親の過干渉が子どもをダメにする…!乳幼児期から控えていかないと大変なことに。小児脳科学者が警鐘
乳幼児期は、親子関係の基礎を作る大切な時期。しかしかわいさ余って、過干渉などになることも…。小児脳科学者 成田奈緒子先生に、乳幼児期から意識したほうがいい子どもとのかかわり方について聞きました。
本音と建前のダブルメッセージが、子どもとの関係を壊す
成田先生は、最近の子育てで気になることの1つに、親のダブルメッセージがあると言います。
――成田先生は、個別相談などでもさまざまな親子関係の悩みに対応しています。最近、気になる親子関係はありますか?
成田先生(以下敬称略) たとえば昭和の時代は、「いい高校に行って、いい大学に入って、いい会社に行けば一生安泰だから、頑張りなさい!」とストレート伝えて、親の価値観を子どもに刷り込んでいました。
しかし今は「〇〇くんが幸せなら、ママ(パパ)はそれでいいと思うよ」と言いながらも、親が敷いたレールを走らせようとするので、子どもからしたら矛盾を感じます。本音と建前があるダブルメッセージを子どもに伝え続けながら子育てをしていれば、子どもは親に不信感を募らせます。子どもは意外と敏感で、5歳ごろから親のダブルメッセージに気づいています。
いい子ほど危険! 親の過干渉が、子どもをダメにする
ダブルメッセージのほかに注意してほしいのは親の過干渉。乳幼児期から、親が意識して控えていかないと大変なことになるケースも…。
――先生は「ほったらかしが子どもを伸ばす」とも言っていますが、この「ほったらかし」とはどういう意味でしょうか。
成田 放任ということではありません。子どもの様子を見ながらも、自由に泳がせてあげることです。これは乳幼児期から意識してほしいことです。親が手を出すのは、本当に必要最小限でいいんです。転びそうになったとき、親がいつも手を出して転ばないようにしていれば、転ぶ経験がないまま育ち、子どもはいつか大けがをします。これは子育て全般に言えることです。
――ほったらかさないと、子どもは伸びないのでしょうか。
成田 親が過干渉になると、伸びないどころかダメになってしまう場合もあります。
たとえば私のところに個別相談に来た親子の中には、勉強もできて、バレエが上手な子がいました。小学生のときに、有名なバレエ教室に入ることができたのですが、自宅から遠いので、お母さんと子どもだけで教室の近くに引っ越して、学校も転校しました。お母さんから話を聞いていると、子どもにかける思いがとにかく強いです。お母さんの人生のすべてを賭けている感じです。
しかし子どもは、急な環境の変化に心も体もついていけず、友だちとも離れてしまい、不登校気味になって、けがをしてバレエも思うようにできず…。どんどん自分に自信を失ってしまい、私のところ(個別相談)に来ました。子どもは親の思いに応えようと必死でした。親の過干渉による、悲劇の一例です。
――そういう場合、親の提案などに子どもは「嫌だ!」と断ったりしないのでしょうか。
成田 いい子ほど、親に「嫌だ!」とは言えないので、実はいい子ほど危険です。
親が日ごろから、子どもに「あなたは優しい子ね」「あなたはいい子ね」と言っていると、子どもはそれに応えようとして、ますます本当の自分を出せなくなります。これは乳幼児でも同じです。
――乳幼児期から過干渉を防ぐためには、どんなことを心がけるといいですか。
成田 過干渉にならないためには、乳幼児期からのかかわり方が大切です。親は、いつでも100%子どもと向き合わなくていいと割りきってください。たとえばママが忙しいとき、子どもが「遊ぼう」と寄ってきたら、「今、忙しいから手が離せないの。でもお母さんの足なら空いているから、足につかまって遊んでいて」と言ってもいいんです。わざわざ手を止めて、子どもと向き合って遊ばなくていいです。そうしたことが当たり前になると、子どももしだいに「ママ今、忙しそうだから、あとで遊んでもらおう」とわかるようになります。
子どもが「ボ~ッ」としている時間もとても大切です。「ボ~ッ」としていることが、子どもの脳を育てます。また「自分が好きなことを自分で見つけて、自分で頑張る」ことが子どもを伸ばすことにつながります。常にママやパパがずっと子どもの相手をする必要はありません。「ボ~ッ」としていたら、ほうっておいてあげてください。
大学時代を振り返っても、自由に泳がされて育った人のほうが大成している!
成田先生は近著『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥先生と対談をしています。成田先生と山中先生は神戸大学医学部の同級生です。
――山中先生との対談はどうでしたか。
成田 久しぶりに対談したのですが、山中くんは、大学時代と何も変わっていませんでした。優しくて、楽しくて、魅力的な人です。
私たちは医学部でしたが、振り返ってみても大成する人は、親が過干渉でなく、子どものときから自由に泳がされて育っていた人のように思います。山中くんもかなり自由に育てられていて、大学時代はラグビーおたく。決して勉強一直線というまじめなタイプではありませんでした。
ママやパパ自身の経験からもわかるかもしれませんが、親が敷いたレールを単に走ってきただけの子は限界があり、大成していないことが多い印象です。
取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
成田先生は「“子どもがすべて!”という親は、過干渉になってしまい、良好な親子関係が築けなくなりやすい」と言います。また子どもの世界は、親がかかわり過ぎると、うまくいかないことが多いものです。そのため乳幼児期から、子どもとはほどよい距離をとっていくことを意識したほうがいいようです。
『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』
大学の同級生である成田先生とノーベル生理学・医学賞を受賞した山中先生が、自身の生い立ちや子育てで大切なことを語り合った1冊。(講談社+α新書/900円・税別)
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