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子どもが高熱で幻覚やパニックに!?「熱せん妄」とは?どう対応したらいいの?【小児科医】

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●写真はイメージです。
yamasan/gettyimages

高熱を出して寝ていた子どもが、急に起きて見えない何かにおびえたり、パニックで走りだしたり・・・そんな症状が見られたら、それは「熱せん妄」かもしれません。両国キッズクリニックの黒澤照喜先生に小児の「熱せん妄」について聞きました。

熱せん妄の症状・原因は?教えて!気になるQ&A

黒澤先生も、感染症による発熱などで受診した子どもの保護者から、子どもが高熱を出したときの不思議な行動などについて質問されることがあるそうです。熱せん妄の症状や原因、対処法など気になることについて教えてもらいました。

Q 熱せん妄ってどんな状態のことを指すのでしょうか?

【黒澤先生より】
発熱に伴う異常な行動を「熱せん妄」と言います。
・幻覚/実際にはないものが見えたり聞こえたりする
・錯視/ものを見間違える
・錯乱/支離滅裂な言動が見られる
・異常行動/急に部屋から飛び出す、窓を開けて飛ぼうとする
などといった症状が見られる場合は、熱せん妄の疑いがあります。
これらの症状は大半が発熱による一時的なもので、命の危険や後遺症については原則心配ないものですが、ごくごくまれに脳症などの重症疾患の初期症状として見られることもあります。

Q 熱せん妄はどんな原因で起こるの?

【黒澤先生より】
高熱で脳の温度が上がることで、ノルアドレナリンやドーパミンなどの化学物質が放出されます。この化学物質が複雑な神経症状を引き起こすと考えられていますが、詳しいメカニズムはまだわかっていません。熱せん妄を起こしているときは、頭は眠っているのに体は起きているような状態です。脳は意識レベルが低下しているなりに何かを感じて、それが「虫が見える」などの表現になると思われます。

高熱が出ると意識がもうろうとすることがあります。悪夢でうなされているのに近いですし、ママやパパがイメージするとしたら、酔っぱらって体は動いているのに意識がはっきりしていなかったり記憶が飛んでしまったりしているような状態に似ていると考えるとわかりやすいでしょう。

Q 熱せん妄を起こしやすい年齢や体質などはありますか?

【黒澤先生より】
小児の10%前後が熱せん妄を起こしたという調査もあり、だれにでも起こりうるものですが、経験的には1~4才くらいの幼児に多い印象です。一方で、小中学生でも高熱に伴い熱せん妄を起こすことがあります。小中学生はもともと高熱を出すことが少ないため、熱せん妄の患者数も少ないのかもしれません。
症状自体には年齢差はないようですが、小学校高学年や中学生などが怖がって暴れ出した場合、抑制できずに転落するなどの事故が発生することがあるので注意が必要です。

Q 何度以上の発熱をすると熱せん妄に気をつけたほうがいいですか?

【黒澤先生より】
診察している印象では、熱せん妄は夜間に急激に熱が上がったタイミングで起きることが多いようです。また、受診時の発熱は38℃以上であることが多いですが、熱せん妄では40℃以上が多いというわけではないので、体温とは必ずしも関係ないかもしれません。
熱せん妄にかかわらず、子どもが発熱しているときには、注意して様子を見てあげるようにしましょう。

Q インフルエンザに感染すると起こりやすいのでしょうか?

【黒澤先生より】
インフルエンザにかかった子どもの10%前後に熱せん妄が見られたという報告があります。これは前述の「小児の10%前後が熱せん妄を起こした」という調査の数値と差がありません。インフルエンザで多くの人が発熱するため熱せん妄の数が増えたり、大きな子どもがインフルエンザによる熱せん妄を起こすと暴れたり高所から転落したりすることがあるため、目立つのかもしれません。

ただし、インフルエンザウイルスは熱性けいれんや脳症などの神経疾患を引き起こしやすいウイルスであるため、個人的な見解にはなりますが、もしかしたら熱せん妄も起こしやすいかもしれません。
なお、以前タミフル(オセルタミビル)による異常行動が指摘されたことがありますが、あくまでもインフルエンザで熱せん妄が発生したと考えられていて、現時点ではタミフルと異常行動の関係はないとされています。

Q 夢遊病や夜驚症とは違うの?

