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小耳症のはるくん。「小さな耳で産んでしまったことを考えない日はない」夫婦で意見がぶつかることも【体験談】

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関西在住のはるくん(7カ月)は「小耳症」といって生まれつき右の耳が小さく、耳の穴がふさがっている外耳道閉鎖症という症状を持っています。日本では5000に1人ほど発症するといわれる、先天性形成異常です。ママのsoraさん(29才・保育士)とはるくんパパ(28才・会社員)は、はるくんに手術によって耳を作る耳介(じかい)形成手術を受けさせることを考えています。インスタグラムでも小耳症について発信するsoraさんに、はるくんの症状のことや、手術の決断に至るまでのことについて話を聞きました。
(上の写真は7カ月になったはるくんの様子)

10才になったら、耳を作ってあげられる

――はるくんの小耳症の状態について教えてください。

soraさん(以下敬称略) はるの右耳は生まれつき閉じたような形になっていて、耳の穴はほんのわずかだけあいている状態です。生後1カ月のころ、産院で紹介してもらった大学病院の耳鼻咽喉科で聴力の検査を受けました。左耳は問題なく聞こえますが、小さな右耳の聴力は60dB(デシベル)で、小さい声は聞こえないけれど、日常生活や言語の獲得には問題ないことがわかりました。聞こえに問題がないことは一安心でしたが、やっぱり見た目のことはどうしても気になります。

はるが成長して、自分の耳がお友だちと違うとわかったときに、コンプレックスに思うのではないかと心配ですし、片耳が小さいために、マスクや眼鏡がかけられないという困りごともあります。それでいろいろと調べる中で、大学病院で紹介された「こみこみ」という小耳症のLINEサークルで、耳を作る外科手術ができることを知りました。中でも札幌医科大学 形成外科の四ッ柳先生という方が、とてもいい耳を作ってくれるという情報を聞きました。

――耳を作る、というのは、どのような手術でしょうか。

sora 子ども自身の肋軟骨(ろくなんこつ)を使用して耳の形(耳介)を作り、今ある耳の皮膚の下に埋め込むなどして、耳の形を作る形成外科手術です。外科手術なので聴力が改善するものではないですが、ホームページで症例を見る限り、見た目には違和感のない耳を作ってくれるようです。

札幌医科大学では10才以降に耳介形成手術を受けられることになっています。年間200件もの手術を行っていて、全国から小耳症の患者さんを受け入れているため、初診までには約2年待ちだそうです。はるは今年の4月に、2年後の初診予約を取ることができたので、今のところは10才になったら手術を受けさせたいと考えています。

手術を受けるかどうか、夫婦で何度もぶつかり話し合った

――はるくんが将来、耳の外科手術を受けることを、パパとはどんなふうに相談して決めましたか?

sora 私は出産のために里帰りをして実家で過ごしていたので、関西の自宅にいる夫と何度も何度も電話ではるの耳のことについて話し合いました。小耳症について調べたことや不安に思っている気持ちを夫に話すと、夫は電話越しに、私の話をただじっくり聞いてくれ「こういうことが言いたいんだね」と私の気持ちをまとめてくれたり、「自分はこう思うよ」と意見を言ってくれたりしました。

でも札幌で手術を受けることに関しては、夫と意見がぶつかりました。夫は「はるが10才になったときに、手術するかどうかを自分で決めたほうがいいんじゃないか」という考え。病院も札幌までは遠いしお金も時間もかかることを考えると、関西でも受けられるところを探してもいいのでは、と。でも私は、はるが何回も手術をするなら腕のいい先生にやってもらったほうがいい、という考えでした。

――それでも、手術に向けて夫婦2人の方向性が決まったんですね。

sora 産後の気分の浮き沈みや育児のストレスも重なって、夫に気持ちをぶつけてしまったこともありましたが、2人で時間をかけて話し合い、「この耳でハンディやコンプレックスを感じたときに、手術をして耳の形が作れることを伝え、少しでもはるの励みにつながるように、今はそのための準備をしていこう。どこまで聴こえるかをまわりにも理解してもらい、少しでもはるが生きやすい環境を作ろう」という考えにまとまりました。
10才になったはるが前向きな気持ちで手術に臨めるように、はるの気持ちに寄り添って言葉をかけるようにしていこう、と考えています。

――パパ以外の家族ははるくんの耳のことについてどんなふうに受けとめていますか?

sora 夫の両親は聴力のことを心配する以外はごく普通に接してくれています。私の両親も「この小さい耳だからはるなんだ」って受けとめてくれています。私がはるの耳のことで悩んでいるとき「あなたたち2人だから、こんなにかわいい子が生まれてきてくれたんだよ」と言ってくれ、うれしくて泣きそうでした。その言葉で、はるの耳のことも少し前向きに受けとめることができました。

