「親子で発達障害⁈」育児エッセイが話題のモンズースーさんにインタビュー
「うちの子、ちょっとほかの子と違う?」「まだ〇〇できない…」などと、子どもの発達が気になったことはありませんか? 2016年5月にコミックエッセイ『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』を出版したモンズースーさんも、そんな悩みがあった1人。
「どこに相談していいかわからない」「どこまでが正常なの?」と悩んでいたモンズースーさんは、1才6カ月健診で話を聞いてくれた保健師さんの紹介で、心理士さんに長男そうすけくんの発達の様子をチェックしてもらうことに。そこから発達の遅れや発達障害について調べ、自分自身も「大人の発達障害」に当てはまることに気がつきます。
2人目を妊娠中ながら、自分とそうすけくんのために診察を受けたり、そうすけくんの療育をスタートしたりと、必死な毎日。その後、そうすけくんは発達障害グレーゾーン、のちに生まれた次男あゆむくんも発達の遅れを指摘されます。モンズースーさん自身もADHD(注意欠如・多動性障害)と診断されながらも育児に奮闘し、2017年9月に続編となる『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした 入園編』を出版。そこには、悩んで迷って考えて、周囲の人に助けられ、時に傷つき落ち込んで、それでも毎日一生懸命に子育てに奮闘する母の姿がセキララにつづられていました。
長男の「育てにくさ」に悩む日々を描いたデビュー作
長男そうすけくんの激しいかんしゃく、おっぱいへの執着、突然の頭突き行動などに対し、「どうしたらいいの?」と悩みながら接する日々…。1冊目の『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』は、そうすけくんの「育てにくさ」に悩んでいたところから、支援のある幼稚園に通うまでのモンズー家のストーリー。
「子どもの発達の遅れを心配する0才から2~3才ごろまでの子どもがいるママたちに読んでもらいたいと思って書きました。
今は以前より発達の遅れがある子たちの情報も多いですが、ほんの数年前までは少なくて、長男と同じような子の情報がありませんでした。なので今後の見通しが何もできず、とにかく不安でした。
そんな経験から、漫画では、わが家は幼稚園までこう進んだよ、こんな支援が受けられたよ、こんな療育があったよ、というふうに、ほんの一例ですが情報として伝えたかったのです」とモンズースーさん。
発達の遅れを指摘され、療育をしているママたちからは「いちばん大変な時期は2才前後」という話をよく聞くそうです。この時期は、モンズースーさん自身も何も支援が受けられなかったり、相談できなかったり、家族だけでどうにかするしかなくて、とても不安だったんだとか。
幼稚園入園後の新たな課題が出てくる様子を描いた続編が登場
2冊目の『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした 入園編』は、集団生活に入ってからの子どもたちの新たな課題をモンズー家の視点でまとめた一冊。支援のある幼稚園に長男そうすけくんが入園し、母子ともに少し落ち着いた生活が送れるようになった様子が描かれています。
ゆっくりではあるものの、確実に成長し、いろいろなことを身に着けていくそうすけくん。そんな様子を見たモンズースーさんは、そうすけくんの進路で再び深く悩むように。楽しんで学べる“手厚い支援のある幼稚園”に通い続けるのか、多少厳しい道でも親として学ばせたいことがたくさんある“一般の幼稚園”に転園するのか…。
転園を考えて行動を始めたモンズースーさんに対し、ある一般の幼稚園は願書を受け取ってくれず、相談に行った市役所では担当者が話を聞いてくれない。著書の中で「支援を受ける前は、どこに行っても気にしすぎだと言われ、相手にしてもらえず。いざ支援を受けると、今度はそれ以外から対応できないとはじかれる」と憤りを感じる場面も。
「就学前の子どもの発達の遅れを心配する方に読んでいただければと思って書きました。この時期、就学前の検査を機会に発達障害と診断される子や、まだ支援は受けていないけれど『グレーゾーンでは?』と家族が考えている子もいますが、それまでに支援施設などとつながっていないと、ほとんど情報がないのです。支援施設とつながっていても、同じ療育を受けている子の中でも受けられる支援はさまざま。自分の子どもはどんな支援が受けられるのか、どんな療育があるのか、わからないことが多いと感じました。必要な支援が受けられない子も少なくないと思います」
「『助けて』って言ってもいい」
赤ちゃんを育てているママだったら、子どもの発達の遅れが気になったり、ほかの子と比較して落ち込むのはよくあること。そんなふうに悩んでいるママと子どもの中で、実際に「発達障害」と診断される子は多くはないでしょう。モンズースーさんの『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』と『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした 入園編』のタイトルを見て、「うちは違うかな」と思ってしまうママもいるかもしれません。でも、この2冊には、「発達障害」という悩みを通して、毎日頑張りながら絆(きずな)を深めていく親子の様子がリアルに描かれています。
「乳児期は相談しても『様子を見ましょう』と言われて何も支援を受けられないことも多く、家族だけで考えていると不安ですよね。そんなときに、もし疲れたら、家族でも行政などの機関でも子どもを少し預けて、休んだり、用事を済ませたりしてみてはいかがでしょうか? しっかり者のママさんは『育児に手を抜いているみたいで後ろめたい』なんて自分を責めてしまうかもしれませんが、少し子どもと離れることで、たまった家事や用事が片づいて気持ちが落ち着くこともあります」
発達のこと以外でも育児に悩みながら奮闘するママたちに、「以前、私はずっと『助けて』が言えませんでした。それを言うのはよくないことのように思えたからです。でも今思うと、助けを求めれば助けてくれる環境はありました。助けてくれる環境があるなら、少しくらい甘えてもいいと思うんです」というメッセージをいただきました。
どんな家族にも、大なり小なり育児の悩みや、進路への不安があるはず。時には失敗して涙しながらも一歩一歩前に進んでいくモンズースーさんや、「できない自分」に葛藤(かっとう)しながらも少しずつ成長する長男そうすけくんの様子には、共感できるところがたくさんあります! 楽しいことばかりじゃないのが子育て。「明日も頑張ろう」―ママたちをそんな気持ちにさせてくれる、モンズースーさんの育児エッセイ。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか? (取材・文/ひよこクラブ編集部)
Profile●モンズースー
二児の母。長男を出産後、ADHDと診断される。基本のんきで前向きな性格だが、人づき合いなど苦手なこともいっぱい。2015年にスタートしたブログ「漫画 生きづらいと思ったら親子で発達障害でした」が話題になり、アメブロ総合1位に。
『生きづらいと思ったら 親子で発達障害でした』(KADOKAWA) 1080円
「幼いころから生きづらさを抱えていた私が産んだ子は、2人とも発達障害グレーゾーンでした」というモンズースーさんのデビュー作。育児に悩み、希望と絶望を繰り返しながらも前向きに生きる親子の姿が描かれたコミックエッセイ。長男そうすけくん0才のころから幼稚園入園までのモンズー家の記録です。
『生きづらいと思ったら 親子で発達障害でした 入園編』(KADOKAWA) 1188円
共感と応援の声を呼んだ『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』の待望の続編。幼稚園入園後も立ちはだかるさまざまな子育ての壁や進路の悩み。時には落ち込み、涙しながらも親子で一歩一歩乗り越えるモンズー家の様子に、勇気をもらえるノンフィクションコミックエッセイです。