で、学び続ける礎を築くことです。自覚をもった子どもは、その後もそれぞれの環境でたくましく成長できるでしょう。もう20年以上前になりますが、私も中学受験生でした。当時は気付けませんでしたが、サポートに徹し、自分の主体性を尊重してくれた親への感謝は尽きません。
不合格を含め、自分で決めて自分で結果を受け止めるという経験は何にも変えがたい財産になったと感じます。
直前期は悩むことも多いかと思いますが、それぞれのご家庭がお子さんにとってよい判断をされることを心から願っております」
(お話/八尾直輝さん)
受験へのラストスパートの時期ですね。親子ともども体調に気をつけて、乗り切ってほしいと思います。
(取材・文/橋本真理子)
八尾直輝さん
PROFILE
勉強のやり方を教える塾「プラスティー」を創業、現在は取締役・塾長として、会社の経営、塾の運営全般に関わっている。共著に『子どものやる気を引き出すゲーミフィケーション勉強法』(講談社)、執筆協力に『中学生からの勉強のやり方』『図解 中学生からの勉強のやり方』(ともにディスカバー・トゥエンティーワン)がある。
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