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「ふだん反応が薄い子も楽しそうに」。難病児と家族の遊びの場は孤立化予防にも。【オンラインおもちゃの広場・リポート】

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参加者がお気に入りの絵本を紹介すると、その内容をみんなで当てるクイズに発展。

難病児・障害児とそのきょうだい児を対象とした「オンラインおもちゃの広場」。週2回、30分ほどオンラインで集まり、お話や工作などで一緒に遊ぶ会で、インターネットで登録すれば参加は無料です。この会のスタートは新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響でステイホームとなった2020年5月。現在は、感染リスクを避けたい難病児や、外出がままならない医療的ケア児とその家族が参加を続けています。2022年11月下旬に行われた「オンラインおもちゃの広場」を取材し、参加者の声を聞きました。

近況報告からクイズまで、30分間で盛りだくさんの内容

みんなで始まりの歌を歌って「オンラインおもちゃの広場」がスタート!この日の司会は手話翻訳者でもあるまゆみさん(画像左上)。

この日の参加者は3組7名、さらにおもちゃコンサルタント4名。コンサルタントで司会を務めるまゆみさんが、始まりのあいさつのあと「みんなに見せたいもの」を参加者それぞれに質問します。参加者の1人、東京都在住の遠藤さんは、画面に大きな葉つきの大根をかざし「知り合いが育てている大根をもらいました。とっても大きくて、子どもの身長と同じでした!」と報告。立派な大根にみんな驚きの声をあげます。

続いて、参加者で千葉県在住の大石さんは本屋でひと目ぼれして購入したという絵本『おたのしみ じどうはんばいき』を紹介。主人公の男の子が、販売機の1〜10までのボタンを押すと、「1(いち)」は「いちご」、「2(に)」は「にんじゃ」などがページをめくるたびに出てきます。「じゃあ3はなんだろう?」「サンタ!?」、「4(し)は?よん、でヨットかな?」と、参加者みんなで一緒に考えます。大石さんが絵本をめくって正解を発表すると「あー、当たった!」「そっか〜ハズレか〜〜」などと大盛り上がり。

最後に「10(じゅう)」のボタンを押して「ジュース」が出てきたところで、手話翻訳者でもある司会のまゆみさんが「ジュース」の手話をやって見せてくれました。すると参加者から「ビールは手話でどうやるの?」と質問が。ビールの手話を教わったところで、「では、ジュースの人、ビールの人、それぞれ手話で乾杯しましょう!」とみんなでカンパイ!参加者もコンサルタントも、一緒に楽しい時間を共有しているようでした。

医療的ケアが必要な子どもも、自分のペースで参加して一緒に遊べる

オンラインミーティングの双方向性を利用し、参加者同士でボードゲームを楽しむことも。

「オンラインおもちゃの広場」開催のきっかけとなったのは、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛です。身体障害や知的障害がある子どもや、人工呼吸器や経管栄養など医療的なケアを必要とする難病児は、特別支援学校や放課後等デイサービスなどを利用することが多いですが、外出自粛期間に支援学校などが休みになり、利用できなくなってしまいました。

参加者の1人、東京都在住で5才の長男と参加した遠藤さんは2020年5月ごろの外出自粛期間に、地域のおもちゃコンサルタントに誘われて参加し始めたそうです。「外に出るのが大好きな長男が外出できずに困っていましたが、そのときは毎日10時と13時にオンラインで開催してくれたので、生活リズムを整えるためにも助かった」と言います。

「パソコンの前に座らせた経験がなかったので、子どもの集中力がもつかとか、すぐ嫌になったり疲れたりしないかな、という不安もありました。でもコンサルタントさんたちが、『参加したいときだけ参加していいよ、退出したくなったらしていいよ』と優しく声をかけて見守ってくれるので、自分たちのペースで参加できています。

オンラインだけど、直接会っているような感覚でお友だちが増えていくのも楽しいです。長男は健康状態によって入院が必要なこともあり、個室入院のときは病院から参加することもあります。子ども自身もすごく楽しんでいるのが表情からわかりますし、いつもミーティングルームから退出するときには泣いてしまうほどです」(遠藤さん)

千葉県在住で、7才の長男と参加した大石さんは、「子どもとの遊びのハードルが低くなった」とオンラインのメリットを上げます。

「これまでは、子どもと一緒にどこかへお出かけするときには、医療機器やいろんな荷物を持っていく必要があるため、目的地に着いたら自分が疲れてしまっていました。でもオンラインなら、子どもの寝起き5分くらいでも参加できます(笑)。ごはんを食べながら、ケアをしながら、みなさんのにぎやかな声がオンライン越しで聞こえる環境が心地いいです。『参加できるときだけ』というスタンスで開催してくれているので、親の気持ちのハードルを上げないで済むし、穏やかな気持ちで参加できます。