【黒澤先生より】
夢遊病や夜驚症は発熱していないときに起こるものを言います。熱せん妄はその名のとおり発熱時に起きます。症状はそこまで変わりませんが、熱せん妄については寝ている間以外に起こることもあり、まれですが日単位で続くこともあります。
夢遊病・夜驚症・熱せん妄の関連についての研究はなさそうですが、とくに強い関連はないでしょう。

子どもが熱せん妄になったらどうすればいい?対処法を教えて!

子どもが高熱を出しているだけでも心配ですが、急にパニックになったり叫び出したりしたら、親もあわててしまいそうです。どんなふうに対処してあげるといいのでしょうか。黒澤先生は以下の3つのポイントで考えて、と言います。

1. 発熱後2~3日は子どもから目を離さない

だれかに追いかけられたり、気持ち悪い虫が見えたりすることや、パニック状態になって外に飛び出してしまうこともあります。

「危険な状態にならないように、大人が付き添って見守りましょう。異常行動に備えて、玄関や部屋の窓の鍵はしっかり閉めてください。また、夜間に起こることが多いので可能ならば1階で寝かせるか、窓や階段から離れた場所に寝かせましょう」(黒澤先生)

2. 体に触れて安心させてあげる

熱せん妄で怖いものが見えたりすると、子どもはとても不安な状態になります。

「子どもが嫌がらなければ、抱っこする、手を握る、背中をさする、話を否定せずに聞いてあげるなど、少しでも不安を取り除いてあげましょう」(黒澤先生)

3. 体を冷やし、処方された薬をきちんと飲ませる

熱せん妄で子どもがパニックになると驚くと思いますが、熱せん妄の状態が改善したら落ち着いて発熱への対処をすることも大切です。

「熱が上がりきって暑がっている場合は首筋、わきのした、太ももなどを、冷たいタオルや氷枕などで冷やしましょう。汗をかいている場合はこまめに着替えをさせましょう。解熱剤など処方された薬があれば、医師の指示通りきちんと飲ませましょう」(黒澤先生)

熱せん妄を起こしたらすぐ受診すべき?

子どもが熱せん妄を起こしたら、様子を見ていいのか、すぐ受診をしたほうがいいのか心配になるママやパパも多いでしょう。どんな様子になったら受診をしたほうがいいのか、また、注意をしておくべき子どもの様子とはどんなことでしょうか。

Q 夜中に熱せん妄を起こしたら、翌日に小児科を受診したほうがいいでしょうか。

【黒澤先生より】
典型的な熱せん妄であれば、一時的な症状で終わってしまい、翌日には意識障害・異常行動は見られない状態です。この状態で心配がなければ受診をしなくてもいいかもしれません。逆に、症状が残っている場合や、本当に熱せん妄なのか・また起こさないかが心配なときには小児科の受診をしておきましょう。

また、夜間に初めて熱せん妄と思われる状態が見られた場合、翌日まで待っていいのか心配になることもあると思います。必ずしも救急車を呼ばなくとも、救急外来と連絡を取って必要に応じて受診してください。異常行動により転落が起きた場合には原則受診が必要だと思います。

Q 受診の際は医師にどんな情報を伝えるといいでしょうか。

【黒澤先生より】
受診したら、発熱の期間、体温、言動の内容、既往歴、治療中の疾患の有無、服薬中の薬などを伝えましょう。
熱せん妄の症状はあまり長続きしないものなので、もともとなにかほかの神経症状があった場合には伝えてください。また、熱の原因(風邪など)についての経過・情報も必要になります。さらに熱せん妄やほかの神経症状の家族歴についての情報が必要です。熱せん妄の動画を撮れるようであれば、医師に見せると様子がわかりやすいと思います。

お話・監修/黒澤照喜先生 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

寒くなる季節、インフルエンザや新型コロナウイルスなど、高熱を伴う感染症が気になります。子どもが熱せん妄になると親もあわててしまうと思いますが、対処法を知っておくだけでも安心材料になるのではないでしょうか。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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