夫は現役バド選手、リオ五輪金メダリスト・髙橋礼華、コロナ禍の妊娠・出産を語る「育児は使う筋肉が全然違う!」
リオデジャネイロオリンピック(2016年)のバドミントン女子ダブルスで、「タカマツペア」として日本バドミントン史上初めての金メダルを獲得した元バドミントン選手の髙橋礼華さん(32才)。決勝戦の手に汗握るシーンを覚えている人も多いのではないでしょうか。
2020年8月に現役を引退した後、同年12月にバドミントン日本代表 金子祐樹選手(28才)との結婚を発表、2022年2月に女の子の赤ちゃんが生まれました。初めての育児に向き合っている新米ママである髙橋さんに、妊娠・出産のこと、赤ちゃんとの生活について聞きました。
コロナ禍でのまさかのスピード出産。夫の立ち合い、間に合わず
――2020年12月に結婚、2021年9月に妊娠を公表されました。元アスリートとして妊娠中の体調管理で気をつけていたことはありますか?
髙橋さん(以下敬称略) 2021年の6月に妊娠がわかり、徐々につわりが始まって、夏には暑さと食べづわりや貧血のような体調の悪さに苦しみましたが、9月ごろにはそれも落ち着きました。現役時代、私は体重や栄養をそこまで厳しく管理していなかったので、食べ物などは普段通りでした。ただ、アスリート“あるある”かもしれないんですが、急ぐときやとっさのときにすぐ走ってしまうことがあるので(笑)、妊娠中は走らないように気をつけました。
――出産のときの様子を教えてください。
髙橋 実家の奈良に里帰りをして、近くの産院で出産しました。予定日2日前の夜20時くらいにおなかの痛みが続いていることに気づき、22時ごろにおしるしがあったので産院に電話をし、少し自宅で様子を見て入院したのが午前3時。そこから生まれたのは朝6時45分と、かなりスピーディーに進んで、安産でした。
――夫の金子選手は出産に立ち会われたのでしょうか。
髙橋 夫は立ち会いを希望していました。しかし、予定日の翌日から代表合宿に行くスケジュールになっていて東京で準備をしていました。陣痛が始まってすぐに連絡をして相談をして、朝一の新幹線で奈良に来ることになりました。
午前3時に入院したときに、夫が朝9時に病院に到着する予定であることを看護師さんに伝えると、「大丈夫、初産だからそんなに早く産まれないよ、早くてお昼くらいかな」なんて言われたんです。それなら昼くらいまで頑張らなきゃ、と思っていたんですが、思いのほかお産が早く進んで…「もういきみたい」という感じになってしまい、そのときには子宮口が全開大に。分娩台に登ってから1時間くらいで産まれました。結局夫は立ち会えず、私1人での出産となりました。
初めて娘を抱っこした夫の手は震えていた
――赤ちゃんと初めて会ったときの気持ちを教えてください。
髙橋 お産の進みは早かったんですが、赤ちゃんの首にへその緒が巻きついている様子と言われていたので、それがすごく心配でした。生まれて感動した、というよりは、無事に産声を上げてくれてホッとした、という感じです。産後すぐに、分娩台から夫にLINEで「生まれたよ」と報告しました。生まれてきてくれた娘は、かわいくてかわいくてたまりませんでした。
――金子選手は赤ちゃんと対面して、どのような感想を言っていましたか?
髙橋 しばらくして夫が産院に到着して、娘を抱っこしてくれたんですが、彼の手がずっと震えていたのを覚えています。代表合宿の前に生まれてくれて、夫も会うことができたので「いい子だね」と声をかけていました。合宿が始まると、帰宅は1カ月後になってしまうんです。だから私も、出産の立ち会いはできなくても会わせてあげたいと思っていたので、それがかなって本当によかったです。
ただ、コロナ禍のため面会は1時間くらいしかできず、夫はその日のうちに東京に帰りました。産後入院中はほかの家族とも面会禁止だったんですが、助産師さんたちがとても優しくケアしてくれ、私の体を休めるために、夜間や日中にも赤ちゃんを預かってくれてとても助かりました。
――赤ちゃんの名前にはどんな意味を込めましたか?
