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学校用ジェンダーレス水着の登場でどう変わる?プライベートゾーンの考え方【ママ泌尿器科医】

更新

屋内プールで子供の水泳レッスンを与える水の女性コーチ
monkeybusinessimages/gettyimages

ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載第25回。学校用の “ジェンダーレス水着”が登場したという話題をきっかけに、男女のプライベートゾーンの違いについて考えます。「お母さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#25です。

性別を問わず着られる、“学校用ジェンダーレス水着”が登場

最近、ジェンダーレス水着が学校で採用されるようだと話題になっています。

ジェンダーレス水着とは、その名のとおり、性別を問わず着られる水着で、上はラッシュガードのような長袖、下はゆったりしたショートパンツのような形になっています。性の多様性という意味合いだけでなく、肌を露出したくない、体のシルエットがわからないものがいいというニーズにも応えられる、とてもいい取り組みだと思います。

“ジェンダーレス水着”の登場は、性教育にも影響が!

水着の常識が変わることは、“プライベートゾーン教育”にも大きな影響があります。性教育の本や講座では、プライベートゾーンについて説明するときに、「水着で隠れる部分」という表現が多用されています。そして、男の子と女の子のイラストが出てくるのですが、男の子は海水パンツのみのものが少なくありません。

すると、「男の子の胸はプライベートゾーンなのか?違うのか?」という疑問がでてきます。実際に講座でも聞かれたことがありました。

「男の子の胸もプライベートゾーンだよ」と答えるならば、「じゃあどうして男の子は隠さなくていいの?」となるし、「男の子の胸はプライベートゾーンじゃないよ」と答えると、「胸を見せたくない。恥ずかしい」と感じる男の子の気持ちを軽視することにつながります。

「どうして女の子の胸は隠す必要があって、男の子の胸は隠す必要がないの?」という疑問に、実は私もまだうまく答えられません。

ただ、確実に「胸を出したくない」と考える男性は存在しています。診察で聴診をする際に、ガバッと胸を全開にする男性もいれば、服の裾(すそ)をちょっとだけ空けて、胸が見えないように聴診してもらいたがる男性もいます。

また女性の場合でも、嫌々…という人がいる一方で、平気そうにガバッと上げてくれる人、下着をつけていない人もいます。つまり、「胸を見られること」への羞恥心(しゅうちしん)は性別にかかわらず、個人差が大きいようだということです。

男性の体や性に対する羞恥心は、軽視されがち

胸に限らずですが、男性の体や性に対する権利・羞恥心への配慮は、社会的にかなり軽視されています。

たとえば、女性トイレや女子更衣室の清掃スタッフは、ほとんどが女性です。一方で、男性トイレや男性更衣室の清掃スタッフは、必ずしも男性とは限りません。むしろ、女性であることがかなり多い。

「男性は、裸を見られることに恥ずかしさを感じないでしょ」と男性の羞恥心を社会が軽視していることがわかります。(そしてこの場合、女性清掃スタッフの気持ちや立場も軽視されています)

以前、大学駅伝の中継を見ていたとき、走り終わった人気選手をカメラが追いかけ、着替えをするシーンまで撮影していました。上半身が裸の状態が平然と撮影されていたのですが、これって女性の選手だったら大問題ですよね。

奥が深い“男性の胸はプライベートゾーンか!?”問題

男女の「胸」の扱いの違いについて考える際に、

①男性の胸も、女性の胸と同じプライベートレベルに引き上げる

②女性の胸のプライベートゾーンレベルを引き下げる

の2つの視点があると思います。

②について、「ありえない!!」と思うかもしれませんが、世界には女性も胸を隠さないで生活している民族もいます。また、イギリスやアメリカでは、「女性にだけ乳首を隠すことを強要するのはおかしい」「男性が乳首を出してよい状況なら、女性だって乳首を出す権利があるはずだ」という声が女性から上がり、トップレス(胸を出した)状態でパレードも行われているとのことです。

そういえば、子育て中の授乳についても、「人前で授乳することの是非」がよく議論になりますよね。胸(乳首)を隠すことは、権利なのか、義務なのか。性別を問わず、隠したい人が隠せるようにするというのは当然ですが、「隠したくない」という人の意見をどう考えるか。一方、「見たくない人」だって存在するわけで。

うーん。難しい。でも…面白い!

「胸はプライベートゾーンだよ。だから隠すよ。終わり。」ではなく、その理由や歴史、法律面、海外との比較など、どんどん深掘りしていきたいですね。

文・監修/岡田百合香先生 構成/ひよこクラブ編集部

「プライベートゾーンは、水着で隠れている場所」というのが今の日本の性教育では常識。でも、時代の変化によって、この定義も変化していくのかもしれません。何はともあれ、「見せるのは嫌」と思う子どもの気持ちは尊重してあげる必要がありそうです。次回も子どもの性や、性器、排せつ、性教育など、ママ・パパが気になるお話をお届けします!お楽しみに。


■記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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