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5才のクリスマス、便秘だと思っていたら小児がんの診断が。「死んじゃうんですか?」と質問したのは覚えているけれど答えの記憶がない【体験談】

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緊急入院して2日目、2006年12月31日に生検を受け、神経芽腫と診断されました。

浦尻一乃さん(21才)の闘病生活が始まるきっかけとなったのは2006年、5才のクリスマスイブに起きた腹痛でした。小児がんの神経芽腫と診断され、治療が始まるまでのことについて、母親のみゆきさん(52才)に聞きました。

楽しいクリスマスプレゼント選びのはずなのに機嫌が悪く、「何か変だ」と

腹痛を訴える8日前に撮った写真。間近に迫ったクリスマスとお正月を楽しみにしていました。

神経芽腫は、交感神経節や副腎髄質にある神経の細胞にできるがんで、脳腫瘍を除いた小児期にできる固形腫瘍の中で最も多い病気です。とくに、5才以下の子どもの発症率が高いとされています。

みゆきさん・浩一さん(54才)夫婦の一人娘の一乃さんは、5才までは何の心配もなく健やかに育ち、かけっこが得意だったそうです。みゆきさんが「なんだか様子がおかしい」と感じたのは、2006年のクリスマスイブ、一乃さんが5才のときでした。

「クリスマスプレゼントを買いに行った先で、ぐずぐずと機嫌が悪く、すぐに抱っこをせがんできました。楽しみにしていたクリスマスですし、買ってもらえるプレゼントを目の前にして、楽しくてテンションが上がるはずの場面なのに、おかしいと感じました。
プレゼント選びもそこそこに家に帰ると、『おなかが痛い』と訴えるように。痛みには波があるようで、痛みが引くと遊びだすのですが、またしばらくすると『痛い痛い』と・・・。あと数日で病院が正月休みになってしまうし、年末年始は私の実家に帰省する予定だったので、翌日(25日)近所の小児科医院を受診しました」(みゆきさん)

熱はなく、おなかを触診した結果の診断は「便秘」。薬は処方されず、「動いてうんちを出すようにして」とアドバイスされました。

この日の夜にかけて痛みが増し、総合病院の夜間診療を受診。レントゲンを撮りましたが、ここでも診断結果は「便秘」でした。浣腸をしたのですが、便はあまり出なかったそうです。

「おなかを痛がるのが治まらないので、26日には車で15分の場所にある公立の子ども病院へ。再度レントゲンを撮りましたが、ここでも『便秘か胃腸炎』との診断で、再度浣腸したけれど、やはりほとんど便は出ませんでした。薬は整腸剤を1日分処方されました。
27日は1日様子を見ましたが、食欲はなく痛みも治まらないので、28日は、25日とは別の総合病院を受診。みぞおちあたりにかたいものがあるとのことでしたが、今日はエコー検査ができないと言われて、診断は「便秘」。これまでと同じように、浣腸をして整腸剤を処方されて帰宅しました。

便秘という診断に納得はできませんでしたが、4人の医師が便秘と診断するのだから、そう思うしかありませんでした」(みゆきさん)

青筋立ったおなかを見て、これは「やばい!!」。緊急で検査を受けることに

整腸剤を飲んで、おなかマッサージをしてもおなかの痛みは収まらず、29日の朝、一乃さんは痛みで目をさましたそうです。

「それでも痛みが治まっているときは元気そうにも見えるので、午前中は『便秘解消のために運動をしよう』と、窓ふきを一緒にしました。最初は楽しそうにしていたけれど、すぐ横になってしまうんです。食欲もなく、自分から布団に入ってしまいました」(みゆきさん)

そして夕方、おふろに入れるために一乃さんの洋服を脱がせておなかを見たとき、みゆきさんは驚きで一瞬言葉を失いました。

「おなかの左側、おへその横あたりから下に向かってポッコリとふくらんでいて、青筋が立っていたんです。単なる便秘でおなかがこんなふうになるわけない、『これはやばい!!』と本能的に感じました。26日に受診した公立の子ども病院に電話し、すぐに向かいました。

すごく幸運なことに、その日の夜間診療の担当が、神経芽腫の治療実績のある小児外科の先生で、一乃のおなかを見た途端『すぐに検査しましょう』と言ってくれ、血液検査、尿検査を受けることになりました。さらに『エコーの先生を呼んで!』と緊迫した声で看護師さんに指示を出しているのを聞いて、『やっぱりただの便秘じゃない』と感じました。
一乃は普通に歩いて病院に来ましたが、『お子さんをできるだけ動かさないでください』と指示され、腹部エコーの検査室に移動するときには、一乃は車いすに乗せられていました」(みゆきさん)

「死んじゃうんですか?」と質問したのは覚えているけれど答えは記憶にない

上の写真は生検の結果、神経芽腫と診断されて14日目の一乃さん。症状が一気に悪化したころ。

エコー検査のあと、おなかに腫瘤があり神経芽腫が疑われること、31日に生検(※)を行って確定診断がついてから治療方針を決めることなどの説明を受けましたが、みゆきさんが「神経芽腫」という病名を知ったのは、このときが初めてだったそうです。

「『一乃のおなかの中に腫瘍が見つかったの・・・』と夫に電話し、駆けつけた夫と一緒に先生からの説明を聞いたはずなのですが、ショックのあまり記憶があいまいになっています。小児がんの一つだと告げられたとき、『うちの子は死んじゃうんですか?』と聞いたのは覚えているけれど、先生の答えは記憶にありません。
親の泊まり込みはできない病院だったので、一乃を病院に任せて帰る際、夫と2人で駐車場で大泣きしたことだけは、はっきりと覚えています」(みゆきさん)

生検の結果、一乃さんは神経芽腫と確定診断がつきました。

「腫瘤が破裂して出血していたので、入院後も痛みの波が何度もやってきて、かなりつらそうにしていました。腫瘍が破裂した原因については説明されなかったように思いますが、受診のたびに何度もおなかをぐいぐい押されたからではないのか、もっと早くに腫瘍を見つけてあげられたら破裂せず、こんなに痛い思いをさせずに済んだのではないか・・・と悔やみました。

さらに、腫瘍が急激に進行した結果、入院してから一気に病状が悪化。痛み止めにモルヒネも使いました。
12月29日に夜間診療を受診後、入院になったときには『のどがかわいた』と話したり、入院もお泊り気分でちょっと楽しそうにしたりしていたのに、1月3日にはお茶を10mlも飲めない状態になっていたんです。
最初の説明で『小児がんは進行が早い』と聞いてはいたものの、これほど激烈に症状が悪化してしまうのか・・・と言葉も出ませんでした。

でも、『小児がんは薬が効くからどのステージでも治療を行います』とも説明を受けていたので、薬で治るのであれば、どんな治療でもしてくださいという気持ちでした」(みゆきさん)

その後一乃さんは、抗がん剤、病巣部の摘出手術、放射線療法、大量化学療法、自家造血幹細胞移植という過酷な治療を受け、小さな体で病気と闘っていくことになります。

(※)生検:病変の一部を採って、顕微鏡で詳しく調べる検査。

お話・写真提供/浦尻みゆきさん 監修/富澤大輔先生 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

監修/富澤大輔先生(国立成育医療研究セン ター 小児がんセンター 血液腫瘍科診療部長) 

ただの便秘ではないはず・・・という親の勘を信じて行動したことで、神経芽腫という大きな病気を発見でき、治療にこぎつけることができました。一乃さんと両親は、これから長い時間をかけて神経芽腫と闘っていくことになります。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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