第2子出産で夫が2カ月半の育休取得。お世話に疲弊の日々の中で見つけた、男性育休の新しいカタチ【体験談】
草野智則さん(38才)は、2才の男の子と0才の女の子のパパ。2021年12月に妻が第2子を出産する際に、出産予定日の1週間前から約2カ月半の育休を取得しました。
草野さんが勤めている「オイシックス・ラ・大地」は、は育休から復職する社員の「復職式」を行っていることも話題になっています。
草野さんに育休を取った日々の様子や気持ちの変化について聞きました。
育休で上の子のお世話担当に。育児の大変さに気づいた
――育休を取得しようと思った理由と実際に取得した期間を教えてください。
草野 1人目の時は取らなかったのですが、今回2人目の誕生に合わせて初めて育休を取りました。上の子がイヤイヤ期に差しかかり、体力もついて手のかかる時期で、妻の産後に私が上の子の面倒を見るために育休を取得することになりました。妻の12月の出産予定日の1週間前から2月末まで、2カ月半ほど取りました。
12月に入ってすぐから、家族みんなで妻の実家の大阪で過ごし、私はリモートワークをしていました。12月中旬ころに2人目が産まれ、妻と赤ちゃんが退院して5日ほど家族で一緒に過ごしました。その後、年末年始ころから1月いっぱいまで、私は長男と一緒に富山の私の実家で過ごしました。つまり、妻は第2子・新生児と大阪で、私は長男と富山で、家族別々に過ごしたんです。その間、長男の保育園はお休みしていました。そして、2月に東京の自宅に戻って合流する、という形を取りました。
――長男と長時間一緒に過ごす生活では、どんなことを感じましたか?
草野 これまでも、妻が土日出勤の時に長男と1日一緒に過ごすことはあったんですが、長期間、というのは初めてでした。とてもパワフルな男の子なので、彼の生活リズムを優先することを最重要視しました。
何時に起きて、何時にごはんを食べて、公園で遊んで、何時に昼寝をして、と彼の生活リズムを整えてあげると夜もちゃんと寝てくれるので、自分も彼が寝ている間に少し自分時間がもてて、お互い平和に暮らせると実感しました。
長男との生活は毎日があわただしくて、小さな子どもと一緒に生活するということは、毎日の過ごし方が繰り返しになってしまうんだな、というところに少し大変さを感じました。
――繰り返し、とはどのようなことですか?
草野 仕事で長期のスケジュールで進めるプロジェクトなどに携わっていると、日々の自分の成長や、仕事が進むことでのやりがいを感じられていました。でも子どもとの生活は、ごはんを食べる、お歩に行く、おふろに入れる、寝かせる、といった一連の行動の繰り返しで、本当にルーティーンで、バタバタしていると「あれっ、自分って今日は一体何をしたんだっけ?」と変化がないように感じたんです。もちろん息子が日々成長していく様子はうれしいことではありますが、そんな繰り返しの日々に、少し苦しさを感じました。
あとは、ちょっと出かけるとか、お店にランチを食べに行くとか、そういうことも長男と一緒にやるのは難しいし、もちろん自分の都合でふらり、というわけにもいきません。実際に長男とずっと一緒に過ごして、これまで気づかなかった子育ての大変な面を、妻と共感し合うことができた点がよかったと思います。
仕事復帰後の生活のためのシミュレーションができた
――2月になって東京の自宅で家族が合流したあとはどんな生活でしたか?
草野 育休取得を申請するころは、育休は1月まででいいかな、と考えていたんです。でも結果的に、東京で家族4人で過ごした1カ月が非常に重要でした。4月から妻の職場復帰と、2人目を保育園に預けることも決まっていたので、その1カ月でお互いに職場復帰に向けての準備ができたからです。
子どもの生活リズムを崩さないために、どう動いたらいいのかをシミュレーションして、初めて大変さがわかったことがたくさんありました。
夕方に勤務が終わる妻が16時半に保育園にお迎えに行き、帰宅して、できれば上の子は21時には寝かせたいと考えると、30分でこれをやって、おふろに入れて、ごはんを作って、と、どんなタイムスケジュールになるかをお互いに把握できたんです。私が子どもをおふろに入れている間に妻が調理をして、次の日は反対にしてみて、どうするのがスムーズにできるか2月の間に試行錯誤してみました。
また、なるべく家事を時短にするために電気調理鍋を購入したり、オーブンレンジを最新のものに買い替えて、使いこなせるように練習もしました。事前に環境を整えられたことは、復帰後にすごく役立っています。
家族との時間を通してあらためて気づいたこと
――育休を取得して、自分の人生観や仕事面でどんな変化や影響がありましたか?
草野 1つは、2人目の産後のあわただしい生活をともに乗り越えて、家族の結束が強まったと感じました。もう1つは、子どもの成長について妻と話す内容が少し変わりました。以前からもちろん長男をすごくかわいいと感じていたんですが、ふとしたしぐさや言葉や成長を以前よりも喜べるようになり、妻と子どものことを以前より楽しく話せるようになったと思います。また、長男とも一緒に長期間過ごしたぶん、前以上に仲よくなれた気もします。
私も子どもの食事を作る機会が増え、食材に気をつかったり、味つけを濃くしないように気をつかうようになりましたが、一方で大人にとってはちょっと物足りないなと実感しました。その経験は仕事の面でも参考になっています。子育て中のユーザーの方にとって、「大人向けに辛みを付け足せるもの、子どもとは違う味のものがあるとうれしいだろう」というニーズを予想できるようになりました。
小さい子連れでは外食も自由にできないもどかしさの経験も、その後仕事上でのアイデア出しなどにも活きています。
――草野さんの育休取得に、ママはどんな感想を持っていますか?
草野 産後1カ月を実家で新生児とだけ過ごしてサポートを頼めたので、体を休めることができたと言っていました。やんちゃな上の子がいたら大変だっただろうと・・・。大阪と富山で分かれることで、ママと離れる長男のことが心配ではありましたが、富山で過ごしている間は意外と「ママ、ママ」と泣いたりせず、おばあちゃん、おじいちゃんと楽しく過ごしていました。
――周囲のパパたちの声はどうですか?
草野 申請の時は、私の直属の上司が育休取得者だったので自然なこととして受け入れてくれ、雰囲気的なハードルも感じることはありませんでした。ほかの会社であまり育休が取りやすくないパパと話したりすると、「うらやましい」と言われることもあります。自分が取得してみて、これからパパになる方たちにはぜひ取ったほうがいいよ、とすすめたいと思っています。
お話・写真提供/草野智則さん 取材協力/オイシックス・ラ・大地 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
「オイシックス・ラ・大地」の2022の復職式は5月に12名が参加してオンラインで行われました。同社では勤務内容や復職日は個別事情に合わせて調整できるなど、社員が育休から復帰しやすい環境づくりをめざしていて、その結果、復帰率はほぼ100%となっているそうです。草野さんのように男性の育休取得で夫婦のお互いの理解が深まることが、その後の仕事や育児へよい影響を与えるのではないでしょうか。
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