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園ママに「ごめんなさい」と言われて…左手全指欠損のわが子、「人にも家族にも、いろいろな形があっていい」母の願い【先天性四肢障害を知る④】

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生まれたばかりのコーくんと、4歳年上のお兄ちゃん。

生まれつき、左手首から先がない「左手全指欠損」で生まれたコーくん(10歳)。母の智原美沙さんは、どうすればコーくんのやりたいことができるのかを一緒に考えながら、保育園、小学校とコーくんをずっと見守ってきました。

前編『「指って、5本ないとだめ?」左手全指欠損で生まれた男の子とママの“普通”を巡る10年間』に続き、智原さんにコーくんの園や学校生活の中で感じたことを聞きました。

~特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも子育てしやすい社会になるようなヒントを探したいと考えています~

園ママに「ごめんなさい」と言われて……

他の多くの障害と同じように、先天性四肢障害の子どもや家族にとって、大きな不安として立ちはだかるのが保育園・幼稚園や学校のことです。入園・入学はできるだろうか、友達になじめるのだろうか、からかわれないだろうか……といった悩みを抱える人も多くいます。

「周りの人に恵まれていました」という智原さんですが、コーくんが保育園の時に、考えさせられた出来事がありました。お迎えの時に、コーくんの手を見て「なんでコーくんこっちの手だけ小さいの?」と聞いてきたお友達がいました。すると、それをさえぎってお友達のお母さんが「こんなこと聞いちゃって、ごめんなさい!」と、慌てて何度も謝ってきたのです。

「私は全然構わないし、むしろたくさん聞いてほしいなと思いました。何も知らない子どもたちが、コーくんの手を不思議に思うのは当然ですよね。私とコーくんも『コーくんの手がこの形なの、不思議だね』って、これまでたくさん話し合ってきたんです。だから私たちと一緒に、なんでだろう?って一緒に不思議がってほしい。きっと一番よくないのは、子ども心に『これは聞いちゃいけないことなんだ』とマイナスイメージを感じさせてしまうことです」

「分からないから、知りたい」から全てが始まる

コーくんの手を“話題にしてはいけないもの”にしないよう、智原さんは園の先生に頼んで、保護者会で直接、親に説明できる場を作ってもらいました。

そして保護者会当日。頭が真っ白になりながらも、智原さんは一生懸命説明しました。生まれつき左手の指がなかったこと。原因は誰にもわからないこと。不思議に思うことは悪いことでもなんでもないから、子どもに聞かれたら一緒に不思議がってほしいこと――。なんとか伝えきり、会が終わると、何人かのお母さんが「話してもらえてよかったです」「わかります」と、声をかけてくれました。

「もちろん人それぞれの考えがあり、手足の障害について聞かれることがつらい親御さんもいると思います。ただ、私もコーくんも『なんで指ないん?』って聞かれても気にしないタイプなので、みんなに自分たちはこうだとちゃんと話すことができてよかったです」

分からないことだから、知りたいと思う――その自然な感情の動きが、こと障害に関してはハードルが高くなりがちです。見ないように、触れないようにする人の気持ちもよくわかると智原さん。

「コーくんのような見た目の障害を持つ子について、きっと周りの人たちは最初はドキッとするし、触れてもいいのかな?という雰囲気になると思うんです。特に私たち大人は、触れちゃダメという雰囲気の中で育ったので、自然にそのように反応してしまうのかもしれません。

でも、驚くことも、興味を持つことも全然悪いことじゃありません。子どもがそんな疑問を持った時は、お父さんやお母さんはぜひ『本当だね、どうしてなんだろう?』と一緒に考えて、興味を持ってほしいなと思います」

子どもたちの柔軟さに助けられている日々

5歳の頃のコーくん。

先天性四肢障害の子は、症状にもよりますが、ほとんどの場合特別な対応や介助は必要ありません。コーくんも、助けがなくとも椅子や机を持ったり動かしたりができ、給食も一人で食べられます。

ただ、学校現場では先天性四肢障害についてよく知らない先生も多いことから、智原さんは小学校入学前の就学時前健診の時に、コーくんのことを説明するところから始めました。

「校長室で、『ジャムの小袋とか小さいものを開ける作業など、やりにくいことはありますが、給食なども問題ありません』と伝えました。また、担任の先生にも話をしたところ、同じクラスのみんなに入学式の次の日、コーくんの手について話してくださったんです。コーくんは、手のことを聞かれるのがイヤではないのですが、何回も同じことを説明するのがとにかく面倒みたいで、『先生からみんなに説明してくれてよかった』と安心していました」

小学校に入学してからは、コーくんの周囲の子どもたちの柔軟さに何度も助けられたといいます。

「知らない子にコーくんが左手のことを何か言われた時、お友達が『コーくんは生まれた時からこの手よ。知らんかったん?』と代わりに話してくれたことも。子どもたちは全然意識していないだろうけど、自然なことだと受け止めてくれていて、本当にありがたいなと感じています」

人も家族も、いろいろな形があっていい

10歳になったコーくん。ソフトボールクラブで頑張っています。

最後に、手足が少し違う形で生まれてきた子どもたちとの関わりについて、智原さんが改めて話してくれました。

「もしコーくんと同じようなタイプの子に出会ったら、一緒に何かをしてあげてください。一緒にごはんを食べたり、歌ったり、踊ったり、砂遊びをしたり……。そうすると、自然と見えてくることが必ずあると思います。そしたら、『そんなに特別じゃないんだな』ということにも気付けると思います。

手足の違いだけではなく、どんな特性を持った子でも、一緒にいるとその子自身が見えてくるはず。そして、もし相手が嫌ではないなと思えたら、『知らないから教えてほしい』と言ってくださるとありがたいです」

ただ……と、智原さんはこれまでの自分を振り返ります。

「私はコーくんが生まれてこなかったら、ここまでのことは考えられなかったかもしれません。今ではいろんな人たちと知り合い、自分のアンテナがぐんぐん広がって、すごく面白いなと感じています。人の形も、家族の形もいろいろ。5本指がなくちゃとか、お父さんとお母さんが必ずいなくちゃとか、形にこだわらなくてもいいと思うようになりました。

大人はもちろん、子ども自身にとっても、そんなふうに世の中にはいろいろな人や価値観があるんだって知ったほうが、大きくなった時にしがらみにとらわれず、生きやすくなるのかなと思っています」

智原美沙さん(プロフィール)

左手全指欠損で生まれたコーくん(10歳)のお母さん。NPO法人Hand&Foot正会員。出版準備中の絵本プロジェクト(2016年~)の製作メンバーとして、ディレクションやラフ製作に携わる。新聞活動を通して“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔あふれる未来をつくる「お母さん大学」「お母さん業界新聞」でも積極的に情報発信を行う。

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・お母さん大学

(取材・文 武田純子)

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