髙橋 妊娠中から女の子とわかっていたので、明るい女の子に育ってほしいという願いを込めました。私の名前に「華」の字が入っているのもあって、草花の漢字や明るいイメージの漢字を入れたいと思って候補の名前を考えました。画数を調べたらなんと大吉だったので、その候補の名前に即決したんです。生まれてみたらとっても元気そうな子で、彼女にピッタリな名前だと思います。
元アスリートだけど産後の体はボロボロ…
――奈良の実家での新生児との生活はどうでしたか?
髙橋 実家では12週間ほど過ごしました。母も働いているので、日中は1人でお世話をして、夜の寝かしつけを母に手伝ってもらっていました。娘は「背中スイッチ」が敏感で、抱っこして眠ったからとベッドに寝かせたら起きてしまったり、モロー反射で起きてしまったり…。寝かしつけには苦労しました。産後1カ月ほど、娘の睡眠時間に合わせるのがきつかったです。
私は現役時代には睡眠と入浴をとくに大事にしていて、必ず8時間は寝るようにしていたし、妊娠中は9〜10時間ほど寝ているくらい普段からよく寝るタイプだったので、その産後の時期は大変でした。母に娘をお願いして30分だけ寝かせてもらったり、娘を抱っこしながら寝たり、日中に娘がお昼寝をしたら私も1時間くらい寝て、というこま切れ睡眠の日々でした。
――精神的につらいと感じたことはありましたか?
髙橋 元アスリートとしてメンタルの強さには自信があったけれど、最初の1カ月ほどは、寝かしつけとか1人でおふろに入れたりとか、赤ちゃんが泣きやまなかったりすると、きついな…と感じました。娘にすごく泣かれて「なんで泣くの…」と強い口調で言ってしまったこともあります。そんなときはあとから娘に「さっきはごめんね」と話しかけたりしたことも。
精神的につらいときには、なるべくポジティブに考えを変えるようにしています。バドミントンもそうなんですが、「明日また泣かれたらどうしよう」と考えてしまうとどんどん悪い方向に傾いてしまうので、「赤ちゃんは泣くからしょうがないか!」と切り替えたり、自分がポジティブになれない理由や解決策を探すなどしていました。
今はもうだいぶ慣れて、ワンオペでも大体のことはできるようになってきました。娘も生後2カ月くらいから、少しずつまとまって寝てくれるようになって、5カ月の今(取材時)は、夜にまとめて7~9時間寝てくれるようになり、助かっています。
――体力的な大変さはどうだったでしょうか?
髙橋 私は現役時代はけがも少なかったので、産後の体の心配はあまりしてなかったんです。でも、全身の筋肉を使うバドミントンの疲れと、休む間もない赤ちゃんのお世話の疲れは全然違います。授乳で姿勢が悪くなって背中を痛めたり、ほかには手首を痛めたりと、体の疲れはすごく出ていると思います。左手首のけんしょう炎のような痛みは今も治りません。
赤ちゃんと一緒のおふろだと、バスタブにゆっくりつかる間もないですし、体がつらくてもマッサージをするよりは睡眠を優先してしまいます。元アスリートだけれど、体はボロボロだな…と。それだけ赤ちゃんのお世話は大変だと感じます。
立ったまま抱っこしてずっとあやしていると、すごいやせちゃうんじゃないかな、って思うんですけど…全然やせませんね(笑)
お話・写真提供/髙橋礼華さん 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
金メダリストの髙橋さんも、産後の赤ちゃんのお世話は精神的にも体力的にも大変だったと言います。でも娘さんのことはかわいくてしかたがない、と、日々幸せを感じているそうです。現在は現役選手の妻として、夫のケアをしつつワンオペ育児に奮闘しています。
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髙橋礼華さん(たかはしあやか)
PROFILE
1990年生まれ、奈良県出身。6歳からバドミントンを始め、中学から親元を離れ聖ウルスラ学院英智中学校へ入学。高校時代に1学年後輩の松友美佐紀選手とダブルスのペアを組んだ。2009年に日本ユニシスへ入社後、全英オープン優勝、BWFスーパーシリーズファイナルズ優勝、そして2016年のリオデジャネイロオリンピックでは日本のバドミントン史上初となるオリンピックでの金メダルを獲得。2020年に現役を引退。現在は後進育成に取り組みながら、一児の母として子育てに奮闘中。