長男は反応が薄い子なので、一緒に遊ぶときには『遊ぶぞ!』と私も気合が必要でした。けれど、この『オンラインおもちゃの広場』への参加を通して、親が楽しんでいると子どもがその楽しさを感じ取ってくれることがわかりました。音楽を聴いたり歌ったり、手話をまねしたりと、気張らずに子どもと一緒に楽しく遊ぶ方法があると知れたことがとてもよかったです」(大石さん)

オンラインだからこそ見えること、参考になることも

会の最後には、この月生まれの人のお誕生日をみんなでお祝いしました。

オンラインでの参加を続けたことで「子ども自身やきょうだい児にも成長が見られた」と大石さん。

「最初のころは、パソコンの画面にうつる内容がよくわからないようでしたが、参加するうちに楽しいことが行われていることや、どんな人がいるというのもわかってきたようです。先日、たまたまおもちゃコンサルタントの方にリアルで会う機会があったとき、長男が『この人、知ってる』と反応をしていました。オンラインでも長男に伝わっているんだな、続けてきてよかったな、と感じました。

スタッフのみなさんが子どもの気持ちをキャッチしようと接してくれるので、子どもの表情の変化や成長などに気づいてくれることがすごく励みになっています。10才のお姉ちゃんも一緒に参加するんですが、もともと恥ずかしがり屋のお姉ちゃんが、オンラインでのやり取りを経験してどんどん積極的になってくれました。長男だけでなくきょうだいにもいい影響を与えてくれています」(大石さん)

また、オンラインで集まるほかの医療的ケア児の様子や、親子のコミュニケーションの取り方を見て、学ぶ機会にもなっていると遠藤さんは言います。

「ほかのお子さんの反応や笑顔が見えると、私もすごくうれしくなります。それに、みなさん自宅や病室から参加するので、この子はこういうケアがあって、こういう大変さがあるんだな、とほかの親子の様子を見て視野が広がったと思います。たとえばオンラインで意思表示するためにひらがなのコミュニケーションボードを使う人もいるので、それを見て、自分の子とのやりとりの参考にさせてもらうこともあります。

車いすやベッドで過ごすのに、こういう姿勢にすると楽なんだなとか、こういう椅子の角度がよさそうだな、といったことも勉強になります。ここでの経験を通して、私も病児支援をしてみたいな、と前向きな気持ちに変わってきました」(遠藤さん)

参加者同士の心もつながるきっかけに

ハートを作って遊んだ様子。みんなで遊ぶとアイデアが広がっていきます。

「オンラインおもちゃの広場」は、病児と家族が遊びを通してコミュニケーションを取るだけでなく、オンラインで当事者の親同士がつながることで、心のよりどころにもなっているのだと言います。

「月に何回か参加して、日常の何気ないことでも『こんなことがあったよ』と報告ができる場があることがすごくうれしいです。おもちゃコンサルタントさんにも、参加者にも、自分の子どもの成長を一緒に見守ってもらえる安心感があります。
病気があるため、コロナ禍にリアルで会うのはとても気を使わなければならなくなってしまったので、人と会う機会も減ってしまいましたが、オンラインでもつながれる場、話せる場があって助かっています」(遠藤さん)

「ここでは参加者にいろいろと質問をしてくれるので、困ったことやうれしかったことを伝えたりできますし、参加者のお友だち家族とSNSでつながって、そのお友だちの普段の様子を見られたりするのもうれしいです。『今週、あの子はこんなことをしたんだな』と、リアルには会っていないのにお友だちとの親密さが高まる感じがしています」(大石さん)

監修/石井今日子さん 取材協力/特定非営利法人芸術と遊び創造協会 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

「オンラインおもちゃの広場」は現在、毎週水曜・土曜の10時~10時半に開催されています。登録すれば参加は無料。年に数回の特別プログラムでは、元劇団俳優の講師によるペープサートや、八ヶ岳の自然を楽しむオンライン遠足を行うこともあるのだそうです。

オンラインおもちゃの広場

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

石井今日子さん(いしい きょうこ)

PROFILE
NPO法人芸術と遊び創造協会運営 福岡おもちゃ美術館(2022年オープン)館長。保育士・幼稚園教諭の経験を生かし、2008年東京おもちゃ美術館立ち上げ、赤ちゃん木育ひろば運営に携わる。おもちゃを活用した子育て支援事業「おもちゃの広場」「赤ちゃん木育寺子屋」開催。企業のコラボにより無印良品「木育広場」。日本財団との共同事業 難病児向けおもちゃセット「あそびのむし」など。Eテレ「まいにちスクスク」出演。

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