今こそ備えよう!赤ちゃんのいる家庭の防災準備 ウィズコロナ時代は在宅避難が中心に【防災士】
災害大国、日本。被災者の多くは「まさか自分の身に起こるとは…」と語るそうです。「子育てで忙しいし…」「うちは大丈夫」と思っていませんか? わが子の命を守るために、子育てファミリーが今すぐ知っておきたい防災の準備について、防災士(※)の資格を持つ、イラストレーターの草野かおるさん、防災アナウンサーの奥村奈津美さんに聞きました。
避難所に行くか、在宅避難か
――ウィズコロナ時代、子育て世帯は在宅避難をしたほうがいいのでしょうか?
奧村さん(以下敬称略) まずは、自宅が在宅避難できるかどうかを確認する必要があります。津波や土砂災害の恐れがあるか、豪雨で浸水するかなどは自治体のハザードマップを見れば目安となる情報が得られます。危険な地域なら在宅でなく避難すべき。また、1981年より前に建てられた家は、大地震で倒壊する恐れも。地域と家のリスクを確認し、避難の必要がある場合は、避難所以外に実家や親せきの家、友人宅、ホテルなどの代替案を考える必要があるでしょう。
草野さん(以下敬称略) 今、10カ月の孫のお世話をしていますが、やはり赤ちゃんを連れて避難所へ行くことは難しいと実感します。自宅が危険なら避難所へ行けないことを想定して、頼れる先を確保しておくことは大事ですよね。
奧村 そうですね。避難所は、コロナ対策でさらに受け入れ人数が減っています。感染症予防の面からも在宅避難ができると安心です。子どもの成長などで引っ越しを考える際には、家選びの段階から、安全な地域で自宅避難できる家に住むことを検討してほしいです。
草野 以前は、避難所の被災者のみ支援物資が配られていましたが、今は、在宅避難も対象となっています。支援物資は自分で避難所に取りにいく必要があります。避難所には情報も集まるので、状況を確認しに行くことも大事です。
被災時の感染症対策は?
――いざ被災した場合の感染症対策はどのような準備をすればいいですか?
奥村 今、日々の生活に根づいている新型コロナの感染症対策が、被災時でも同じで、マスク・手洗いが基本になります。消毒液やマスク、アルコール入りウエットティッシュなど、いつものものをストックしておくようにしましょう。紙おむつやおしりふきは常に1カ月分備蓄できるように定期配送便を頼んでもいいですね。また、家庭用塩素系漂白剤を用意しておくと、約0.05パーセント濃度に希釈して消毒にも使えるので安心です。
草野 わが家の場合は、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、使い捨てマスクは常に1カ月分ほどストックしているので、コロナ禍にも困りませんでした。トイレットペーパーなどは圧縮された3倍巻き、5倍巻きなどを選ぶと、場所をとらずに備蓄できます。
食品備蓄はどうすれば?
――赤ちゃんがいる家庭では、食品の備蓄はどうすればいいでしょうか。
奧村 災害時は、支援物資が届きにくいため、国のガイドラインでは、乳幼児は少なくとも2週間分の食品の備蓄が推奨されています。ただ、特別に用意しなくても普段から食べ慣れているものを多めに買っておけば大丈夫。小さい子どもは食べ慣れないものはなかなか食べてくれませんよね。赤ちゃん・子どもが好きな食材で常温保存や長期保存できるベビーフードやレトルト食品など、2週間分をストックしながら使うといいでしょう。
草野 私は孫とお出かけのときに液体ミルクを使っていて、2ケースほど常備しています。ベビー用お菓子もバッグに入れておくといいですね。
奧村 液体ミルクはいいですよね。ただ、被災時に哺乳びんやアタッチメントを清潔に保てないこともあるので、紙コップも用意するといいと思います。紙コップでの授乳も練習をしておくといいでしょう。ミルク育児をしている人は、水、粉ミルク、カセットコンロ、ボンベ(1日1本使うので、できるだけ多く)は備蓄が必要です。
停電時の必須アイテム
――さまざまな自然災害で停電が起こっています。子育て世帯は停電時にどんなものを備えておくといいですか?
草野 ろうそくなどの火は小さい子がいる家庭では避けたほうがいいでしょう。夜間の停電時にはヘッドライトが便利です。100円ショップで買えます。首から下げれば赤ちゃんを抱っこしていても両手が使えます。あとは電池不要のソーラーライトや、折ると発光するペンライトも一晩は光がもちますよ。
奧村 ヘッドライトは必須です! 置き場所は枕の下がおすすめ。大きな地震ではどこかへ飛んでいってしまうこともあるからです。私は普段から、寝る前の読み聞かせに部屋を暗くして手元だけ明るくするのにも使っています。普段使わないものは、災害時も使えない! 日常的に使うことが大切です。
草野 スマホのモバイルバッテリーも必要ですね。日常的にスマホと同時に充電できるモバイルバッテリーがおすすめ。電池式のものもあると便利ですね。
奧村 外出先で被災することもあるので、モバイルバッテリーはマザーズバッグに入れておきましょう。あとはオートロックのマンションは停電時に家に入れなくなってしまうことも。停電時の鍵の開け方を調べておくことも大事です。
SDGsの目標と防災
――最近注目されているSDGs。持続可能性の観点で防災を考えたとき、親として心がけたほうがいいことはありますか?
草野 私は、孫が自然に親しむ体験を大事にしています。8才の孫が小さいころに、雨の日に公園にお散歩に行って、歩道に川のように水が流れている様子などを見せていました。自然の変化や、自然は人の力が及ばないものということを知るきっかけにもなると思います。
奧村 地球に優しい暮らしは究極の防災です。SDGsのすべてのゴールと防災はつながっていると考えています。SDGsというと大げさに聞こえるかもしれませんが、食品ロスを減らす、ゴミをリサイクルする、家庭の電気を再生エネルギーに変える、などの個人の小さなアクションが、CO2排出量を減らすことや地球資源を守ることにつながります。
お話・監修/草野かおるさん、奧村奈津美さん イラスト/草野かおるさん 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
災害時は支援物資が届きにくいため、乳幼児用の食料は、食べ慣れているものをなるべく多めにストックし、使った分を買いたすようにするといいでしょう。いざという時に家族の命を守ため、平常時にシミュレーションしておくことが大切です。
※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
(※)防災士とはNPO法人日本防災士機構に認定された、防災の意識・知識・技能を持っている人のこと。
草野かおるさん(くさのかおる)
PROFILE
イラストレーター・防災士。自治会などの防災活動に16年間かかわり、東日本大震災後に4コマイラストの防災情報をブログで発信。2018年に防災士の資格を取得。小学3年生と10カ月、2人の孫の子育てをお手伝い中。近著に『おうち避難のためのマンガ防災図鑑』(飛鳥新社)がある。
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奥村奈津美さん(おくむらなつみ)
PROFILE
1982年 東京生まれ。広島、仙台で8年間、地方局アナウンサーとして活動。その後、東京に戻り2013年からフリーアナウンサーに。TBS『はなまるマーケット』で「はなまるアナ」(リポーター)を務め、NHK『ニュースウオッチ9』や『NHKジャーナル』など報道番組を長年担当。防災士、福祉防災認定コーチ、防災教育推進協会講師、防災住宅研究所理事として防災啓発活動に携わるとともに、環境省 森里川海プロジェクトアンバサダーとして「防災×気候変動」をテーマに取材、発信中。一児の母。
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