「気づかなかった」の言葉に感じる複雑な思い

――ほかのママ・赤ちゃんや、地元のお友だちとの交流はありますか?

sora 生後4カ月のころに初めて実家近くの子育て支援センターに行き、10人くらいの親子がお話しする会に参加したんです。会が始まるまで「耳を見られてるかな」「何か言われたらどう答えればいいんだろう」ってすごく緊張しました。実際参加してみたら、耳のことは全然気づかれなかったようで、だれからも何も言われませんでした。

地元には同じ時期に出産した友だちがいたんですが、新しく出会うママ友よりも昔からの友だちだからこそ、打ち明けるのに緊張しました。でも話してみたら「気づかなかった」と言われました。

――周囲の人にはあまり気づかれないものなんですね。

sora はるの耳のことを打ち明けるとほとんどの人に「気づかなかった」って言われます。その言葉に、周囲は意外と自然に受け入れてくれそうだ、とホッとする部分もあります。特別扱いされず受け入れてもらえるとわかり、関西の自宅に戻ってからも、地域の支援センターに行ってみようかな、と前向きに考えられるようになりました。

一方で気づかれないことでのトラブルも心配です。右耳が小さいことを気づかれないと、右側から小さい声で話しかけられて、はるが聞こえないために無視したと思われてトラブルになったらどうしよう、と。そのようなトラブルを回避するために、はるが自分のハンディをオープンにしなきゃいけない立場になることへの、親としての心苦しさもあります。

今はコロナ禍ということもあり人に会う機会も少ないですが、今後初めて会う人に、はるの耳のことをどう言えばいいんだろう、相手が言葉に詰まって気まずくなったらどうしようと、いう不安はあります。また私も仕事復帰をする予定なので、保育園の先生にどこまで介助や援助をお願いできるか、お友だちとトラブルになったら間に入って対処してもらえるのかな、と心配はつきません。

耳のことを考えない日はない。だからこそ毎日を楽しみたい

生後7カ月のはるくん

――soraさんはインスタグラムではるくんの耳のことを発信しています。始めたきっかけは?

sora はるが生後2カ月のころからインスタグラムを始めました。私自身、はるの耳について調べる中で、ネットでは本当に役立つ情報がなかなか探せなかったので、小耳症の子を持つママに情報共有できれば、と始めました。もともとカメラが趣味で、洋服や布小物を作るのも好きなので、はるの子育てを前向きな気持ちで発信してみようと思いました。

フォロワーさんは小耳症の子のママでない人もいます。小耳症の子のママはコメントやDMをくれる人もいて、情報や意見を交換し合える仲間ができて心強いです。中には「うちの子は手術をしません」という意見をくれる人も。さまざまな価値観を持つ人とコミュニケーションが取れるのもいいところです。
私のインスタの投稿が、同じように小耳症の子を持つママの心のよりどころになったり、悩みや情報を共有して子育てを一緒に楽しめる場所になったりしたらいいなと思っています。

――これからはるくんにどんなふうに育ってほしいですか?

sora はるが生まれてから、はるの耳のことを考えない日はありません。初めはこの子の耳はどうなるんだろう、と心配ばかりだったけど、はるの耳のおかげでたくさんの出会いがありました。家族や周囲の人のサポートもあって、今ははるの耳について心配ではあるけれど、ポジティブに考えられるようになってきました。

はるには、耳のことをハンディと思わないで自由奔放に過ごしてほしいです。そのために親として、はるが楽しく生きられるような環境を作ってあげたいと思っています。7カ月になってどんどんヤンチャになっているので、秋からは関西の自宅に戻って、パパともたくさん遊んでもらえるのがとっても楽しみです。

【札幌医科大学形成外科 四ッ柳先生より】判断の材料となる正確な知識を持つことが大切

手術をするかしないかはそれぞれの考え方だと思います。実際にするか、するとしたらいつするか、は本人が決めることがベストです。しかしそのためには、判断の材料となる正確な知識を親御さんが持っておくことが不可欠です。また、耳以外の合併症の確認も含め、今後の成長に伴う検査や治療の流れを把握しておくことも必要です。当院の初診外来では、これらについて理解していただくため、1時間取ってじっくりお話ししています。もちろん近隣でこれらについてきちんと対応してくれる施設があれば、受診して相談するといいと思います。

お話・写真提供/soraさん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

監修/四ッ柳高敏先生

現在の聴力などの検査費は小児医療制度を利用できますが、小耳症の治療や難聴に関する公的支援は自治体によってさまざまなのだそうです。はるくんの耳について「聴力の程度によって自治体の障害児支援を受けられる可能性があり、今後再検査を受けて手続きを調べるつもりです」とsoraさんは話しています。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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